何が起きた?ルクレール大金星の裏に「4つの鍵」―”記録的激戦”で本命マクラーレンを撃破、ハンガリー大逆転劇の全貌

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2025年F1第14戦ハンガリーGP予選で、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が今季初のポールポジションを獲得した。週末を通して圧倒的な速さを発揮していたマクラーレン勢を0.026秒差で逆転する大金星。曰く、キャリアで「最も予想外の展開」という本人とっても寝耳に水のポールだった。

トップ10のタイム差はわずか0.543秒。2022年ハンガリーGPおよび2003年ブラジルGPで記録された0.577秒を更新する、F1史上最も僅差のQ3となった。この熾烈な接戦のなかでルクレールが栄冠を掴んだ要因は、主に4つの要素が重なり合う複合的なものだった。

ポールポジション・ボードの前にクルマを停めるシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP予選(ハンガロリンク)Courtesy Of Ferrari S.p.A.

ポールポジション・ボードの前にクルマを停めるシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP予選(ハンガロリンク)

新リアサスがもたらした“常識”と自信

まず挙げられるのは、ルクレール自身のドライビングと、クルマへの信頼感だ。ルクレールは、前戦ベルギーGPで投入された新型リアサスペンションが、SF-25からパフォーマンスを絞り出す上で効果を上げていると明かす。

「以前は予選でなんとか結果を出すために、かなり極端なセットアップを採る必要があったけど、それが逆に一貫性を欠く原因になって、クルマをコントロールするのが難しかったんだ」

「でもアップグレードのおかげで、より“常識的な範囲”のセットアップでも十分戦えるようになってきてね。僕の予選でのドライビングスタイルにフィットしてきている気がする」

パルクフェルメに停めたクルマの上でポーズを取りポールポジション獲得を喜ぶシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP予選(ハンガロリンク)Courtesy Of Ferrari S.p.A.

パルクフェルメに停めたクルマの上でポーズを取りポールポジション獲得を喜ぶシャルル・ルクレール(フェラーリ)、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP予選(ハンガロリンク)

渋滞回避の早期コースイン

Q3でのコースインのタイミングも見逃せない。Q1およびQ2ではピット出口でトラフィックに巻き込まれ、タイヤが最適な作動温度を逸していた。

「他のことはいいから、早く出してくれ。できるだけ前に出たいんだ」とのルクレールからの要望を受け、Q3ではセッション最終盤を待たずに「先にピットアウトする作戦」を採った。

フェラーリのフレデリック・バスール代表は、「ピットレーンで1分半停まるだけで6~7℃はタイヤの温度が下がる。そうなると、それを取り戻すのは不可能だ」と述べ、「少し早く出る」ではなく「大幅に早く出る」という判断が功を奏したと振り返った。

また、「タイヤが最適な状態にあるかどうかは、0.5秒以上の差に相当する」とも語った。

ガレージでシャルル・ルクレール(フェラーリ)のポールポジション獲得を祝福するメカニック、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP予選(ハンガロリンク)Courtesy Of Ferrari S.p.A.

ガレージでシャルル・ルクレール(フェラーリ)のポールポジション獲得を祝福するメカニック、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP予選(ハンガロリンク)

マクラーレンを直撃した風の変化

ポールを争うQ3では、コンディションが劇的に変化した。Q2まで微風だった風が強まり、風向きも90度近く変化。これにより特定のコーナーでマシンを横風が襲う状況となり、車体の挙動が一変した。

この影響は、フェラーリよりもマクラーレンに大きな悪影響を及ぼした。敗因について、2番手にとどまったオスカー・ピアストリは、真っ先に風向きの変化を挙げた。3番手のランド・ノリスは路面温度低下の影響を除外し、「風の影響だけだよ」と述べ、それによって0.5秒近くタイムが変動することは「よくある話」と強調した。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)に逆転を許して2番手にとどまった予選を経てインタビューに応じるオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP(ハンガロリンク)Courtesy Of McLaren

シャルル・ルクレール(フェラーリ)に逆転を許して2番手にとどまった予選を経てインタビューに応じるオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP(ハンガロリンク)

マクラーレンのアンドレア・ステラ代表もまた、失速の主因は温度より風の影響との見解を示しつつ、シミュレーション上での結果においても、コンディションの変化により「約0.4秒」のロスが発生したと明かした。

Q2からQ3にかけてタイムを縮めたのはルクレールただ一人だった。ただし、これはQ2でミスがあったためだ。一方、マクラーレン勢は最もタイムを落とし、ノリスとピアストリは共に、わずか数分前のQ2で記録した自身のタイムより約0.5秒も遅れた。

路面温度低下で弱点相殺

上空に厚い雲が垂れ込めるなか、路面温度はQ1開始時点の48℃から右肩下がりに低下を続け、Q2開始時には41℃、そしてQ3の最終走行時には36℃にまで急落した。なお、同じタイミングで湿度は急激に上昇した。

路面温度の低下は、マクラーレンには影響しなかったかもしれないが、フェラーリにとってはプラスに作用した。

MCL39がタイヤマネジメントに長ける一方、SF-25はタイヤのオーバーヒートに悩まされていたが、路面温度の低下により、この弱点が相殺された格好となった。

火花を散らしながらハンガロリンクを周回するオスカー・ピアストリのマクラーレンMCL39、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP予選(ハンガロリンク)Courtesy Of McLaren

火花を散らしながらハンガロリンクを周回するオスカー・ピアストリのマクラーレンMCL39、2025年8月2日(土) F1ハンガリーGP予選(ハンガロリンク)

こうして、ルクレールはあらゆる不確定要素を味方につけ、トップ4が僅か0.053秒にひしめくという歴史的な激戦の中、F1キャリアにおいて最も記憶に残るポールポジションを掴み取った。


2025年F1ハンガリーGP予選では、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が衝撃的な今季初ポールポジションを獲得。週末を通して他を圧倒していたマクラーレン勢は、オスカー・ピアストリが2番手、ランド・ノリスが3番手に甘んじた。

決勝レースは日本時間8月3日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周4,381mのハンガロリンクを70周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNフジテレビNEXTで生配信・生中継される。

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