
不振に終止符? 角田裕毅、”土壇場改良”で今季ベスト「ハイブリッド仕様」で2ヶ月ぶりの入賞へ
7月26日にスパ・フランコルシャンで開催された2025年F1第13戦ベルギーGP公式予選。レッドブルの22号車ガレージに歓声が響いた。角田裕毅が5月のマイアミGP以来、実に7戦ぶりとなるQ3進出を果たし、レッドブル移籍後自己最高位となる7番グリッドを獲得したのだ。
今年3月の日本GPを前に、レーシング・ブルズからレッドブルへと昇格した角田だが、グリッド随一と評されるほどにピーキーなRB21に苦戦を強いられてきた。チームメイトのマックス・フェルスタッペンとの差は歴然としており、もどかしい日々が続いていた。
チームの執念、予選直前の土壇場アップグレード
転機は予選直前に訪れた。11位に終わったスプリント終了後、角田のマシンにアップグレードが投入されたのだ。完全な最新仕様ではないものの、ヘルムート・マルコによれば、フェルスタッペン車と「ほぼ同じ仕様」とのこと。チームが総力を挙げて準備したパッケージだった。
「予選の直前にアップグレードを持ち込んでくれたのですが、突然、クルマが全く違ったものに感じました」と角田は振り返る。「懸命に準備してくれたチームには本当に感謝しています。特にメカニックにとっては、かなりタイトな作業だったと思います。予選に間に合うなんて信じられないくらいです」
「まだ全てのアップグレードが投入されたわけではありませんが、このフロアだけでも十分に、このポジションを得ることができました」
この土壇場でのアップグレード投入は、角田の潜在能力を信じ、可能な限り最高のマシンを提供しようとする、ローラン・メキーズ率いる新生レッドブルの姿勢を物語るものと言える。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
プランクを地面に擦りながらスパ・フランコルシャンを周回する角田裕毅(レッドブル・レーシング)、2025年7月26日F1ベルギーGP予選(スパ・フランコルシャン)
Q2での力強い走り、フェルスタッペンに肉薄
予選では13番手タイムでQ2に進出した角田。そこで見せた走りは実に印象的だった。1回目のアタックラップで、僚友フェルスタッペンに0.294秒差まで肉薄。レッドブル移籍後の予選としては、これほどまでに4度のチャンピオンに近づいたことはなかったと思われる。
2回目のアタックではセクター1で自己ベストを更新できずに走行を中断したが、それでも5番手という堂々たる結果でQ3進出を決めてみせた。
「セットアップも変更していたので、正直、予選に入る時点では、どんな挙動なのか分からず、ほとんど未知のクルマをドライブするような感じでした」と角田は明かす。
「ただ、エンジニアのみんなが本当に良い仕事をしてくれて、できる限り一貫性のある挙動になるよう仕上げてくれました。そのおかげで、自信をつけやすくなったと思います」
Q3でも堅実な走り、古巣レーシングブルズ勢を上回る結果
最終セッションのQ3でも、角田は冷静さを保った。フェルスタッペンとの差を0.357秒に留め、かつての同僚たちが乗るレーシングブルズ勢を抑えて7番手を確保。アイザック・ハジャー(8番手)、リアム・ローソン(9番手)といった旧知の面々を上回る結果は、角田の成長と適応力を感じさせるに十分だった。
この結果により、角田は決勝に向けて久しぶりのポイント獲得のチャンスを手にした。前回のポイント獲得はエミリア・ロマーニャGP。それから約2カ月、ようやく光明が見えてきた。
決勝への自信 「どんな天気でも対応できる」
「明日に向けても自信があります」と角田は力強く語る。「今回は少しばかりハイブリッド寄りのセットアップにしているので、どんな天気でも対応できると思います。あとはしっかりとポイントを取って終わるだけですね」
日曜のスパは雨に見舞われる可能性が高いが、ベルギーGPは天候の予測が難しいことで知られており、どう転ぶかは神のみぞ知る。角田とチームは、あらゆる事態を想定してセットアップを決定した。
移籍後ベストリザルト更新なるか?
スパ・フランコルシャンは追い抜きのチャンスが多いサーキットとして知られ、好スタートを切れればさらなる上位進出も夢ではない。
予選という限られたセッション内で「未知のクルマ」をある程度理解した角田は、44周の決勝レースを通してさらにRB21を掌握し、そのパフォーマンスを引き出していくに違いない。レース中の伸びしろにも期待が持てる。
今季これまでの決勝ベストリザルトは第4戦バーレーンGPの9位。角田はキャリア通算100戦目のスタートを迎える日曜のスパで、自身のレッドブルF1キャリアに新たな1ページを刻むことができるだろうか。
2025年F1ベルギーGP予選では、ランド・ノリス(マクラーレン)がポールポジションを獲得。2番手にチームメイトのオスカー・ピアストリが、3番手にシャルル・ルクレール(フェラーリ)が続く結果となった。
決勝レースは日本時間7月27日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周7004mのスパ・フランコルシャンを44周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで生配信・生中継される。