
カルロス・サインツSr、FIA会長選への出馬を断念―現職ベン・スレイエムの再選濃厚か
二度の世界ラリー王者でありF1ドライバーの父としても知られるカルロス・サインツSr.(63歳)が6月25日、F1を含むモータースポーツの統括団体である国際自動車連盟(FIA)の次期会長選への立候補を正式に断念した。
ラリー界およびスペイン人ドライバー界のレジェンドとして名高いサインツSr.の決断により、現職モハメド・ベン・スレイエムの無投票再選の可能性が高まっている。
サインツSr.は、「現在の状況は、立候補するに理想的ではない」として出馬を断念する声明を発表した。FIAは今月初め、次期会長選に向けた候補者申請期限を4週間前倒しする規則改正案を可決しており、これについてはベン・スレイエムの再選を優位に進めるための布石との批判が上がっている。
加えてサインツSr.は、「ダカール・ラリーに向けた準備に大きな支障をきたす可能性がある」とも述べ、現役レーシングドライバーとしての責務が今回の決断に影響したとも明かした。
ベン・スレイエムは2021年、FIA史上初の中東出身者として会長に就任。以降、規制変更の導入や度重なる発言、そして相次ぐ幹部の辞任など、その統治スタイルを巡って幾度となく波紋を呼び、FIA内外を問わず多くの議論を巻き起こしてきた。
F1ドライバーに対する言論制限規制は、その象徴的な一例であり、今年4月にはスポーツ担当副会長のロバート・リードが、FIA内部における「統治基準の根本的な崩壊」を痛烈に批判し、辞任する事態も起きている。
今回の出馬断念にあたり、サインツSr.は「今もFIAには重要な改革が必要だと信じている」と強調し、「今後の展開を引き続き関心を持って見守っていく」とコメント。FIAという組織への懸念を滲ませた。
FIA会長選は今年12月12日、ウズベキスタンの首都タシュケントで実施予定だが、現時点でサインツSr.以外に対抗馬の動きはなく、ベン・スレイエムの無投票再選が既定路線となりつつある。
とはいえ、立候補の締切日は10月24日に設定されており、他の有力候補が水面下で出馬の可能性を探っているとの見方もある。したがって、現時点でベン・スレイエムの再選が確定したわけではなく、今後の動向が注目される。