ルノー・グループのCEOルカ・デ・メオ、2021年4月9日
Courtesy Of Renault

不確実性増すアルピーヌF1、ルノーCEOデ・メオが電撃退任

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2025年F1第10戦カナダGPが開催された6月15日、ルノー・グループは、現CEOのルカ・デ・メオが2025年7月15日をもって辞任すると発表した。

デ・メオは2020年にCEOに就任し、アルピーヌブランドの再構築とF1プロジェクトの刷新を主導してきた人物だけに、今回の辞任はアルピーヌF1チームの将来に大きな影響を及ぼす可能性がある。

「F1プロジェクトの再編者」が去る

デ・メオは、旧ルノー・スポール部門をアルピーヌへと再編・統合し、F1チームを「アルピーヌ」の名で再出発させた中心人物だが、5年を経てなお、依然としてタイトル争いには程遠い状況が続いている。

ルノー・グループのCEOルカ・デ・メオ、2022年10月18日Courtesy Of Renault

ルノー・グループのCEOルカ・デ・メオ、2022年10月18日

この新体制のもとでは、2021年のハンガリーGPでワークス復帰後初勝利を挙げるなど、短期的な成果を見せたものの、チーム首脳陣の交代が続き、掲げていた目標が幾度となく修正されるなど、迷走が続いている。

デ・メオ在任中には、シリル・アビテブール、マルチン・ブドコウスキー、オトマー・サフナウアー、ブルーノ・ファミン、そしてオリバー・オークスと、5人のチーム代表が相次いで交代する異常事態となった。

さらに昨年、フラビオ・ブリアトーレが特別顧問という立場で復帰し、実質的にチーム運営の主導権を握る形に移行した。

加えて、2026年からの新たなF1エンジン規則導入を前に、伝統あるヴィリー=シャティヨンでの独自エンジン開発に終止符を打ち、メルセデスからのカスタマー供給に切り替える決定が下された。これにより、アルピーヌは“ワークスチーム”としての立場を失うこととなった。

ジル・ビルヌーブ・サーキットを走行するピエール・ガスリーのアルピーヌA525、2025年6月15日(日) F1カナダGP決勝Courtesy Of Alpine Racing

ジル・ビルヌーブ・サーキットを走行するピエール・ガスリーのアルピーヌA525、2025年6月15日(日) F1カナダGP決勝

買収・売却の噂再燃か?

こうした状況のなか、F1パドックでは「F1チーム売却の布石ではないか」との見方がくすぶり続けてきた。デ・メオ本人やブリアトーレはその可能性を否定してきたが、今回の辞任を受けて、ルノーがF1活動の方向性を再検討する可能性は否定できない。

現在アルピーヌF1チームは、コンストラクターズランキングで最下位に低迷。一方で、近年のF1チームの資産価値は急騰しており、投資家にとっては魅力的な買収対象となりうる。ルノー取締役会や次期CEOが、売却を「合理的な判断」と捉える可能性は十分ある。

加えて注目されるのが、ブリアトーレの今後の去就だ。ブリアトーレはデ・メオの招聘によってアルピーヌに復帰したが、その立場は「ルノーの従業員」ではなく、外部契約的な色合いが強いとされる。今後も同様の役割を担い続けるかどうかは、新経営陣の方針次第と見られる。

なお、仏紙『ル・フィガロ』によると、デ・メオはグッチやサンローランなどを傘下に持つフランスの高級ブランドグループ『ケリング』のCEOに就任する見通しだとされる。一方で、ルノーにおけるデ・メオの後任CEOは現時点で決定されていない。

チーム代表記者会見でマイクを握るフラビオ・ブリアトーレ(アルピーヌ顧問)、2025年5月30日(金) F1スペインGP(バルセロナ・カタロニア・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

チーム代表記者会見でマイクを握るフラビオ・ブリアトーレ(アルピーヌ顧問)、2025年5月30日(金) F1スペインGP(バルセロナ・カタロニア・サーキット)

ブリアトーレ「何も変わらない」と断言

こうした中、ブリアトーレはカナダGP終了後、ロイター通信に対し、「何も変わらない。絶対にだ」と語り、デ・メオの退任がチーム運営に及ぼす影響を否定。また、自身の立場についても「影響はない」と強調し、「ルカには新天地での成功を祈っている」と述べた。

それでもなお、F1チームの将来には不確実性がつきまとう。ルノー本体の次期CEOがF1プロジェクトをどう評価し、ブリアトーレの関与をどう位置づけるのか――今後数カ月にわたってその動向が注目されることは間違いない。

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