
カルロス・サインツSr、FIA会長選出馬を検討か―ベン・スレイエム現会長に対抗の可能性浮上
2025年末に予定されている国際自動車連盟(FIA)会長選挙に向けて、2度の世界ラリー選手権(WRC)王者であり、ダカール・ラリーで通算4度の総合優勝を誇るカルロス・サインツSr.が、出馬を検討していると報じられた。
英専門誌『Autosport』によると、モータースポーツ界の複数の有力関係者がサインツに出馬を打診しており、本人も前向きに立候補の可否を検討しているという。
ウィリアムズF1ドライバーであるカルロス・サインツJr.の父であり、ラリー界において圧倒的な存在感を放つサインツSr.が正式に出馬すれば、2025年のFIA会長選はこれまでにない注目を集めることになるだろう。
会長候補は選挙当日時点で70歳未満でなければならず、任期は最大3期、通算12年と定められている。また、立候補に際しては加盟団体から一定数の支持を得る必要がある。
現会長への不満が背景―サインツ擁立の動き
現FIA会長モハメド・ベン・スレイエムは、2021年末の就任以来、その統治手法に対して多くの批判を浴びている。今回のサインツSr.への出馬打診は、2期目を目指すベン・スレイエムの対抗馬としての擁立を意図した動きと見られる。
ベン・スレイエム体制下のFIAでは、上級管理職の大量離脱が相次いでいる。FIA女性委員会のデボラ・メイヤー委員長、競技ディレクターのスティーブ・ニールセン、技術ディレクターのティム・ゴス、CEOナタリー・ロビン、広報責任者ルーク・スキッパーらが退任しており、統治体制への深刻な不安が指摘されている。
物議の数々―FIA内部に広がる混乱と不信
最近では、スポーツ担当副会長のロバート・リードが、「適切な手続きを経ない意思決定」「透明性の欠如」などを理由に辞任。FIAの統治基準が崩壊しつつあると厳しく批判した。
さらに今年2月には、世界モータースポーツ評議会(WMSC)の一部メンバーが新たなNDA(機密保持契約)への署名を拒否したことを理由に排除されるという異常事態が発生。その一人であるモータースポーツUK会長デビッド・リチャーズは、組織運営の透明性をめぐる状況が「ますます悪化している」と非難している。
ベン・スレイエムを巡る問題はFIA内部にとどまらず、F1関係者やドライバーとの間でも摩擦が生じている。特定のF1レース結果への干渉疑惑(後に潔白と判断)、SNSでの発言に対するF1側の法的対応、過去の女性蔑視的発言、トト・ウォルフ夫妻に対する調査と即時撤回、さらにはドライバーへの言論制限方針など、物議を醸す事案が相次いでいる。
こうした混乱と不満の高まりを背景に、FIA内部ではサインツSr.以外にも新たな候補者を擁立しようとする動きが出ている模様だ。