ノリスの逆転タイトルのシナリオとマクラーレン王座の可能性、決して安泰ではないフェルスタッペン
大差をつけて満額ポイントを獲得したF1オランダGPを終えてランド・ノリス(マクラーレン)は、今季のドライバーズタイトルを獲得できるかもしれないと考えるのは「かなり愚か」なことだと主張したが、理論上は自力での実現が可能だ。
残り9戦の内訳は、通常フォーマットが6戦、スプリントが3戦だ。前者は優勝で25点、後者はスプリント優勝とグランプリ優勝で計33点を獲得できる。つまり残りのシーズンで獲得可能な最大ポイントは249点となる。
オランダGP終了時点におけるノリスの総獲得ポイントは225点であるため、最終アブダビGPのチェッカー後に474点にまで伸ばすことが可能だ。一方でフェルスタッペンが残りのレースを全て2位フィニッシュした場合、トータル478点となるため、これでは4点足りないが、F1では2019年にファステストラップ得点システムが導入された。
9レースの内の4レースでファステストラップを刻めば同点となり、優勝回数の差でノリスがチャンピオンに輝くことになる。無論、これ以外の5レースでフェルスタッペンがファステストを刻まないことが条件だ。
ではマクラーレンのコンストラクターズ・タイトルの望みは如何ほどか。
6月以降の直近の7戦でレッドブルが158点を持ち帰ったのに対し、マクラーレンはそれより62点多い220点を獲得した。レッドブルに対してリードを広げられたのはスペインGP(4点)の1回のみ。平均して1レースあたり9点ずつギャップを縮めている。
オランダGP終了時点における両チームの差は30点であるため、ここ最近の傾向通りにシーズンが進めば、5戦を残してマクラーレンが首位に浮上することになる。
ザントフォールトでのレースを経てフェルスタッペンとクリスチャン・ホーナー代表は「パニックになる必要はない」と口を揃えた。自分達に言い聞かせるように。そしてヘルムート・マルコは、直ぐに手を打たなければ両選手権が危うくなると警告した。
フェルスタッペンに23秒差をつけた今回のノリスの勝利は、今シーズン最大の圧勝だった。印象的だったのは勝利を掴み取るまでの流れだ。
ノリスとマクラーレンは今年幾度となくスタートで失敗してフェルスタッペンに逆転を許してきたが、ザントフォールトはそうではなかった。1周目に2番手に後退しながらも1回目のストップを前に余裕のオーバーテイクを決め、ファイナルラップではライバルの傷口に塩を塗り込むように最速を刻んで追加ポイントを獲得した。
この圧勝劇の裏にアップグレードがあることは疑いない。5月のマイアミGPで初優勝を飾って以来、マクラーレンMCL38は既に「平均的には間違いなく最速のマシン」だったとノリスは認めたが、その後は勝利から遠ざかっていた。
そしてマイアミ以来のアップグレードが持ち込まれるや否や、ノリスはカレンダーの中で2番目に短いザントフォールトで0.356秒という驚異的な差をつけてポールポジションを獲得し、レースでは今季2勝目を飾った。
フェルスタッペンは依然としてタイトル争いにおいて圧倒的優位にあるが、それでも70点というリードは決して絶対的なものとは言えない。