4度のF1王者を嫉妬させた男、ライコネン「天賦の才能という点で最も恵まれていた」”最高の僚友”との関係を振り返るベッテル
キミ・ライコネンについてセバスチャン・ベッテルは、キャリアを通じてこれまでに出会った中で「天賦の才能という点で最も恵まれたドライバー」との考えを示した。曰く、乗った瞬間にクルマを理解し、最初の1周目からベストラップを刻む天性の腕を持っていたと言う。
4度のF1ワールドチャンピオンは15シーズンに渡るF1キャリアの中で、マーク・ウェバーやダニエル・リカルド、シャルル・ルクレールといったトップドライバーをチームメイトとしてチャンピオンシップを戦ってきた。
間近でそういった実力者達の腕前を見てきたベッテルが、”生粋の才能”という点で最も優れたドライバーとして名前を挙げたのが2007年のフィンランド人F1王者だった。2人は2015年から2018年までスクーデリア・フェラーリでコンビを組んだ。
アブダビでのF1引退レースを前にベッテルはポッドキャスト「Beyond The Grid」のインタビューの中で、司会のトム・クラークソンからライコネンについて振られると「実際のところキミは、天賦の才能という点で僕がこれまでに出会った中で最も恵まれていたと思う」と語った。
「兎に角、生粋の速さという点でね。F1マシンだけじゃなく、他のどんな種類のクルマを走らせてもそうだったと思う」
「もし毎日、別のクルマに乗り換えなきゃならないって決まりがあったとしたら、キミは10日後に全員を打ち負かしているだろうね。何しろ才能に溢れていたから」
「彼の場合、クルマに適応するのも、クルマの要求に対して適用するのにも時間はかからない。ステアリングを握ると、どうすべきか分かってしまうんだ」
「時には不公平だと感じることもあるくらいだった。まずは(マシンに)慣れ、その後、コースやコンディションを把握していかなきゃならないのに、彼の場合は兎に角、最初から速いんだから」
これは興味深い指摘だ。
かつてロータスのエンジン部門責任者としてライコネンと仕事をしたリカルド・ペンテアードは「もし20年早く生まれていたとしたらライコネンは8回タイトルを取っていた事だろう」と述べ、ライコネンの「天性の才能」に言及している。
曰くそれは「驚異的な空間認識能力」を特徴とするものだという。
ベッテルにとってのライコネンは時に嫉妬を感じるほど高い才能を持つドライバーであったものの、それが2人の関係に悪影響を与える事はなかった。
「たぶん彼とのチームメイトとしての関係は、これまでの中で最高のものだったと思う。何しろ、本当に率直な人だったからね」とベッテル。
「たとえお互いにクラッシュしても決して言い争うことはなかった。それについて、そして何が起きたのかについて話をした。笑い飛ばしていたかもしれない。時には僕の、時には彼のミスだった」
「それでも僕らの絆というか、関係性が揺らぐようなことは一切なかった」
「それに彼は多分、僕がF1に来たその最初の日に、僕の目を見て敬意を示してくれた人でもあった。他のドライバーの場合は握手と挨拶こそしてくれても、実際には相手にされていないような感じを受けた」
「だからみんなと比べるとキミは本当に特別な存在だったんだ」