エイドリアン・ニューウェイの引退を見据えるレッドブル・レーシング
レッドブル・レーシングは既に、チーフ・テクニカル・オフィサーとしてマシン開発を先導するエイドリアン・ニューウェイの引退を見据えた組織運営に取り組んでいるようだ。
生涯現役を貫ける例は多くない。今年はロス・ブラウンが68歳でモータースポーツのキャリアに終止符を打った。フェラーリ黄金期を経て、チーム代表としてホンダワークスとブラウンGP、そしてメルセデスを率いた屈指の名将は2022年末を以てF1モータースポーツ担当マネージングディレクターの職を辞した。
11回のコンストラクタータイトルと7回のドライバータイトル制覇という偉業を達成した空力の鬼才は明日(12月26日)で64歳の誕生日を迎える。
チーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーはSpeedcafeとのインタビューの中で、ブラウンの引退に触れてニューウェイとの間で将来について話した事があるかと問われると「言うまでもなく検討してきたし、一定期間に渡って議論してきた」と述べ、既に引退に関して話し合ってきた事を認めた。
長く個の力に頼りすぎた組織がその人物を失った際に混乱と崩壊に見舞われる例は珍しいものではない。後進の育成を怠ったF1と国際自動車連盟(FIA)は未だに、チャーリー・ホワイティングの真の後継者足るF1レースディレクターに頭を悩ませている。
その点でレッドブルが同じ轍を踏む事はないかもしれない。
「エイドリアンの最高技術責任者としての役割は、アドバンスト・テクノロジー(部門)や今年の初めに発表したRB17(ハイパーカー)などで進化してきた」とホーナーは語る。
「彼がさまざまなプロジェクトに時間を割く事で、他のメンバーはステップアップすることを余儀なくされている」
「勿論、エイドリアンもその一員であり、グループと密接に協力している立場だが、我々にはテクニカルディレクターのピエール・ワシェとテクニカルチームがいる。彼らは素晴らしい仕事をしている」
「彼(ニューウェイ)は百科事典のような知識を持っているが、我々には技術面での強さと厚みがある。彼ら(ワシェ率いる技術チーム)がこれまでに成し遂げてきた成果は素晴らしい」
ニューウェイも去ることながら、ホーナーと対を成すチームの大黒柱、モータースポーツ・アドバイザーという肩書でCEOであるホーナー以上に重要な決定に携わってきたヘルムート・マルコの将来も気になるところだ。
グラーツ出身の元F1ドライバーは来年、80歳の誕生日を迎える。オーストリアのレッドブル本社とのパイプ役、若手育成プログラムリーダーとしての役割を担う後進は育っているのだろうか。