サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のピットウォールに座るクリスチャン・ホーナー代表らレッドブル陣営、2022年10月21日F1アメリカGP
Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1予算超過:レッドブル、ABA締結の可能性は低い? 提示の制裁内容に難色か

  • Published: Updated:

「驚きと失望」のお気持ち表明以降、2021年シーズンのF1予算超過騒動には何も進展がないが、パドックでは国際自動車連盟(FIA)がレッドブルに対して違反是認(ABA)のオファーと合わせて具体的なペナルティを提示したとの未確認の噂が広まっている。

監査報告を経て、FIAがレギュレーションの規定に従ってレッドブル及びアストンマーチンに対してABAを提示した事はほぼ疑いないが、その内容がどんなものであるのかについては、財務規定が昨年施行されたばかりの新しいルールであるため謎に包まれている。

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のパドックを歩くレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表、2022年10月21日F1アメリカGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のパドックを歩くレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表、2022年10月21日F1アメリカGP

だが、どうやらABAには、締結後に科される具体的なペナルティが記されているようだ。

Auto Motor und Sportによると、レッドブルは1週間前の段階から既に科せられる罰則の内容を知っていたと可能性があると言う。噂では、2023年シーズンに許可される風洞の稼働時間の25%減と罰金が提示されたようで、2021年の選手権ポイントの減点を伴う遡及的処分は見送られる内容だとされる。

レッドブルが違反したとされる超過額は、財務規定で定義されるところの「軽微予算違反」、すなわち1億4500万ドルの5%未満(750万ドル)だが、この際に科される制裁内容のリストに罰金の文字はない。

ただ別途、「財務ペナルティ」なる項目が設けられており、超過額を問わずケースバイケースで罰金を科す制裁措置が用意されている。

昨年のタイトルを確定できるというインセンティブはあるものの、伝えられるところによると無実潔白を主張するレッドブルは、FIAコストキャップ管理局からのこの提案に難色を示しているとされる。

また、エナジードリンク企業としての「レッドブル」のブランドイメージにも影響を及ぼしかねない問題であるため、クリスチャン・ホーナー代表の一存では決められず、総帥ディートリッヒ・マテシッツに相談しているとも伝えられている。

レッドブルのディートリッヒ・マテシッツCEOCourtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブルのディートリッヒ・マテシッツCEO

もしこれらが事実であるとすれば、一連の騒動が早期に決着するか否かはレッドブル次第という事になる。

仮にレッドブルがABAを突っぱねれば、一件はコストキャップ裁定委員会に引き継がれて審理が行われる事になる。そうなれば年内中の決着は難しいかもしれない。ただそうなると、昨季のみならず今季のコストキャップにも違反する可能性が出てくる。

2021年シーズン中に何があったにせよ、ルール解釈を巡って発生した問題だとすれば、レッドブルが2022年シーズンも同じ会計処理を採っている可能性は極めて高く、来年に公表が予定される今シーズンを対象とした監査報告でも同様の事態に発展する可能性がある。

なお、F1アメリカGPの舞台、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)では、ホーナーがFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長と話し込んでいる姿が目撃されている。

本来、会計処理を巡るチーム/FIA間のやり取りは秘密裏に行われるもので、決して外部に流出してはならないものだが、どう言う訳か、FIAによる監査報告を前に渦中の両チームが違反しているとの情報が漏れていた。

De Telegraafによるとレッドブルは、最近までメルセデスの法律顧問を務めていたFIA暫定事務局長のシャイラ・アン・ラオに疑惑の矛先を向けているようだ。

一連の騒動を巡ってパドックに流れる情報がどこまで信頼できるのかは全くの未知数だが、レッドブルの超過額については180万ドルという数字が頻繁に囁かれている。

予算ルールに違反したとされるレッドブルについてマクラーレンのザク・ブラウンCEOは「不正行為」であり「スポーツ的なペナルティが必要なのは明らかだ」と述べ、また、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は厳格な制裁が科されないようであればコストキャップの存在意義はないと主張するなど、ライバルはFIAに対する圧力を高めている。

F1アメリカGP特集