フェラーリ「供給先チームのドライバー人事に口出しすべきじゃない」アルボンのF1復帰巡るメルセデスの姿勢を非難
スクーデリア・フェラーリのマッティア・ビノット代表は、パワーユニット(PU)・サプライヤーとしての権力を武器にカスタマーチームのドライバー人事に口を出すメルセデスのスタンスを非難した。
アレックス・アルボンは今年、レッドブル及びアルファタウリのリザーブを務めつつ、ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)に参戦して第4戦ニュルブルクリンクでDTM史上初のタイ人ウィナーに輝き、現在は来季ウィリアムズとアルファロメオの有力候補に挙げられている。
噂では、レッドブルがアルボンのF1復帰に突如力を入れ始めたのはエナジードリンク企業としての”レッドブル”の大株主であるタイ創業家からの圧力があったためで、チーム代表のクリスチャン・ホーナーは否定しているものの、アルボンをグリッドに戻すために持ち込み資金も用意しているとされる。
ホーナーはオランダGPの週末、早ければ翌週末の第14戦イタリアGPを前にアルボンがいずれかのチームと契約合意に至る可能性があるとしたが、メルセデスはアルボンのウィリアムズ入りを快く思っておらず、ホーナーはメルセデスがアルボンのF1復帰を妨害する可能性があるとして懸念を表明している。
ウィリアムズにPUを供給するメルセデスのトト・ウォルフ代表は、故意にアルボンの行く手を阻む事はしないとする一方、ホンダF1 PU技術を引き継ぎ独立系エンジンメーカーを目指すレッドブルの子飼いドライバーがメルセデス製PUを搭載するマシンに乗る事は問題だと認めている。
更にウォルフは、ウィリアムズでのアルボンのF1復帰を”許可”する条件として、レッドブルに対してアルボンとの契約解除を要求した。これに関してホーナーは、ウォルフの姿勢は「少しばかり異常」と噛み付いた。
このようなメルセデスの態度について、同じくPUサプライヤーのフェラーリを率いるビノットは「間違っている」と述べ、供給先のカスタマーチームのドライバー選定についてPUサプライヤーは影響力を行使するべきではないと主張した。
「チームとドライバーとの間で起きている事柄はその両者の間で解決されるべきで、メーカーが影響を及ぼすべきではないと私は考えている」
「何処であれドライブのチャンスがあるのであれば、ドライバーはそのチャンスを得るべきだし、チームがシートを与える事に満足しているのであれば、シートを与えるべきだ」
フェラーリは出自に関する歴史的背景や同じイタリアブランドであるという事のみならず、大株主のエクソールを通してステランティスN.V.傘下のアルファロメオと近い関係にある。
これを象徴するようにフェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)所属のアントニオ・ジョビナッツィは2018年から同チームとの契約を結んでいるものの、ビノット曰く、フェラーリはアルファロメオのドライバーラインナップの決定に一切関わっていない。
「フェラーリはアルファに”フェラーリ・シート”があるとは一言も言っていない。それはアルファロメオとザウバーとの間の契約事であって、マシンのスポンサーを務めるアルファロメオの権利によるものだ」
なおメルセデス昇格が確実視されるウィリアムズのジョージ・ラッセルの後任にはアルボンの他に、メルセデスジュニアにして今季フォーミュラE王者であるニック・デ・フリースやアルピーヌ・アカデミー所属の周冠宇の名が取り沙汰されている。