F1新車解説:メルセデス「W12」は前季型と比較して何が変わった?レッドブル・ホンダとは対象的なダクトへのアプローチ
チームが認めている通り、ディフェンディング王者が解き放った2021年型メルセデスW12のレンダリングイメージには多くの謎が隠されており、真の姿がバーレーンテスト前に明らかにされる事はない。
メルセデスは昨季型のマシン開発を早々に中止し、リソースの全てをかなり早い段階で2021年仕様のパッケージに集中した。恐らくはどのチームよりも潤沢な開発期間を経て生み出されたマシンである事だろう。
「W12」は全体として昨季型のローレーキ・スタイル(横から見た際の傾斜が緩やか)を踏襲した進化版で、背後には設計上の不備を抱えていたMGU-Kの信頼性を改善させ、ICE(内燃エンジン)とターボチャージャーの改良によりパフォーマンス向上を果たした最新パワーユニット「M12 E Performance」が搭載される。
ダブルタイトル8連覇が懸かる「W12」は昨季型「W11」と比較して一体どこが変わったのか? 駆け足で見てみたい。
まず、本家ナローノーズやノーズ下部に配置されるケープと呼ばれる整流フィンは昨年型と変わりないように見える。その一方でフロントウイングのフラップ形状は変更され、翼端板後方の切り落とし部分が拡大されているように見えるがコンセプトそのものに変化はない。
ウイングに関してはボルトオン式の交換可能なパーツであるため、あまりレンダリングを真に受けても馬鹿を見る事になるかもしれないが。
興味深いことに、フロントブレーキダクトはレッドブル・ホンダRB16Bとは対象的に上側半分が狭められた。このエリアはフロントウイングからの気流をバージボードへと導く役割を担う。つまりは、バージボードもこれに合わせて変更が必要という事で、全面的に見直されている。サスペンションのアッパーアーム上部にも見慣れない突起のようなものが取り付けられている。
ウイングミラーのマウント部分の形状も変更されている。空力学的効果もさることながら、ドライバーの視認性向上に役立つものと思われる。
エンジンカバーはよりアグレッシヴかつタイトなフォルムとなり、ラジエーター吸気口の後方、サイドポッド周りの形状も大きく変更された。
インダクションポッド脇の「INEOS」のロゴ下部あたりには妙な凹凸が確認できる。テクニカル・ディレクターのジェームズ・アリソンの言葉を借りるとこれは「セクシーな膨らみ」で、馬力向上を目指すパワーユニット部門が果たした仕事の一部を隠すものだという。
肝心のフロアやリアディフューザー周りはライバルチーム同様に、規約による変更点以外は完全にベールに包まれているが、アリソン曰く「あらゆる箇所に関して、我々は数平方cm単位で空力学的なチャンスを追い求めてきた」との事で、バーレーンテストでお披露目される実車への興味がそそられる。