メルセデスの2021年型F1マシン「W12」のエンジンカバー
Courtesy Of Daimler AG

メルセデス:ICEとターボの改良でパワーアップした2021年型F1パワーユニット「M12」

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メルセデスHPPが放つ2021年型F1パワーユニット「M12 E Performance」は、メルセデスとしては8代目の最新スペックとなる。今季は実質的にシーズン開幕以降のパフォーマンス向上を目的としたアップデートが禁止されるため、例年以上に冬の間の開発の意義が大きいが、昨年は終幕が12月半ばであった事からそれも簡単な話ではない。

アンディ・コーウェルに代わり新たにPU部門を率いるハイウェル・トーマスは「規約が安定している状況で更なる性能を引き出すためには集中的なアプローチが必要だが、今年も一歩前進できたと感じている」と述べ、「M12」が前期型よりもパワー向上を果たしたと明かした。

何処の領域かは明らかにされていないが、曰く「全く新しい革新的技術を幾つか取り入れた」という。

開発の目玉はICE(内燃エンジン)だ。ブリックスワースの開発陣は熱効率の追求と並行して、排気熱の影響を最小化すべくターボチャージャーにも変更を加えた。トーマスはこれらの開発が性能向上において最も顕著だと説明した。

信頼性の改善にも余念がない。パワーが上がれば、その分だけより高い耐久性が要求される。

2020年はアルミ構造を使用したエンジンブロックを使っていたが期待されたほど高い信頼性を発揮しなかったため、代わりに新たな合金が導入された。

また、設計上の欠陥から昨年度々問題を生じていたMGU-Kにも対策が施された。トーマスは次のように説明する。

「我々は2020年にゼロから再設計された新しいMGU-Kを導入した。これにより性能面は確実に前進したものの、安定的に製造・組み立てを行う事が難しい設計であったため、途中で故障するケースも幾つかあった」

「2021年に向け我々は設計を見直し、どの部位が故障を発生させているのかを突き止めた。信頼性向上のために、今年はより安定的に製造できるよう設計を変更した」

MGU-Kの破損リスクを抑えるべくメルセデスPU勢は、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがポール・トゥ・ウインを飾った最終アブダビGPを含む昨季終盤戦で意図的に出力を抑えてレースを戦っていた。

MGU-Kの信頼性向上はICE及びターボの改良と相まって「M12」のパフォーマンスを大きく引き上げる事になる。