
ポールポジション
ポールポジション(英:pole position)とは、レース開始時に着くスターティンググリッドの最も先頭の位置を指す。略して「ポール」や「PP」と呼ばれ、F1では通常、予選の最終セッションで最速タイムを記録したドライバーが獲得する。
前方にライバルがいない状態でスタートできるため、基本的には最も有利なスタート位置といえる。ただし、コースによっては必ずしも有利とは言えない場合もある。
ポールの決まり方と予選最速との違い
現在のF1予選は、Q1、Q2、Q3の3段階で争う。各段階で下位のドライバーが脱落し、最後に残った10人がQ3で上位10グリッドを争う。原則として、このQ3で最も速い有効なラップタイムを記録したドライバーがポールを獲得する。Q1やQ2のタイムは持ち越さないため、予選全体で最速のラップを記録しても、それがQ3のタイムでなければポールにはならない。
最速タイムが1000分の1秒まで同じ場合は、先にそのタイムを記録したドライバーが上位となる。また、予選中に使われる「暫定ポール」は、その時点での首位を意味する。
予選結果とスターティンググリッドは必ずしも一致しない。予選で最速を記録したとしても、走行妨害や規定数を超えるパワーユニット(PU)交換などによるグリッド降格を受ければ、ポールポジションに着くことはできない。
ポールの利点と不利になる条件
最大の利点は、最も先頭からレースを始められることだ。スタートで首位を守れば、他のマシンを追い抜くことなく自分のペースで走れる。先行するマシンが生む乱れた気流の影響も受けにくく、空力性能を発揮しやすい。特に追い抜きが難しいコースでは、前方の位置を確保する価値が高い。
一方、エルマノス・ロドリゲス・サーキットのようなスタートから最初のコーナーまでが長いコースでは、後続がスリップストリームを利用して迫ってくるため、不利になることもある。後続車両側は空気抵抗が小さくなり、トップスピードが伸びるためだ。
スタートの成否は、左右のグリッドの路面状態やタイヤのグリップにも左右される。さらに、予選で求められる1周の速さと、燃料を積んでタイヤを管理しながら走る決勝の速さは一致するとは限らない。ポールは勝利への大きな助けとなるが、その利点を生かせるかはスタート、レースペース、戦略次第だ。
タイヤ規則と予選を走らない戦略
過去のF1には、予選で使ったタイヤが決勝の戦略を制約するレギュレーションがあった。2013年当時、Q3に参加してタイムを記録したドライバーは、原則としてQ3で自己ベストを出したタイヤセットで決勝をスタートする必要があった。予選と決勝スタートの両方でドライタイヤを使う場合の規定だ。
このため、Q3でタイムを記録せず、スタートタイヤの選択肢や新品タイヤを決勝に残す戦略が生まれた。2013年F1第3戦中国GPでは、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)とニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)がQ3でタイムを残さず、決勝に向けてスタートタイヤの選択肢を確保した。
2014年には、Q3進出者のスタートタイヤをQ2で自己ベストを記録したセットとするルール変更が行われ、Q3専用の追加タイヤも導入された。その後、このスタートタイヤの制約は2022年に撤廃され、Q3進出者も予選で自己ベストを出したセットに縛られず、決勝のスタートタイヤを選べるようになった。
スプリントとポールの記録
スプリント開催週末では、スプリント予選でスプリントのグリッドを、別に行う本予選で決勝のグリッドを決める。スプリントのポールと決勝のポールは別ものだ。
過去の記録を読む際は、制度の違いにも注意が必要だ。2021年のスプリント開催時は、スプリントの結果を基に決勝のグリッドを決め、原則としてスプリントを先頭でフィニッシュしたドライバーにポールの称号が与えられた。2022年には予選最速者がポールを記録する方式に変更されたが、決勝のグリッドは引き続きスプリントで決めた。2023年からは両者のグリッド決定が分離された。
ポールから決勝を制することを「ポール・トゥ・ウイン」と呼ぶ。ポールポジションの獲得者は多くの人から賞賛されるが、選手権ポイントは与えられない。一方、決勝レースの勝者には選手権ポイントが与えられ、その積み重ねによりチャンピオンに輝けば、その名を歴史に名を刻むことになる。