フェラーリ、方針転換?「ルクレールに遅く走れと命じるつもりはない」チームオーダー発動を否定
マラネロ内の空気に若干変化が生じているようだ。スクーデリア・フェラーリのマッティア・ビノット代表は8日間のF1バルセロナ合同テストを終え、セバスチャン・ベッテルとシャルル・ルクレールを互いに競わせる方針を表明。これはテスト前の発言とは食い違っている。
「ドライバー二人は自由に競い合う事になるだろう」とビノット代表。「我々はシャルルに対して遅く走れと命じるつもりも、セバスチャンに先に行けと言うつもりもない。我々に必要なことは、出来うる限りの能力を発揮して最善を尽くす事だからだ」
プレシーズンテスト前に行われた「SF90」の新車発表でビノット代表は「ある特定の状況が発生した場合、我々はセバスチャンの方を優先する」とコメント。暫定的なNo.1ドライバーとして、ベッテルを優遇する考えを示していたが、カタロニア・サーキットでのルクレールの走りを見て、幾らか考えを改めたようだ。
21歳のモナコ人ドライバーは、テスト7日目にC5コンパウンドを履いて1分16秒231を記録。その時点での冬季テスト全体ベストを更新した。最終的に、100分の1秒という僅差で最終日を担当したベッテルに先行を許したものの、4度のF1ワールドチャンピオンに引けを取らないパフォーマンスを示してみせた。
「シャルルが非常に速いことに疑いはない。素晴らしいドライバーだ」ルクレールの冬季テストでの走りについて問われたビノット代表はこのように語った。「彼は新しいチームとエンジニア達と共に、クルマを理解する事に集中して取り組んでいた」
「私は彼ら二人がトラック上で互いにバトルをしていたとは考えていない。重要な事はクルマを理解することだからだ。彼らは非常に似通ったラップタイムを刻んだが、それはシャルルが速く素晴らしいドライバーである事を示しているだけだ」
「ただし、その事は昔から分かっていた事だ。彼は何年にも渡ってフェラーリにいるからね。昨年のザウバーでも同じ様に速さを示していた」
イタリアのチームは昨年、チームオーダーの発動を躊躇したことで、獲れたであろうはずのポイントを何度か落としている。その一方で冷静なドイツチームは、ここぞという場面で迷わずチームオーダーを発動し5連覇を達成。パドック内にはフェラーリのストラテジーを批判する声が多く聞かれた。
だがビノット代表は、両ドライバーに競い合わせる姿勢こそがスクーデリアに良い結果をもたらすと考えている。「フェラーリにとって良い事だと思っている。スタートの時点で考えを明確にしておけば、(判断に迷うような)難しいシチュエーションに遭遇しても間違いを犯すことはない」
ルクレール本人は、ベッテルを優先的に扱うというフェラーリの決断について「僕の仕事は速く走ることだ。チームオーダーが不要なほどにね」とテスト7日目に語っている。