メルセデスF1に衝撃、”ゼロポッド”貢献のリアクション・エンジンズ社が経営破綻…パワーユニットへの影響懸念
メルセデスの2022年型F1マシン「W13」に採用され、その独特な外観から話題を集めた「ゼロポッド」の立役者ともされる英国の航空宇宙メーカー、リアクション・エンジンズ社(REL)が、2024年10月31日に破産手続きを開始した。
F1パワーユニット(PU)サプライヤーとして、現在メルセデスはワークスチームに加え、マクラーレン、アストンマーチン、ウィリアムズの3つのカスタマーチームにもPUを供給しており、これにRELの技術を採用しているとされる。
次世代PUが導入される2026年以降も同社の技術が採用される計画であったかは不明だが、現行PUが継続される2025年については、破綻の影響が懸念される。
F1チーフ・テクニカルオフィサーであるパット・シモンズによれば、サイドポッドを極限までコンパクトにまとめた独自の「ゼロポッド」コンセプトは、RELの冷却技術の採用により実現した。
この奇抜なコンセプトは翌年のW14にも引き継がれたが、同年5月のモナコGPで導入されたアップグレードにより姿を消した。
RELが手掛けるロケットエンジン開発においては、ターボチャージャー付きガソリンエンジンと同様、吸気を圧縮し冷却する必要があるが、その要件ははるかに厳しい。音速の5倍という速度でエンジンの吸気口に押し込まれる過程を通して、空気の温度は約1,000°Cに達する。
これを周囲温度にまで下げるためにRELは、「プリクーラー」と呼ばれる独自の技術を開発した。これは数千本のチューブで構成された熱交換器で、1,000°Cを超える高温の空気を1/20秒以内に常温まで冷却する能力を持つとされる。
メルセデスのF1パワーユニットには、このプリクーラー技術が使われていると見られている。
RELは1989年の創業以来、30年以上にわたって「SABRE」と呼ばれるロケットエンジンの開発に取り組んできたが、自力での経営継続が困難となり、先月末に共同管財人の管理下に置かれた。
Aviation Weekの報道によると、200名以上とされる従業員の大半は既に解雇された。