アルファタウリと対照的なウィリアムズ、数十億円喪失のリスク厭わぬ方針の裏にあるヴァウルズの画
ウィリアムズはコンストラクターズ選手権でアルファタウリに敗れるリスクを厭わず、2023年シーズンの早期にFW45の開発を停止した。その裏には名門ウィリアムズの復権に向けたチーム代表を務めるジェームズ・ヴァウルズの野望が見て取れる。
コンストラクターズ選手権7位を争った両チームの開発戦略は対照的だった。シーズン中に幾つかのアップグレードを投入しただけのウィリアムズに対し、アルファタウリは年間を通して積極的に車体を改善し続けた。
早期の開発停止は成績低下の可能性を意味する。これは小規模チームにとって分配金減少に繋がる重大なリスクだが、ヴァウルズは短期的な損失リスクを抱えても中長期的なチームの発展を優先したいと考えている。
昨季の開発戦略についてヴァウルズは独「AMuS」とのインタビューの中で、「アルファタウリに抜かれるリスク」を負ったとしても、可能な限り早い段階で2024年に開発リソースを切り替えたかったと説明した。
選手権7位の座を死守すべくヴァウルズは、ドライバーとレースチームに「多くを要求」したと認めた。マシンの開発が停止された状態、ヴァウルズの言葉を借りれば「片手を背中に縛られた状態」であったにも関わらず、ドライバーとチームはこの困難な要求に応えてみせた。
7位に終わるか、それとも8位に終わるのかは、推定約2,000万ドル、日本円にして約30億円近い分配金の差を意味するが、ヴァウルズは「私が重視しているのは今日の7位、8位、9位ではなく、明日に向けた大きなステップだ」と述べ、2024年以降の進歩に焦点を当てていると強調した。
コンストラクターズ選手権でウィリアムズを抑えて6位を確保したのはアルピーヌ、5位を獲得したのはアストンマーチンだ。当然、次なる目標は両チームの打倒となるが、2024年に彼らと争い打ち負かす可能性についてヴァウルズは「現実的ではない」と否定的だ。
「私はこれらのチームとの本当の差を知っているし、自分たちの成長速度も知っている。我々が変えたいと望んでいるものに向けて来年、その一歩を踏み出すにはまだ遠すぎる」
ヴァウルズは「来年はもっと良い状態になると確信しているが、自分たちの長期目標を危うくするようなことはしないつもりだ」とも述べ、短期的な成果を追求することなく、チームの長期的な成功を目指す方針を明確にした。
ヴァウルズは昨年頭のチーム代表着任を経て早速、財務、技術開発、管理、マーケティング、人事の各部門にディレクターを配する組織変更を実施した。
そして老朽化したファクトリーの改修に加え、インフラ予算上限の引き上げを受け、生産能力の増強、新しいシミュレーター、シミュレーションや部品管理のためのソフトウェア開発に投資する決断を下した。
最新鋭のシミュレーターは2025年に、デジタル部品管理システムは2024年半ばから末に、そして生産設備は12から36ヶ月以内に利用可能になる予定だ。
これらの成果が出るのはまだ先だ。ヴァウルズが名門ウィリアムズ復活に向けた初戦として見据えているのは、次世代パワーユニットとシャシーが導入される2026年シーズンと言える。
ヴァウルズは、「今日を考えること」を止め、将来の進歩に焦点を合わせる姿勢がチームに必要だと訴え、現在はこの「文化的変化」の最中にあると説明し、次のように続けた。
「この変化は始まっているが、完全に浸透するにはまだ時間がかかる。だが最初の成果は既に見えており、クルマは少しずつ良くなっている」
「今のウィリアムズはあらゆる面で改善されているが、あるべき姿にはまだほど遠い」