妨害を懸念するレッドブル・ホンダ、メルセデスがアルボンのウィリアムズでのF1復帰を快く思わない理由
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レッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は、アレックス・アルボンのウィリアムズでの2022年F1復帰をメルセデスが妨害する事への懸念を表明した。
セルジオ・ペレスにシートを奪われたアルボンは今年、レッドブル及びアルファタウリのリザーブドライバーを務めつつ、ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)に参戦。第4戦ニュルブルクリンクではDTM史上初のタイ人ウィナーに輝いた。
クリスチャン・ホーナーは第13戦オランダGPの初日、ウィリアムズとアルファロメオがアルボンに関心を示しており、早ければ第14戦イタリアGPを前に合意に至る可能性があると明かした。
なおザントフォールトでのイベント初日には、クリスチャン・ホーナーとウィリアムズのヨースト・カピートCEOがパドックで会話を交わしていた様子が目撃されている。ヨースト・カピートは言わずと知れたフォルクスワーゲンの世界ラリー選手権(WRC)連覇の立役者であり、そのプログラムを通してレッドブルと緊密な関係を築いている。
姉妹チームのアルファタウリ・ホンダは現時点で来季のラインアップを発表していないものの、ピエール・ガスリーと角田裕毅の続投は揺るぎない。よってアルボンに残された道は、ジョージ・ラッセルのメルセデス昇格によってシートに空きが出ると見られるウィリアムズと、引退を発表したキミ・ライコネンと将来不確かなアントニオ・ジョビナッツィが所属するアルファロメオの二択のみとなる。
ただ、実質的にはアルファロメオ一択といった状況なのかもしれない。クリスチャン・ホーナーがSky Sportsとのインタビューの中で語ったところによると、メルセデスはアルボンのウィリアムズ加入を阻止しようとしていると言う。
「メルセデスが彼のウィリアムズでのチャンスを妨げない事を願っている。そんな事になればそれは本当に凄く不名誉なことだ」とクリスチャン・ホーナーは語った。
「彼の希望はウィリアムズだと思うが、幾つかのハードルがある事は明らかだ。彼は隣のチーム(メルセデス)から”行くな”との電話を4回ほど受けている」
アルボンに何と答えるように言ったのかと問われたホーナーは「無視しろと言ったよ」と答えた。
一方、メルセデスのトト・ウォルフ代表は「アレックス・アルボンのようなドライバーの邪魔をするつもりは一切ない。彼は素晴らしい人物だし性格も素晴らしい」と述べ、アルボンを妨害する意思はないと主張した。
実際に妨害行為が存在しているかどうかはさておき、メルセデスがアルボンのウィリアムズでのF1復帰を快く思っていない事であろう事はほぼ確実で、その理由も明らかだ。英国グローブのチームはメルセデスHPP製のF1パワーユニットを搭載している。
レッドブルはホンダのF1パワーユニット技術を引き継ぎ、独立系エンジンメーカーとなる事を目指している。アルボンがウィリアムズと契約を結べばレッドブルはライバルの企業秘密情報へのアクセス手段を得る事になる。
なおトト・ウォルフは「アルファとウィリアムズの空いているスペースを検討する必要がある」と述べ、今季のフォーミュラE選手権王者であり子飼いのニック・デ・フリースのF1デビューを模索している事を認めた。
口が滑ったのだろうか。ニコラス・ラティフィの続投が確実視される中で「ウィリアムズの空いているスペース」が意味するものはラッセルの昇格に他ならないが、メルセデスはまだルイス・ハミルトンの来季のチームメイトを発表していない。”公然の秘密”とはこのようにして形作られていくのだろう。無論正式発表まで何が起きるか分からないのがF1という世界の常ではあるが。
デ・フリースは、アルボン、ジョビナッツィ、バルテリ・ボッタス、そしてアルピーヌ育成傘下の周冠宇と共に、ウィリアムズ及びアルファロメオのシートを狙う有力候補の一角と見られている。
なおフランスのテレビ局「Canal +」はオランダGPの初日金曜に、来季アルファロメオはボッタスとアルボンで、ウィリアムズはラティフィとデ・フリースになる見通しだと伝えている。
翌イタリアGPの週末はハース、アルファロメオのラインナップ発表が予想されており、ドミノ倒し的にメルセデスとウィリアムズの計4チームによる発表ラッシュとなる可能性がある。