フォルクスワーゲン F1参戦の可能性が消滅、内燃エンジンに別れ…モータースポーツ活動はEVのみへ
フォルクスワーゲンのF1参戦の可能性が消滅した。独フォルクスワーゲンは11月22日、将来のモータースポーツ戦略を発表し、今後は内燃エンジンを搭載するレースカーへのサポートを取り止め、電動レーシングカーへと完全に一本化させる方針を示した。
フォルクスワーゲンの技術開発部、ブランドマネジメント委員会のフランク・ウェルシュは声明の中で「今こそ未来に向けた次の一歩を踏み出す時だ。フォルクスワーゲンはモータースポーツにおいて、断固としてe-mobilityにコミットし、内燃エンジン車でのワークスとしての活動に別れを告げる事になる」と述べた。
F1は、現行レギュレーションが満了を迎える2021年以降も、1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンを継続する方針を打ち出しており、少なくとも2025年までは、フォルクスワーゲンがF1に参戦する可能性が完全に消滅した事になる。
フォルクスワーゲングループはVWの他に、アウディやベントレー、ブガッティ、ランボルギーニ、ポルシェ、シュコダなど様々なブランドを抱えている。中でもポルシェやランボルギーニといったスポーツカーブランドには、これまで何度となくF1参戦の噂が立ち上がっていたものの、その度にコストやタイミングを理由に難色が伝えられてきた。
今回の発表はフォルクスワーゲン名義であり、他のブランドに関する言及があったわけではないものの、この方針がアウディやポルシェ、ランボルギーニに影響を与える可能性は高いものとみられる。
フォルクスワーゲンは、電気自動車という新たな領域での先駆者の地位を確立すべく、昨年フルEVレーシングカー「ID.R(アイ・ディ・アール)」を開発。パイクスピーク(アメリカ)、ニュルブルクリンク(ドイツ)、グッドウッド(イギリス)、そして天門山(中国)で数々の記録を打ち立て、市場へのアピールを強めてきた。
ヨースト・カピートの後任として現在モータースポーツ部門のトップを務めているスベン・スミーツは、モータースポーツ活動におけるEVへの一本化の狙いについて「電動モビリティには大きな発展の可能性が秘められており、モータースポーツは先駆的な役割を果たし得る存在。将来の生産車開発のための実験室としての役割や、人々を電動モビリティへと駆り立てる説得力あるマーケティングプラットフォームとしての役割を果たす」と説明した。
この方針と呼応する形で、カスターマー向けのスポーツプログラムもEVへとシフトする。
カスタマーサービスとスペアパーツの供給は長期的に保証されるものの、レーストラック用のゴルフGTI TCRの生産は2019年末で終了となり、現行モデルを以て廃止される。ラリー用のポロGTI R5は、今後もカスタマーチーム用に生産され続けるものの、今後はフォルクスワーゲンがワークスとしてレースにエントリーする事はない。
今回のワーゲンの発表は、モータースポーツ史の1つの転換期を示すものと言える。ホンダやメルセデスといった他のメーカーに与える影響も注目される。