9年ぶりのコンストラクターズ選手権制覇を抱き合って喜ぶマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とクリスチャン・ホーナー代表、2022年10月23日F1アメリカGP
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フェルスタッペン「見たかっただろうね…」亡き恩人に捧げた9年ぶりのチームV…”11秒の試練”乗り越え劇的勝利

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レッドブル・レーシングは2014年の1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジン導入後、8年に渡って続いてきたメルセデスの支配体制に終止符を打ち、2013年以来、9年ぶりとなる悲願のコンストラクタータイトル奪還を果たした。

鈴鹿日本GPでのドライバーズチャンピオン獲得に続く2022年シーズンのWタイトルは、マックス・フェルスタッペンの今季13勝と共にF1アメリカGPの舞台、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で成し遂げられた。

チャンピオンTシャツを着て9年ぶりのコンストラクターズ選手権制覇を祝うレッドブルのセルジオ・ペレス、エイドリアン・ニューウェイ、ヘルムート・マルコ、マックス・フェルスタッペン、クリスチャン・ホーナー代表、ジョナサン・ウィートリー、2022年10月23日F1アメリカGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

チャンピオンTシャツを着て9年ぶりのコンストラクターズ選手権制覇を祝うレッドブルのセルジオ・ペレス、エイドリアン・ニューウェイ、ヘルムート・マルコ、マックス・フェルスタッペン、クリスチャン・ホーナー代表、ジョナサン・ウィートリー、2022年10月23日F1アメリカGP

フェルスタッペンは「この勝利をディートリッヒに捧げたい」と述べ、レース前日に78歳で亡くなったチームオーナーでありレッドブル創業者のディートリッヒ・マテシッツに想いを馳せた。

「僕にとっても、チームにとっても、間違いなく大きな意味がある勝利だ。だって彼はチーム全体にとって本当に重要な存在だったからね」とフェルスタッペンは語った。

「もちろん、それはこれからも変わらないけど、僕らは今日、何としても良い結果を残したいと思ってた。だからもちろん、これ以上の結果なんてない」

「本当に辛い週末になってしまっただけに、どうしても勝ちたかった。全てが順調だと思ってのに、最後のピットストップで11秒を失ってしまった。あれは最良とは言えなかった」

「おまけにセーフティーカーが出た事でフィールドがかなり接近していたから、巻き返しのためにはかなり頑張らなきゃならなかった」

チーム代表のクリスチャン・ホーナーは「途方もなく感慨深い週末になった。考えうる中での最高の方法で勝ち取った。ディートリッヒもさぞかし誇りに思ってくれている事だろう」と述べた。

レース前グリッドで故ディートリッヒ・マテシッツに敬意を表すレッドブル関係者と縁あるドライバー達、2022年10月23日F1アメリカGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

レース前グリッドで故ディートリッヒ・マテシッツに敬意を表すレッドブル関係者と縁あるドライバー達、2022年10月23日F1アメリカGP

シーズン13勝というのはセバスチャン・ベッテルとミハエル・シューマッハに並ぶシーズン最多優勝記録だが、レッドブルのオランダ人ドライバーは記録への執着心が薄い。

フェルスタッペンは「今は1年間に開催されているレース数自体が多いわけで、必ずしも意味があるわけじゃない」として、「たくさん勝てた事は誇らしく思うけど、統計はあまり気にしていないんだ」とした。

亡きマテシッツに勝利を捧げるべきレースでフェルスタッペンは、2番グリッドに着くとスタート直後にトップに浮上。ただ、2回目のタイヤ交換の際に11.1秒もの時間を要して3番手にまで転落する試練に見舞われた。

「(頭の中は)悪態ばかりが浮かんでいたよ。かなり苛立っていたしね。でも、ピットリミッターをオフにしたら、すぐに気持ちを切り替えて頑張らなきゃならない。まぁ簡単じゃなかったけどね」

勝利の美酒で弔う事は叶わないのか…だがフェルスタッペンは決して諦めていなかった。まずはシャルル・ルクレール(フェラーリ)を交わして2番手に浮上すると、残り7周でルイス・ハミルトン(メルセデス)を仕留めて首位を奪還。後続に5.023秒差をつけてトップチェッカーを受けた。

両者とのバトルについてフェルスタッペンは「最初はシャルルと良いバトルができていたけど、新品タイヤを履いた最初の数周で少しタイヤを傷めすぎたみたいで、彼の前に出た後の最初の数ラップは思うようにルイスを捕らえることができなかった」と振り返った。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)の追撃を受けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2022年10月23日F1アメリカGP決勝レースCourtesy Of Red Bull Content Pool

シャルル・ルクレール(フェラーリ)の追撃を受けるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2022年10月23日F1アメリカGP決勝レース

「でもその後、タイヤが持ち直した後は少しずつギャップを縮めていって、ターン12で追い抜くことができた」

タイヤが持ち直したというのはどういう事なのか?

「オーバーヒートしていたって事さ。新品タイヤだったから、徐々に熱を上げていかなきゃならなかったのに一気に熱が入りすぎてしまってね」とフェルスタッペン。

「それに高速コーナーで前のクルマの背後を走ると、どうしてもいつも以上にステアリングを切らなきゃならないからね。それもタイヤにとっては良くないんだ」

「クリーンエアーの中で周回すると自然と熱が冷めてくる。だから数周ほど必要だった」

リザルトだけを見れば快勝といった印象だが、この日はフェラーリやメルセデスを追い抜きあぐねる場面が目につき、オーバーテイクした後も数周に渡って防戦を強いられた。

「DRS圏内から弾き出すのに苦労したよ。シャルルを抜いた時もそうだったんだけど、今回のレースではDRSから中々引き離せず、僕らにとっては決して楽な戦いじゃなかった」

「それでもこうして最終的に、この辛い週末のレースで勝てて本当に嬉しい。思うに、彼が生きていたら凄く見たがったようなレースになったんじゃないかと思う」

「だから当然、悲しさはあるんだけど、週末を通したオペレーションを含めてチーム全体の仕事ぶりを本当に誇らしく思ってる」

「もちろんピットストップのことは別だけどね。とは言えあれはホイール・ガンの故障が原因だし、残念ではあるけどこういう事は起こり得ることなんだ」

「ただそれがあっても僕らはポジションを守り抜き、コンストラクターズタイトルを勝ち取ったんだ」


10月23日(日)にサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で行われた2022年F1第19戦アメリカGPの決勝レースでは、2番グリッドからスタートしたマックス・フェルスタッペンが今季13勝目を上げ、レッドブル・レーシングが9年ぶりのコンストラクターズ選手権制覇を成し遂げた。

エルマノス・ロドリゲス・サーキットを舞台とする次戦メキシコGPは10月28日のフリー走行1で幕を開ける。

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