マシンに肘をついて笑顔を見せるハースF1チームのロマン・グロージャン、2019年
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F1公式ゲームはリアルじゃない…同僚たちと同じ様にiRacingを選んだロマン・グロージャン

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ハースF1チームのロマン・グロージャンは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)やランド・ノリス(マクラーレン)達と同じ様に、F1公認ゲームにはリアリティがないと考えており、不自然なクルマの挙動に耐えきれずにオンラインシミュレーターの業界リーダーであるiRacingへと移行し、バーチャルレースライフを楽しんでいる。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響でF1を含む様々なモータースポーツシリーズは、人との接触への配慮を心配する必要がないバーチャルイベントの開催に力を入れており、ファンのシムレースへの関心はかつてないほど高まっている。

モータースポーツに限らずサッカーや野球、マラソンや自転車競技など、あらゆるスポーツがイベントの中断を強いられているが、モータースポーツ以上にシミュレーションゲームとの相性が良いものは見当たらない。ステアリングコントローラーの存在が両者の境界を曖昧にするためだ。

“十字キー”を使うスポーツがない事から明らかなように、他のスポーツゲームの場合はリアルか否かを論じる以前に両者は完全な別物だが、モータースポーツ(4輪に限る)はそうではない。そのゲームがリアルなのかどうか、つまり実車の挙動やフィーリングの再現性の程度についての話題はファンの大きな関心事だ。

F1はCodemasterが開発を手掛けるコンシューマ機向けの公認ゲーム「F1 2019」を使って「F1 Esports Virtual Grand Prix」と題したオンラインイベントを開催している。現在はシャルル・ルクレールやアレックス・アルボンら7名の現役F1ドライバー達が参加しているが、自他ともに認める大のシムレース好きドライバーであるフェルスタッペンは頑なにエントリーを拒んでいる。

何故か? フェルスタッペンと同じく世界的に知られるシムレースチーム「Team Redline」の一員であるノリスは、公式ゲームはグランツーリスモはシミュレーションゲームではなくアーケードゲームだからだと説明。ドライビングフィールの再現性という点で「F1やグランツーリスモ、特にグランツーリスモは酷い」と述べ、シムレースに興味を持つプロドライバーにはiRacingやrFactorを薦めている。

スパ・フランコルシャンのオールージュを駆け上がるF1マシン、PS4テレビゲーム「F1 2018」
スパ・フランコルシャンのオールージュを駆け上がるF1マシン、PS4テレビゲーム「F1 2018」

3児の父でもあるグロージャンは熱心にゲームをプレイするタイプのドライバーではなかったが、今回の新型肺炎の混乱を機にシムレースの世界に足を踏み入れたところ大いに感銘を受けたようで、自信の名を冠したシムレースチーム「R8G Sim Racing Team」を立ち上げるほどに熱を帯びている。

にも関わらず、グロージャンのF1バーチャルGPへの参加は期待できそうにない。かつてフォードGT1を駆りル・マン24時間レースに参戦した事もあるフランス人ドライバーはThe Raceとのインタビューの中で「F1公認ゲームをちょっと試してみたけど、あまり良い感触を得られなかったからiRacingに移行したんだ」と語った。

「理由は幾つかあるんだけど、僕はGTカーが好きだし、(F1公認ゲームよりも)iRacingの方がクルマの挙動がリアルだと感じているからだ。こういうコメントをしているのは僕だけじゃないよね」

「F1が(バーチャルGP)イベントに参加して欲しいと思ってるのは分かっているし、僕としてもそうしたいとは思うんだけど、(1周あたり)ペースが2秒も落ちてしまう感じだと厳しいよね」

激しく宙を舞う大クラッシュが発生、ミシガン・インターナショナル・スピードウェイで開催されたINDYCAR iRacing Challengeの第3戦にて
激しく宙を舞う大クラッシュが発生、ミシガン・インターナショナル・スピードウェイで開催されたINDYCAR iRacing Challengeの第3戦にて

iRacingという新たな楽しみを見つけたグロージャンは、自身よりも遥かに速いシムレーサー達にキャッチアップする過程を楽しみにしており、新しい物事を学ぶ事に貪欲だ。

「何しろ本当に楽しいからね」とグロージャンは語る。「セットアップなんかは本当に興味深いし。今はまだオーバルでのレースに参加できる状態じゃないから、まずはライセンスを取得するための時間を見つけたいと思ってる。でも、僕はワールドラリークロスが大好きだし、インディカーのレースも楽しそうだからワクワクしてるよ」

「燃料レベルとかタイヤ交換とか、最初は本当に何も分かってなくて、”なんでピットストップがこんなに遅いんだろう”と思ってたら、”タイヤを交換しているからだろ”って言われる始末だったんだ。交換のやり方すら分からなかったんだよ」

「学ばなきゃならない事はたくさんあるけど楽しいよ!」