2018年F1モナコGPスタート直後のホームストレート
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速いのはどっち?2018年F1前半戦総括:予選チームメイトバトル集計…実力が拮抗しているのは意外にも。。

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ハンガロリンクでのレースを終えて、史上最多タイの全21戦で構成される2018年シーズンのF1世界選手権の前半戦が終了。F1サーカスは規約で定められたサマーブレイクへと突入した。

コンストラクター別ランキングでは、メルセデスがフェラーリを10ポイント引き離し首位。これに三強の一角レッドブルが睨みをきせ、ルノー、ハースの中団グループ上位勢が続く。一方のドライバーズランキングではルイス・ハミルトンがドイツ、ハンガリーを立て続けに制しセバスチャン・ベッテルを逆転。24ポイント差でトップに立っている。

F1の楽しみ方は数あるが、チャンピオンシップと並び興味深いのがチームメイトバトル。同じマシンに乗る二人のドライバーの内、速いのはどちらなのか?決勝レースはマシントラブルやアクシデント等の不確定要素が多いため、純粋な速さを見極めるのには予選結果を参照するのが好ましい。

そこで、各チーム毎にシーズン前半の対チームメイト予選成績を集計してみた。なお、故障等の理由によって少なくともどちらか一方が出走できなかったグランプリについては除外する事とし、参考までに決勝結果についても同様の条件で勝敗を記しておく。コンストラクターランキング順に見てみよう。

1位メルセデス: ハミルトン7勝 vs ボッタス5勝

F1スペインGP予選で1-2体制を築いたメルセデスのルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタス
© Mercedes-Benz Grand Prix Ltd. / F1スペインGP予選で1-2体制を築いたハミルトンとボッタス

両タイトルをリードするのは5年連続のチャンピオンシップ制覇を目指すメルセデスAMG。予選成績はルイス・ハミルトンが勝率58%でバルテリ・ボッタスを下す結果となった。契約更新が1年と限定されたのが意外なほどに、両者の実力は拮抗している。

ハミルトンはベッテルを上回る5勝を挙げ213ポイントで首位を独走。対するボッタスは、ポールを獲得したオーストリアでオイルリークによるリタイヤ、ポール・リカール・サーキットでベッテルに激突されるなど、ツキの無さが影響した事もあり、132ポイントでチャンピオンシップ4位に留まっている。

予選成績勝者
ルイス・ハミルトン(7勝5敗)
決勝成績勝者
ルイス・ハミルトン(8勝3敗)

ボッタスの業績を鑑みれば2年の契約更新でも不思議はないところだが、1年に留まったのは「あわよくば、もっと良いドライバーが…」というチーム首脳陣の魂胆の現れなのだろうか。

2位フェラーリ: ベッテル10勝 vs ライコネン2勝

F1イギリスGP予選を終えて笑顔を見せるフェラーリのセバスチャン・ベッテルとキミ・ライコネン
© Ferrari S.p.A. / F1イギリスGP予選を終えて笑顔を見せるベッテルとライコネン

メルセデスに代わって最速マシンとの評価を確立したスクーデリア・フェラーリ。予選成績はセバスチャン・ベッテルが勝率83%でキミ・ライコネンに大勝した。

ベッテルは今季4勝を挙げ189ポイントを獲得。ドライバーチャンピオンシップ2位で前半戦を折り返した。対するライコネンは2位表彰台を2回獲得し146ポイントで選手権3位と、レースリザルトを見れば予選成績程の差はついていない。最年長ライコネンは仕事をきっちりこなしており、契約更新に足る働きを見せている。

予選成績勝者
セバスチャン・ベッテル(10勝2敗)
決勝成績勝者
セバスチャン・ベッテル(5勝4敗)

ライコネンは20名中唯一3戦連続でポディウムに立つなど安定的に上位完走を果たしているが、ベッテルはアゼルバイジャンやフランス、そしてドイツで些細なミスするなど、幾らか一貫性を欠いている。開発競争でメルセデスが追いついてくれば、ベッテルは後々、一連のミスを大きく悔やむ事になるだろう。

3位レッドブル: フェルスタッペン9勝 vs リカルド3勝

レッドブルのダニエル・リカルドとマックス・フェルスタッペン、2018年F1中国GPにて
© Getty Images / Red Bull Content Pool

ルノーエンジンの信頼性不足に足を引っ張られたレッドブル・レーシングは3位。予選成績はマックス・フェルスタッペンが勝率75%でダニエル・リカルドに快勝した。とは言え、リカルドはエンジン交換のためにドイツGP予選を途中で放棄、ハンガリーでは雨のために走行チャンスを失った。

フェルスタッペンはレッドブル・リンクでの優勝を果たし105ポイントを獲得。ドライバーチャンピオンシップ6位につけている。対するリカルドは中国とモナコで2勝を挙げ118ポイント。選手権争いではフェルスタッペンに勝ち越し5位につけている。

予選成績勝者
マックス・フェルスタッペン(9勝3敗)
決勝成績勝者
ダニエル・リカルド(4勝3敗)

来季ルノーへの移籍が発表されたため、切磋琢磨する二人を見られるのは今年が最後。チームは残りのシーズンでフェルスタッペン重視のオペレーションを取る事が予想される。リカルドがこのままチャンピオンシップをリードするのは簡単ではないだろう。

4位ルノー: ヒュルケンベルグ7勝 vs サインツ5勝

カタロニア・サーキットを歩くルノーF1のカルロス・サインツとニコ・ヒュルケンベルグ
© Renault

名実ともに第4のチームとしての名声を確立しつつあるルノー・スポール。予選成績はニコ・ヒュルケンベルグが勝率58%でカルロス・サインツを上回り、ミッドフィールド最速ドライバーの称号を手にした。

無冠のヒュルケンベルグは母国ドイツで5位入賞を果たすなど52ポイントを獲得。ドライバーチャンピオンシップ7位につけている。対するサインツは決勝ではチームメイトに太刀打ちできる速さを示せておらず、30ポイントで11位。大きく差をつけられた。

予選成績勝者
ニコ・ヒュルケンベルグ(7勝5敗)
決勝成績勝者
ニコ・ヒュルケンベルグ(6勝2敗)

今季限りでレンタル移籍の契約が切れるサインツは、キャリアの分岐点を迎える事になる。フェルスタッペンとの仲を考えれば、レッドブル首脳陣としても呼び戻し難いところがあるのは間違いなく、トロロッソ・ホンダのピエール・ガスリーはフル参戦1年目にして見事な活躍を見せている。

若きスペイン人に残された選択肢はあまり多くなく、マクラーレンからのオファーがあれば甘んじて受け入れるのが得策か。

5位ハース: マグヌッセン7勝 vs グロージャン3勝

スポンサーイベントに参加するハースのケビン・マグヌッセンとロマン・グロージャン
© Haas F1 Team

今シーズン最大のダークホースと目されていたハースF1は現在コンストラクター5位。予選成績はケビン・マグヌッセンが勝率70%でロマン・グロージャンに勝利した。

マグヌッセンは開幕オーストラリアでのホイール装着ミスによるリタイヤを除き完走を続けており、バーレーンとオーストリアで最高5位入賞。45ポイントを獲得し選手権8位につけている。一方のグロージャンはアゼルバイジャンとスペインで2戦連続のリタイヤを喫するなど精彩を欠く走りが響き、21ポイントで14位と低迷している。

予選成績勝者
ケビン・マグヌッセン(7勝3敗)
決勝成績勝者
ケビン・マグヌッセン(5勝3敗)

エンジン供給元のフェラーリはアントニオ・ジョビナッツィのデビューを目論んでおり、度重なるミスと過ちを繰り返すグロージャンの一貫性のなさは、今季限りでのシート喪失に繋がる可能性がある。

6位フォース・インディア: オコン9勝 vs ペレス3勝

ビーチサンダル姿でくつろぐフォース・インディアのセルジオ・ペレスとエステバン・オコン、2018年F1オーストラリアGPにて
© Force India

財政難のためにチーム存続の危機に晒されながらの参戦となったフォース・インディアは、前半戦を終えてコンストラクター6位。序盤こそ互角の勝負を繰り広げていたものの、予選成績はエステバン・オコンが勝率75%でセルジオ・ペレスに大勝している。

ところが、レース結果は一変。ペレスは第4戦バクーでの3位入賞を果たすなど、フランスGPを以外のレースで完走を続け計30ポイントを獲得し選手権10位。他方オコンは、母国レースを含む全3戦でリタイヤを喫し29ポイントで12位と逆転を許した。とは言え、3位入賞のポイントが大きい事もあり、勝敗数で言えばオコンがペレスを上回っている。

予選成績勝者
エステバン・オコン(9勝3敗)
決勝成績勝者
エステバン・オコン(7勝2敗)

ペレスはチームメンバーの職を守るべく、弁護士や、同じくチームへの債権を持つメルセデスやBWT等の協力を得ながら行政手続きを主導。コース外での思わぬトラブルに気をすり減らし、レースに集中する事のできない難しい期間を過ごしていた。

7位マクラーレン: アロンソ12勝 vs バンドーン0勝

笑顔で向き合うマクラーレンのフェルナンド・アロンソとストフェル・バンドーン、2018年F1スペインGP初日
© Mclaren

優勝争いを標榜してルノーとの新たな旅路を歩み始めたマクラーレンは、表彰台にすら上がれずコンストラクター7位。予選成績は、現役最強の誉れ高いフェルナンド・アロンソが圧巻の勝率100%でストフェル・バンドーンを完膚なきまでに打ち破っている。

レース結果においてもその傾向は変わらず、アロンソは開幕オーストラリアGPで今季最高5位を獲得。第5戦母国スペインまで連続入賞を続けるなどして44ポイントで9位。バンドーンは入賞3回にとどまり8ポイントの16位と大きく負け越している。

予選成績勝者
フェルナンド・アロンソ(12勝0敗)
決勝成績勝者
フェルナンド・アロンソ(6勝2敗)

アロンソは、バンドーンが自分に勝てないのはしょうが無い事だと述べ、11歳年下のベルギー人ドライバーを擁護。バンドーンは第10戦イギリス以降のレースで奇妙なマシントラブルに見舞われ、アロンソよりもダウンフォースの少ないクルマでの戦いを強いられていた。

8位トロロッソ・ホンダ: ガスリー7勝 vs ハートレー3勝

並んで歩くトロロッソ・ホンダのピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレー、2018年F1バーレーンGPにて
© Getty Images / Red Bull Content Pool

今季よりホンダのワークスステータスを手に入れたトロロッソは、28ポイントでコンストラクター8位。予選成績は、レッドブルへの昇格が期待されるピエール・ガスリーが勝率70%でブレンドン・ハートレーを下している。

レース結果においてもガスリー優勢の流れは変わらず、バーレーンで4位、前半最終ハンガリーで殊勲6位入賞を果たすなど、26ポイントで13位。ハートレーはガスリーよりも多くグリッド降格を受けるなど、不運な側面があった事は否定できないながらも、一貫してガスリーの後塵を拝す結果に。アゼルバイジャンとドイツの10位入賞止まりで2ポイントに留まり、ランキング19位に甘んじている。

予選成績勝者
ピエール・ガスリー(7勝3敗)
決勝成績勝者
ピエール・ガスリー(4勝2敗)

ダニエル・リカルドのルノー移籍によってガスリーが昇格筆頭候補に名乗りを上げている一方、ハートレーには度々交代の噂が浮上。ベルギーから始まる後半戦での挽回が求められる。

9位ザウバー: ルクレール9勝 vs エリクソン3勝

笑顔で話をするザウバーのシャルル・ルクレールとマーカス・エリクソン、2018年F1フランスGP
© Sauber Motorsport AG

アルファロメオの豊富な資金を手に入れシーズンに臨んだザウバーは、12戦で15ポイントを獲得しコンストラクター9位。予選チームメイトバトルは、大型新人シャルル・ルクレールが勝率75%で先輩格のマーカス・エリクソンを圧倒している。

決勝レースでもルクレールの力量はエリクソンを凌駕。アゼルバイジャンで今季最高6位フィニッシュを果たすなど、入賞5回で13ポイントを獲得し15位。エリクソンは最高9位で5ポイントのランキング17位となっている。

予選成績勝者
シャルル・ルクレール(9勝3敗)
決勝成績勝者
シャルル・ルクレール(5勝4敗)

F2を圧倒的な強さで制した後、最高峰の舞台に上がったルクレールは、序盤こそプレッシャーへの対処に戸惑うシーンも見られたが、トラック上で2冠フェルナンド・アロンソと同等にバトルするなど実力を発揮。既に、将来のF1ワールドチャンピオン候補に数えられる程、高い評価を受けている。

10位ウィリアムズ: シロトキン6勝 vs ストロール5勝

ウィリアムズF1のランス・ストロールとセルゲイ・シロトキン
© Glenn Dunbar/Williams

前半戦を終えて最下位に沈んだのはウィリアムズ。パディー・ロウの加入によって躍進に期待が高まったものの、入賞はアゼルバイジャンでランス・ストロールが得た8位のみ。予選対戦成績は、ロシアンマネーをもたらす新人セルゲイ・シロトキンが勝率54%を叩き出し、僅かの差で2年目ストロールを上回った。

レース結果ではシロトキンがノーポイントでランキング20位。ストロールは4ポイントで18位。意外にも(?)10チーム中、最も実力が拮抗しているのはこのウィリアムズとなった。

予選成績勝者
セルゲイ・シロトキン(6勝5敗)
決勝成績勝者
ランス・ストロール(5勝3敗)

実父ローレンスがフォース・インディアを買収した事で、ランスは早ければ夏明け初戦のベルギーからフォース・インディアに移籍する可能性あり。フォース・インディアは財政難から開放されるだろうが、その代わりにウィリアムズがチーム解体の危機に晒される恐れがある。

総括: 実力差が少ないのはウィリアムズ

以上、上半期のリザルトを振り返って明らかとなったのは、マクラーレンの二名が最も実力差が大きく、ウィリアムズの二人が最も能力差が少ないという事だ。仮にストロールが夏明け早々にフォース・インディアに合流した場合、ペレス相手に一体どれくらいの成績を残せるのかは興味深い。

無論、これだけで真にどちらが速いかを断定する事など出来はしないが、数字として振り返ることの意味は大きい。

予選と決勝の両方でチームメイトに打ち勝ったのはルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテル、ニコ・ヒュルケンベルグ、ケビン・マグヌッセン、エステバン・オコン、フェルナンド・アロンソ、ピエール・ガスリー、シャルル・ルクレールの8名という結果となった。

対チームメイト予選成績を勝率順に以下にまとめておく。前半戦を終えた現段階では以上のような結果となったが、フルシーズンを終えた時、果たしてどの様に変化するだろうか?後半戦の楽しみの一つとしたい。

Team Winner Rate
Mclaren フェルナンド・アロンソ 100%
Ferrari セバスチャン・ベッテル 83%
Red Bull マックス・フェルスタッペン 75%
Force India エステバン・オコン 75%
Sauber シャルル・ルクレール 75%
Haas ケビン・マグヌッセン 70%
Toro Rosso ピエール・ガスリー 70%
Mercedes ルイス・ハミルトン 58%
Renault ニコ・ヒュルケンベルグ 58%
Williams セルゲイ・シロトキン 54%