ルノーF1チームのモーターホーム
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ルノー、大規模リストラ策発表の一方で「F1参戦継続」を主張するが…

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フランスの大手自動車メーカー、ルノーは5月29日(金)、国内外約1万5000人の従業員削減や一部の工場の閉鎖の検討などを盛り込んだ大規模なコスト削減計画を発表。その一方で、多額のコストが発生するF1への参戦を継続する意向を強調した。

昨年、10年ぶりに赤字へと転落したルノーは、他のメーカーと同じように新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による需要低迷に見舞われ、収益の悪化に追い打ちがかかっている。こうした事情を背景にこの日、今後3年間でグループ計20億ユーロ(約2,390億円)を超える固定費の削減計画が発表された。

暫定最高経営責任者を務めるクロチルド・デルボスは、コスト削減策の発表を経て「兼ねてから公言してきたように、我々はF1に留まるつもりでいます」と述べ、参戦継続の表明ではないもののその意思を強調した。理由として、上限金額が更に引き下げられたバジェットキャップを含む2021年以降の新たな財務規定を挙げた。

F1は28日(木)のFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)において、予算上限額を更に引き下げる改定規約を批准した。2021年は1億4500万ドル、2022年は1億4000万ドル、そして2023~2025年は1億3500万ドルの制限が課せられる事となり、大規模資本を投じるメルセデス、フェラーリ、レッドブル・ホンダら3強チームと、ルノーを含めたその他チームとの競争力の格差是正が期待されている。

デルボス暫定CEOはF1への参戦継続を強調するが、プラン通りに物事が進むかどうかは不透明だ。15%を保有する筆頭株主のフランス政府は、財政支援と引き換えに国内の雇用及び製造の維持を求めているが、今回発表されたプロジェクトではフランス国内の約4,600人がリストラの対象とされ、更にはフラン及びディエップの工場の閉鎖のシナリオも見え隠れしている。

これらの削減策が実行に移せない場合、ルノーの経営陣は”他の手段での合理化推進”を迫られる恐れがある。デルボス暫定CEOの言質はコロナ危機の最中にあって大きな前進であり、撤退の不安を大いに和らげるものだが、正式表明までは気が抜けない。

F1でのルノーを巡る諸状況は、その先行きを不安視させるに十分だ。

2016年よりワークスチームとして復帰するもタイトル争いからは程遠く、今月頭にはリードドライバーのダニエル・リカルドがマクラーレンへの移籍を発表した。パワーユニット供給の唯一のカスタマーであるマクラーレンは、今季末で関係解消をし、ハイブリッド時代最強とみなされるメルセデスへと鞍替えする。