アルピーヌのリザーブを務めるオスカー・ピアストリとフェルナンド・アロンソ
Courtesy Of Alpine Racing

夏の騒動とは無縁だったピアストリとマクラーレンのF1契約、CRB審議裁定で一部詳細が明らかに

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FIAの独立機関、契約承認委員会(CRB)の発表から、オスカー・ピアストリとマクラーレン、アルピーヌの契約問題を巡る騒動の一部詳細が分かってきた。一件はフェルナンド・アロンソのアルピーヌ離脱を含むサマーブレイク中の騒ぎとは無関係だった。

CRBによる審議は2022年8月29日に行われ、アルピーヌ、マクラーレン、そしてピアストリの弁護士に対する聴取が行われた。その4日後、F1オランダGPのFP1を経て、ピアストリの2023年マクラーレン起用が発表された

CRBは国籍が異なる4名のメンバーで構成されており、これとは別に4名の代理メンバーがいるが、いずれも国際的な地位と経験を有する弁護士資格を持つ者でなければならない。

今回の審議を担当したのは、議長を務めたイアン・ハンター勅選弁護士、クラウス・ペーター・ベルガー法学教授、マシュー・ド・ボアソン弁護士、ステファノ・アザリ弁護士の4名だ。

無効と判断されたアルピーヌの契約

CRBは9月2日(金)の声明の中で、マクラーレンとピアストリとの2022年7月4日付けの契約が「唯一承認される」ものであるとの結論に「全会一致」で達したと説明し、「ピアストリは2023年及び2024年シーズンでマクラーレンのためにドライブする権利を有する」と付け加えた。

マクラーレンはピアストリとの契約について「複数年」としか発表していないが、CRBの声明によって2年契約である事が明らかになった。

審理の焦点はマクラーレンとの契約ではなくアルピーヌとの契約にあった。昨年11月に締結されたとされるこの契約が有効であれば、そもそもマクラーレンとの契約は意味をなさないからだ。

CRBはアルピーヌの契約について何も言及していない。だが、マクラーレンの契約が唯一認められるものであるとの説明から、オトマー・サフナウアー代表が「自信がある」と豪語していたアルピーヌの契約は、2023年のピアストリを縛るような法的効力を有していないと判断された事が分かる。

夏の移籍騒動とは無関係

次に注目すべきは「7月4日」という日付だ。これはシルバーストン・サーキットで開催されたF1イギリスGPの決勝翌日に該当する。週末を経てウォーキングの本拠地で契約書にサインを交わしたという事だろう。

当初ピアストリとマクラーレンとの契約は、7月30日(ハンガリーGP予選当日)の夜にまとまったとされていたが、実際にはそれより1ヶ月近くも前に締結されていた。

つまり、サマーブレイク中に世間の関心を集めたドライバーズマーケットの混乱とは無関係の動きであったわけだ。

ピアストリがマクラーレンへの移籍を決断したのは、セバスチャン・ベッテルの今季末限りでの現役引退に伴うアロンソのアストンマーチン移籍と何らかの関係があるのではとの噂があった。

また、ピアストリのマネージャーを務めるマーク・ウェバーが旧知の仲であった事から、アロンソがアルピーヌ離脱を前に何からの情報をピアストリ側に渡し、それがマクラーレン移籍の決定打になったとのではとの憶測もあった。

だが、これらは契約締結日が「7月4日」という事実から否定された。ベッテルのF1引退発表は「7月28日」に行われ、アロンソとアストンマーチンとの交渉はこれを受けて始まった。

結局のところピアストリ陣営はアロンソとアルピーヌとの契約延長を前提に、マクラーレンに別の道を求めたのだろう。

ピアストリ契約の1週間後に残留宣言したリカルド

マクラーレンがピアストリと契約を結んだ9日後、結果的にそのピアストリにシートを奪われる事となったダニエル・リカルドは、2023年末までの残留への意思を表明した。

「僕は来年末までマクラーレンにコミットしているし、このスポーツから去る意思もない」とリカルドがSNSに投稿した時、既にマクラーレンはアルピーヌのリザーブドライバーを確保していた。

CRBの裁定を経てリカルドは、Sky Sportsとのインタビューの中で「正直に言うと、(7月4日という)日付については初めて聞いた」と述べ、マクラーレンがイギリスGPの翌日に既に契約を済ませていたという事実は知らなかったと主張した。

ただその一方で、F1公式サイトによるとチーム代表のアドレアス・ザイドルは、後任ドライバーに関するリカルドとの対話は「常にオープン」で「透明性」あるものだったとしている。


いずれにせよ、如何にピアストリが「不誠実」だと非難しても、一件はアルピーヌ首脳陣のツメの甘さを露呈する結果となった。

複数年を望むアロンソへの提示年数を断固1年とし、ピアストリの契約に不備を許した事で、エンストンのチームは僅か1ヶ月の間に2度のF1ワールドチャンピオンと有望株筆頭の子飼いドライバーの2人を失う事になったのだ。