
パーマーが角田裕毅を”全面擁護”した理由 ― ベアマン憤慨の米スピン騒動を詳細分析、バトンの見解とは対照的
2025年F1第19戦アメリカGPで起きたオリバー・ベアマン(ハース)と角田裕毅(レッドブル)の接触未遂をめぐり、イギリス出身の元F1ドライバーでF1公式アナリストのジョリオン・パーマーが詳細な映像分析を行った。その結論は、すでに見解を示していた元世界王者ジェンソン・バトンとは正反対のものだった。
バトンが「ブレーキングゾーンで反応していた」と指摘し、「角田に非があった」との見解を示したのに対して、パーマーは「これはレーシング・インシデント。角田の動きは過剰ではなかった」とし、むしろベアマンの判断に問題があったと結論づけた。
ベアマンが角田を痛烈に批判したこの一件――なぜ専門家の見解は割れたのか。
ターン14に注目したパーマーの分析
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公式チャンネル『F1 TV』で角田裕毅(レッドブル)とオリバー・ベアマン(ハース)のターン15での一件について解説するアナリストのジョリオン・パーマー、2025年F1アメリカGP
パーマーが特に注目したのは、ターン15での動きそのものではなく、ターン15に向けた動きの起点だった。
「ベアマンはターン15で仕掛けにいこうとしたが、実際のところ、一件は角田がターン14のエイペックスに向けてわずかに切り込んだ動きから始まっていた。あれは次のコーナー(ターン15)を視野に入れた動きだった」
「ベアマンは後方から(ターン15へ)仕掛けにいったが、角田はターン15に向けた”セットアップ・コーナー”であるターン14への進入、この場面は真の意味でのバトルの場面ではなかったが、ここですでに(ターン15に向けた)ラインを閉じていた」
パーマーの分析では、ターン15での一件以前、つまりターン14の時点で角田は、ターン15でのベアマンのオーバーテイクをほぼ封じており、ベアマンにターン15で仕掛ける権利は残されていなかったという。
「僕の見立てでは、ベアマンがターン15で仕掛ける余地はほとんどなかったと思う。ユーキはうまく対応していたし、オリー(ベアマン)は自ら状況を難しくしてスピンしてしまった」と指摘した。
「少しばかり欲張りすぎた」ベアマンの判断を批判
パーマーはベアマンの心情に理解を示しつつも、判断ミスがあったと指摘した。
「ベアマンの気持ちは理解できる。ドライバーがブレーキング中に反応的な動きをするのは見たくないし、彼は角田がまさにそれをしたと感じたのだと思う」
「でも、あの状況では仕掛けられるだけの十分なスペースはなかった。このセクションで仕掛けようとするなら、前のドライバーがどのラインを取るかを先読みしなきゃならない。反応して動くのがかなり難しい場所だからだ」
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サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)のターン15に向けて角田裕毅(レッドブル)のイン側を狙うオリバー・ベアマン(ハース)、2025年10月19日(日) F1アメリカGP決勝レース
さらに具体的な分析を加える。
「角田は(ターン15での)ほんのわずかな動きで、もともとほとんど存在していなかったスペースを完全に消し去った。ベアマンはすでに仕掛けることを決めていて、並びかけることもできず、やや距離もありすぎた。結果として芝生を横切ってグリップを失い、スピンしてしまった。少しばかり欲張りすぎたと言えると思う」
パーマーの結論は明快だった。
「ドライバーがブレーキング中に動いたり、ふらついたりするのは望ましくないが、角田の動きは過剰ではなかったと思う。だから、これは”レーシング・インシデント”だ」
「原則」か「事実」か─対立した判断軸
バトンとパーマーの意見が対立した背景には、分析の密度だけでなく、そもそもの判断基準の違いがある。
バトンは「角田は100%間違いなくブレーキングゾーンで反応していた」と指摘し、そのうえで「ユーキに非があった」と評価した。これは、制動中の進路変更を認めないという原則を重視した見解だった。さらにこの発言はレース終了直後に行われたもので、詳細なリプレイ検証を行う時間はなかったと見られる。
一方のパーマーは、おそらくは後日、映像を徹底的に精査し、事実関係を重視した。角田の動きがターン14から始まっていた点に着目し、もともとオーバーテイクの余地はほとんどなく、ベアマンの仕掛けに無理があったと結論づけた。
Ollie goes for a spin! 😵💫
Bearman and Tsunoda get too close for comfort into Turn 15 👀#F1 #USGP pic.twitter.com/SObdG5gSKn
— Formula 1 (@F1) October 19, 2025
パーマーの指摘によれば、18歳のルーキー、ベアマンには今後に向けて学ぶべき課題がある。オーバーテイクの可能性を瞬時に見極め、無理なアタックを避ける判断力──それもまた、F1ドライバーに求められる資質だ。
FIAは今回の件について一切調査を行わず、公式に「問題なし」との判断を下している。