新たなF1勝者誕生なるか? フェラーリ対メルセデス、各陣営が狙う戦略と注目ポイント
F1シンガポールGPの舞台、マリーナベイ市街地コースは前戦モンツァとは対照的な特性を持つサーキットだが、それでもカルロス・サインツ(フェラーリ)は2戦連続のポールポジションを獲得した。
サインツは「うれしい驚きだよ」と認めた上で、「だって前回のハイダウンフォース・コースではペースが上がらず本当に苦戦したからね。その後、僕らはハイダウンフォースパッケージへの理解を深めるために頑張り、シンガポールに向けて懸命に取り組んできた。よくやったと思う」と付け加えた。
ラスト2回のプラクティスで最速を刻んだ事から、サインツのポールは”なるべくしてなった”とも思われるが、僚友シャルル・ルクレールが全19コーナーの内の17個目のターンでミスをしなければ、結果は異なるものになっていたかもしれない。
ルクレールは「ターン17で僅かにミスがあって大きく遅れてしまったけど、それを除けばラップには満足している。十分じゃなかったけどね」と語った。両者のギャップは僅か0.079秒に過ぎなかった。
トト・ウォルフ代表が「フェラーリのサーキット」と呼んだマリーナベイで跳馬に割って入ったのはジョージ・ラッセル(メルセデス)だった。渾身の走りは4月上旬のオーストラリアGP以来となるフロントロウをもたらした。サマーブレイク明けのラッセルは飛ぶ鳥を落とす勢いだ。過去3戦連続でトップ4グリッドを手にしている。
もちろん、レースでは何が起きるか分からないが、優勝争いはフェラーリ勢とラッセルの3者によって争われる事になりそうだ。
昨年大会のオーバーテイクは僅かに9回。DRSを使ったものを含めても11回に過ぎない。予選順位は大きな意味を持つ。レッドブルが優勝争いの蚊帳の外に置かれる可能性は高く、その分だけライバルチームの熱は上がる。
「僕らはハイダウンフォースで強い。今週末は勝利を手にする絶好のチャンスだ」と語るラッセルが目指すのは当然、優勝だ。今季はまだレッドブル以外のドライバーが表彰台の頂点に上がった事が一度もない。
ラッセルは「他のみんなに対して僕らはオフセット戦略を採った」と述べ、直近のライバルたちが持ち合わせていない2セットのミディアムタイヤを駆使してフェラーリに勝負を挑むと宣言した。
5番グリッドに着く僚友ルイス・ハミルトンは「ジョージには明日、素晴らしいスタートを切ってフェラーリの連中にプレッシャーをかけてほしいね。彼が勝ってくれたら最高だ」とエールを贈る。
メルセデスがイケイケであるのとは対照的に、金曜のロングランではタイヤのデグラデーションとペースの面でレッドブルやメルセデスはもとより、アストンマーチンよりも若干遅かったとするサインツは「どうなるのか全く分からない」と慎重な姿勢を崩さない。
確かに前戦イタリアGPでは序盤にトップを維持したものの、結局はデグラデーションによるペースダウンを強いられ逆転負けを喫したわけで、自らを優勝候補と呼べない事情は察して余りある。
サインツは「ここは今シーズンの他のコースに比べて追い抜きが難しいからトップをキープできる可能性は否定しないけど、レースペースは依然として僕らの弱点なように思う」と語った。
とは言え、数の優位は見過ごせない。1-3グリッドを確保したフェラーリに対してメルセデスは2-5だ。フェラーリは2台のクルマを使った戦略を採る事ができる上に、両ドライバーは優勝のためであればチームオーダーを受け入れるとしている。
堅実なサインツはまた、「ここでの追い抜きが難しいのは確かだけど、マックスとレッドブルを割り引くことはできないと思う。いつものようなレースペースを見せるかもしれないからね」と述べ、たとえ間に9台が並んでいる状況であっても、レッドブルを過小評価すべきではないと強調した。
シンガポールはこれまで何度か、セーフティーカーによる中断やインシデントがレース結果を大きく左右してきた。また、今回は一時的にコースレイアウトが変更されているため、未知数の要因がある。一貫して支配的なレースペースを見せつけてきたレッドブルだけに、不測の事態が生じれば連勝記録を維持する可能性はゼロではない。
予測不能の62周のレースを制するのはサインツか、ルクレールか、ラッセルか、それとも予想だにしない他のドライバーか。決勝は日本時間9月17日(日)21時にフォーメーションラップが開始される。レースの模様はDAZNとフジテレビNEXTで生配信・生中継される。