マグヌッセンの赤旗事故の原因は熱? 「完全に壊れた!」の無線直後に奇妙な大クラッシュ
2023年のF1第20戦メキシコGPで発生したケビン・マグヌッセン(ハース)のクラッシュは実に奇妙なものだった。高速の右コーナー、ターン8の縁石に乗り上げた直後、ステアリングが右に向けられたVF-23は突如、進路を左に変えた。
クルマはハーフスピンを喫して右フロントからバリアに激突。大量のデブリが飛散し、左リアからは炎が上がった。幸いにもマグヌッセンは自力でクルマから降り、自らの足でメディカルカーに乗り込んだ。
事故はマグヌッセンが無線で「左リアが今、完全に壊れた!」とチームに伝えた直後に発生した。エンジニアがこれに応えて「了解」と口にすると、無線にはクラッシュの衝撃音が響き渡った。
クラッシュの原因についてチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーは「サスペンションが故障した。原因を探る必要があるが、どうも熱に関係しているようだ。確認する必要がある」と説明した。
タイヤなのか、ブレーキなのか、シュタイナーの言う「熱」が何に関するものなのかはハッキリしないが、マグヌッセンはタイヤのオーバーヒートに言及した。
「左のリアサスペンションが壊れた後にクラッシュしたんだ。場所が悪く、壁にぶつかってしまい、手を打って少し痛みがあるけど、まあ大丈夫だ」とマグヌッセンは語る。
「何が起きたのか、もう少し詳しく調査する必要があるけど、突然のことだった」
「それまでは順調だったんだけど、長い間、トラフィックにひっかかってタイヤが焼けちゃってね。これがサスペンションに何かの影響を及ぼしたのかどうかは分からないけど」
ミディアムタイヤを履いて16番グリッドからスタートしたマグヌッセンは、オープニングラップで3つポジションを上げ、幸先いいスタートを切った。だが、自らのコントロールの及ばない理由によって、ハードタイヤでの第2スティント10周目にレースを終えた。
F1出走200戦目の記念レースに臨んだチームメイトのニコ・ヒュルケンベルグは皮肉にも、マグヌッセンのクラッシュによって出された赤旗に足を引っ張られる事となった。
ミディアムを履いて12番手からスタートしたヒュルケンベルグはオープニングラップで8番手に浮上。1ストッパーを狙って23周目にハードタイヤに履き替えた。赤旗の原因となった僚友の事故はその10周後のことだった。
「何にしても(赤旗後の)37周のロングスティントはキツいわけだけど、タイヤは既にタレていたし、僕らがミディアムで走り切るのは不可能だった。1ストップ戦略を決め込んでハードタイヤは既に使ってしまっていたから手持ちはなかったしね」とヒュルケンベルグは振り返る。
「赤旗のタイミングは理想的じゃなかった。僕のレースに悪影響を及ぼした。でもケビンが無事で良かった。それが何よりだよ」
9番手でリスタートを迎えたヒュルケンベルグにとって、残りのレースの楽しみはライバルを如何に困らせるかという点にあったようだ。
ヒュルケンベルグは「何とかしがみついて他の連中を困らせてやったよ。長いこと僕のリアウィングを見なきゃならず、苛立っていたことだろうね! おかげでちょっと楽しめたよ」と悪い笑顔を浮かべた。
2023年F1第20戦メキシコGP決勝レースでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が3番グリッドからの逆転勝利を飾った。
インテルラゴス・サーキットを舞台とする次戦サンパウロGPは11月3日のフリー走行1で幕を開ける。