
F1渋滞時代の現実解…ビクター・マルタンス、ウィリアムズ開発に就任しWECへ転向
ウィリアムズF1チームは2026年1月12日、ビクター・マルタンスを2026年のテスト兼開発ドライバーに起用すると発表した。また併せて、マルタンスがアルピーヌからFIA世界耐久選手権(WEC)のハイパーカー・クラスに参戦することも明らかにされた。
これは、F1というシングルシーターの頂点を目指してきた若き才能が、F1レギュラーシートという極めて狭き門を前に、プロのレーシングドライバーとして新たな活路を切り開こうとする象徴的な動きと言える。
「F1の渋滞」が生む耐久転向
近年、F1直下のカテゴリーであるFIA-F2選手権でトップクラスの成績を収めながらもF1昇格を果たせず、耐久レースへと転向する流れは、一つの定石となりつつある。
前身のGP2を含め、2015年以降にF2でランキング5位以内に入った41名のうち、現在F1に参戦しているのはわずか11名にとどまる。一方で、12名が耐久レースの世界へと活動の場を移した。2025年のル・マン24時間レースのエントリーリストには、30名以上のF2/GP2経験者が名を連ねている。
マルタンスもまた2023年に、現在ハースF1で目覚ましい活躍を見せるオリバー・ベアマンを抑えてF2のルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝くなど、その“一発の速さ”はパドックでも高く評価されてきた。だが、3シーズンにわたるF2参戦で、予選の速さを安定したレースペースへと昇華させるには至らず、F1のレギュラーシート獲得は叶わなかった。
ウィリアムズを支える開発の中枢
ウィリアムズF1チーム内で、マルタンスは「開発のスペシャリスト」としての立場を確立しつつある。ウィリアムズのスポーティング・ディレクターを務めるスヴェン・スミーツは、その貢献を高く評価する。
「彼は昨年、チームに計り知れない助言とフィードバックをもたらしてくれた。バルセロナでのFP1走行や旧型車(TPC)テストの経験を通じ、FW48、そして将来のマシン開発に実質的な影響を与えるための現場感覚をすでに備えている」
マルタンスは、2026年型F1マシン「FW48」の開発や、最先端のドライバー・イン・ザ・ループ(DIL)シミュレーターの改良において、オリバー・ターベイらと共に「開発の要」を担うことになる。
「オール・フレンチ」のアルピーヌでル・マンへ
一方、WECではアルピーヌのハイパーカー・プログラムに加わる。インディカーへ転向したミック・シューマッハらの後任として、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタと並び、フランスを代表するマニュファクチャラーの期待を背負う。
アルピーヌは現時点で詳細を明かしていないが、マルタンスは36号車「A424」にて、フレデリック・マコヴィッキィ、ジュール・グーノンとトリオを組む見通しだ。「オール・フランス布陣」でル・マン24時間レースに挑む可能性が高い。
WEC参戦についてマルタンスは、「僕のキャリアにおける重大な一歩」と位置づけ、「ル・マンという伝説の舞台で戦えることは大きなモチベーションになる」と語った。
F1界隈にとどまり、リザーブとして機会を待つだけではなく、24歳のマルタンスはWECというF1と同じ世界選手権で、マニュファクチャラーの中核ドライバーを目指す決断を下した。この二重のキャリアは、現代におけるF2出身トップドライバーの新たなキャリアモデルとなる可能性を秘めている。