ルマン24制覇のトヨタ8号車、平川亮を称賛…小林可夢偉、トラブルに悔しさにじませるも僚友を祝福
フランスはル・マンのサルト・サーキットでFIA世界耐久選手権(WEC)第3戦として開催された第90回ル・マン24時間レースで、セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮の3名が駆るTOYOTA GAZOO Racing(TGR)の8号車GR010 HYBRIDが優勝を飾った。
トヨタとしては2018年の初優勝から数えて5連覇の偉業を達成すると共に、昨年の勝者である小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ・マリア・ロペス駆る7号車が2分1秒222遅れの2位でフィニッシュし、ル・マンで4度目の1-2フィニッシュを果たす事となった。
順位 | ドライバー | チーム | 周回 | トップとの差 |
1 | #8 TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID |
セバスチャン・ブエミ ブレンドン・ハートレー 平川亮 |
380 | |
2 | #7 TOYOTA GAZOO Racing/ トヨタ GR010 HYBRID |
マイク・コンウェイ 小林可夢偉 ホセ・マリア・ロペス |
380 | 2:01.222 |
3 | #709 グリッケンハウス・レーシング/ グリッケンハウス 007 LMH |
ライアン・ブリスコー リチャード・ウェストブルック フランク・マイルー |
375 | 5 Laps |
4 | #708 グリッケンハウス・レーシング/ グリッケンハウス 007 LMH |
オリビエ・プラ ロマン・デュマ ルイス・フェリペ・デラーニ |
370 | 10 Laps |
5 | #38 JOTA/ Oreca 07-Gibson |
ロベルト・ゴンザレス アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ ウィル・スティーブンス |
369 | 11 Laps |
ブエミはル・マン通算優勝記録を4回へと伸ばし、スイス人ドライバーとしての最多勝記録を更新。ハートレーも自身3度目の勝利で最多勝ニュージーランド人ドライバーとなった。平川亮は通算3度目、トヨタドライバーとして挑んだ初のル・マンで見事、総合優勝を勝ち取り、表彰台中央に上った5人目の日本人ドライバーとなった。
今年のル・マンはレース全体を通して好天に恵まれ、一時、部分的なスローゾーンがあったものの、セーフティカー導入は僅か1回と、波乱の少ないクリーンなレースとなった。
トヨタ勢は互いに首位を争うレースを256周目まで続けていたものの、首位を走行していたロペス駆る7号車がフロントモーター関連の電装系トラブルに見舞われた。一旦、コース脇にマシンを停めた後、システムの再起動で走行を再開。ピットインを経てコースに復帰するも、8号車に対して約1周分の差がついた。
コンウェイは「ル・マンにはあまり好かれていないのかもしれないね。毎回、何かが起きてしまう。昨年は勝てたけど、それまで何度もここで厳しい思いをしてきた」と回顧した。
車両性能が拮抗した2台においてこの差はあまりに大きく、ロペスは最終30分でファステストラップを叩き出す走りで追い上げたものの届かず、ポールラップを刻んだハートレー駆る8号車が計5,177kmのレースで栄光のトップチェッカーを受けた。
「ル・マンで最終ドライバーを担当してトップチェッカーを受けたのは初めてだったから、フィニッシュラインを越えた時は感無量だったよ」とハートレー。
「特にトヨタにとって、ル・マンは最後の最後まで何が起こるか分からないし、レース中は結果については考えないようにしていたんだ。だからチェッカーを受けた時はあらゆる感情があふれ出して、本当に信じられない気分だった」
チーム代表兼ドライバーの小林可夢偉は、トラブルの発生に悔しさをにじませながらも、僚友3名の勝利を祝った。
「8号車で優勝を果たしたセバスチャン、ブレンドン、亮の3人を祝福したいと思います」と小林可夢偉。
「残念ながら7号車は朝方、トラブルに見舞われリードを失ってしまいました。8号車とはそれまでずっと僅差の良いバトルを繰り広げていただけにトラブルは本当に残念ですが、24時間レースでは時にこういう事も起こります」
「とはいえ、無事にレースに復帰して2台揃って同一周回の1-2でフィニッシュできたことはチームによる素晴らしい努力のおかげです。週末を通して本当に頑張ってくれたマイクとホセ、そして、7号車のクルーにも感謝します」
初優勝の平川亮は、まだその実感が湧いていないという。
「伝説のドライバーが並ぶ、ル・マンウィナーのメンバーリストに名を連ねることができて光栄に思いますが、正直なところ、まだ夢が叶ったという実感がありません」
「チームに加わって以来、たくさん助けてくれたセバスチャンとブレンドンには本当に感謝していますし、彼らと同じチームでドライブでき光栄でした」
「僕ら8号車は戦略もピットワークも完璧でしたし、一切トラブルも起こらないレースでした。これ以上のものは望めないと思います」
ハートレーは新加入のチームメイトについて「亮は本当に良いドライバーだ。彼が初優勝を果たせたことも嬉しい。みんなが彼のことを大好きだし、彼は既にチームの強力な一員さ」と語った。
またブエミは「本当に素晴らしい走りだった。その功績を称えたい」と平川亮のドライブを称賛した。
ダブルポイントのル・マンを経てトヨタは、マニュファクチャラーズランキングで2位のアルピーヌに22ポイント差をつける首位に浮上した。ドライバーズポイントでは8号車の3人が首位アルピーヌ36号車に3ポイント差の2位と大きく躍進。7号車の面々は首位と20ポイント差の4位につけた。
チームはル・マン5連覇の喜びもつかの間、7月10日(日)に行われるシリーズ第4戦、イタリア・モンツァでの6時間レースに向けて準備を進める。