ぶっつけ本番で見事な予選を披露したディ・レスタ「正直怖かった、決勝レースは未知数過ぎる」
練習なしのぶっつけ本番でF1ハンガリーGP予選に挑んだポール・ディ・レスタは、「正直怖かったし、ナーバスになってたし、気がかりだった」とその心境を語った。
7月29日土曜の予選直前、ディ・レスタは体調不良によってマシンを降りたフェリペ・マッサの代役として急遽ウィリアムズに招集された。グランプリ11回の優勝経験を持つブラジリアンは、めまいと熱の症状を訴え、ベルギーGPでの復帰を優先しレースを辞退した。
練習なしの1発勝負をモノにしたディ・レスタ
ディ・レスタにとっては2013年ブラジルGP以来となるF1マシンのドライブ、小柄なマッサ用のシートに座った185cmの長身ディ・レスタは、ザウバーのマーカス・エリクソンを抑え19番手を獲得した。チームメイトのランス・ストロールに対してコンマ7秒まで迫る見事な走りだった。
「正直に言うと、怖かったし神経質になってたし、心配だったよ」予選を終えたディ・レスタはこう打ち明けた。
「2014年に10周程走った事を除けば、3年半もF1マシンを運転してなかったんだからね。それが突然予選に招集されるんだから…谷底に突き落とされて生き残りをかけた戦いを強いられてるみたいだったよ」
イギリスはスコットランド出身のディ・レスタは、2011年から13年までの間をフォース・インディアF1で戦った後、14年からはかつてレースをしていたDTM(ドイツツーリングカー選手権)に復帰していた。16年にウィリアムズのリザーブドライバーに就任したものの、実戦の機会はこれまで1度もなかった。
チーム首脳陣「ディ・レスタは今日のベストドライバー」
マッサからの辞退の申し入れに対して、クレア・ウィリアムズとパディー・ロウら首脳陣はディ・レスタを代役をして起用することを決断、英Skyスポーツの解説でハンガロリンクに帯同していたディ・レスタは、FP3の終盤にエンジニアリング・ルームに呼び出された。まさか突然レースに出るとは思ってもいなかったディ・レスタは、呼び出し間際の午前11時にテレビでのプレゼンテーションを準備していたという。
テクニカル・ディレクターのパディー・ロウは「彼は我々が決定を下した瞬間に準備が整っていました。使ったこともない新しいタイヤとエアロパッケージを備えた2017年F1マシンとともに、いきなり競争的なセッションに放り込まれたわけです。非常に勇敢だったと言わざるを得ません。彼は私の中での”ドライバー・オブ・ザ・デイ”です」とコメントし高く評価した。
素早く学習も、全開には程遠い、とディ・レスタ
突然の起用にも関わらず、ディ・レスタは未知のマシンを素早く学び速さを見せつけた。スピードトラップではストロールのそれを上回ってすらいた。
「かなり早い段階でマシンを快適に感じたんだ」とディ・レスタ。「ピットリミッターを解除して、少しずつ自分の気持を高めていったんだ。1週ごとにコンマ5秒ずつタイムを改善していったよ。ポテンシャルはもっとあったね」
「チームは1時間半という限られた時間で最善を尽くしてくれた。高速コーナーやコーナーの出口ではかなり慎重にドライブしたよ。リアタイヤを(限界まで)使うなんてことはなかったんだ。そこそこリズムが掴めてきたけど、ブレーキングは早すぎたし、コーナリング速度は僕にとってきつかったから、十分とは言えないものだった」
「スロットル・ストロークでさえDTMより遥かに長いんだからね…リアをスピンさせずに全開で攻めるにはどの程度スロットルを開けたら良いのかなんて掴めてないんだ」
決勝レースは未知数
予選では素晴らしいドライビングテクニックと勇敢さを見せつけたディ・レスタだが、決勝レースは全くの別物だと語り慎重な姿勢を崩さない。
「レースは予選とは全然違うからね…タイヤの事は全然分からないし、燃料を積んだ状態で走ったこともないんだ。1コーナーへの飛び込みもそうだし、ピットストップだって未知の世界なんだ。予選セッションの終わりにピットには入ったけど、明日のレースでは16人ものメンバーがマシンの周りを囲むわけだしね」
「もちろん順位を上げていきたいし、自分ができることをやりたいと思うけど、暑い中で70周のレースをこなせるんだけの体力があるのかどうかも気にしなきゃならないよ」
日曜日はディ・レスタにとって59回目のグランプリスタートとなる。2011年のハンガリーGPでは、フォース・インディアのマシンで11番グリッドからスタートし、自己最高位となる7位入賞を果たしている。
第11戦ハンガリーGPの予選の詳細については、2017年F1ハンガリーGP《予選》結果とダイジェストを参照されたい。