ホーナー、RBを含むレッドブルの”2チーム所有批判”に反撃…ブラウンの主張を受け
レッドブルGmbHが2つのF1チームを所有する状況により公平な競争環境が損なわれている等としてマクラーレンのザク・ブラウンCEOが批判を繰り返している事を受け、レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表が反論した。
レッドブルがF1世界選手権に2つのチームを送り込んでいる状態は今になって始まったことではない。姉妹チームが後方争いに留まっている限り、ライバルが不満の声を上げる事はなかった。だが、この状況に変化が生まれつつある。
共同創業者のディートリッヒ・マテシッツの死去を経て、レッドブルGmbHの企業プロジェクト・新規投資部門CEOに就任したオリバー・ミンツラフは、伊ファエンツァのチームにコスト削減と成績の向上を求めた。
実現のためにはシニアチームとのシナジー効果を最大化する必要がある。空力部門と一部のデザイン部門が置かれていた旧アルファタウリの英ビスターの拠点は、レッドブルがファクトリーを構えるミルトンキーンズに移転される事となり、車体に関しても規定で許される最大限のパーツをレッドブル・テクノロジーから購入する運びとなった。
アルファタウリは昨年のシンガポールGPで最新バージョンのレッドブル製リア・サスペンションを手に入れると一気に競争力を引き上げ、「ビザ・キャッシュアップRB」としての再出発を切ったバーレーンでのテスト初日には、パドックはおろかレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコをも驚かせる走りを披露した。
ブラウンは昨年12月、突如としてレッドブルの2チーム体制に対する批判を口にした。曰くF1は「そのブランドに忠実であるべきであり、パワーユニットを除くすべてのチームは互いに完全に独立しているべきである」と言う。ブラウンはバーレーンテストでもこの主張を繰り返した。
なぜ今になって声高に主張するのか?
英「The Race」によるとマクラーレンのCEOはF1プレシーズンテストの2日目にこの問いに答え、今のF1は「予算上限の時代」に突入しており「競技、政治、技術的観点」からグリッドに着く全てのF1チームはお互いに独立した状態でなければならないと訴えた。
問題の原因がレッドブルGmbHにあるとは主張しなかった。レッドブルは「ルールをしっかりと守っている」としてブラウンは、現行レギュレーションに問題があると指摘し、統括団体の国際自動車連盟(FIA)に対処を求めた。
予算上限ルールはチームに対して公平な競争条件をもたらす事を目的に導入された。また例えばギアボックスのように、一部のパーツに関して他チームからの購入が規定で認められている背景には、長期的存続というチームにとっての持続可能なビジネスモデルの追求と、フィールドにおける競争力格差の是正に対する期待がある。
しかしながらブラウンによると現行ルールは全てのチームにとって平等とは言えず、”A/Bチーム”の存在によって公平な競争環境が損なわれているという。
ブラウンはまた、批判の根拠の一つとして「他のスポーツでは互いに競い合う2つのチームの共同所有権を認めていない」としたが、ホーナーはクラブチームによるサッカーの世界的な大会、チャンピオンズリーグにレッドブルが所有するRBライプツィヒとRBザルツブルクの2チームが参加した例を挙げて反論すると共に、レッドブルがF1で2つのチームを所有するに至った経緯をブラウンに説いた。
F1の当時のCEOであるバーニー・エクレストンとマックス・モズレー元FIA会長から、財政的苦境に立たされていたミナルディを買収するよう持ちかけられたマテシッツは2005年、ファエンツァの施設を含めて買収・投資した。
そしてBMWやトヨタ、ホンダが相次いでF1から撤退する契機となった2007年から2008年にかけての世界的金融危機、ならびに新型コロナウイルス感染症の世界的大流行に際しても、チームを見捨てることなくF1にコミットし続けた。
また、カスタマーカーの禁止に伴い、車体の自社製造が強いられた2010年に際しても莫大な資金を投じてチームを存続させた。
ホーナーはマテシッツのF1に対する貢献を挙げて「F1と2つのチームに対してレッドブルが行ってきた取り組みは傑出したものであって、嘲笑されたり損なわれたりされるべきものではなく、称賛され感謝されるべきものだ」と主張した。
さらに、レッドブルとRBは2つの異なる国に拠点を置く「完全に別のチーム」であり、両チームの間には何の取り決めもなく「継続的にレギュレーションを遵守している」として、その関係は「エンジンメーカーと非常に緊密な関係を築いている幾つかのチームより緊密ではない」とも主張した。