アストン提携のホンダF1第5期、レッドブル時代との幾つかの違い

ホンダが2021年のF1でレッドブル及びアルファタウリに供給したパワーユニット「RA621H」のプレナムチャンバーCourtesy Of Honda Motor Co., Ltd

カーボンニュートラルへの経営資源の集中を理由に2021年末を以てF1での正式な活動に終止符を打ったホンダはアストンマーチンのワークス・パートナーとして2026年にF1に復帰する。しかしながら状況や環境という点でそれは、レッドブル・ワークス時代とは幾つかの点で違いがある。

2021年以前の活動では供給先のレッドブルからの財政的貢献はなく、ホンダは開発を含めたF1プロジェクトの費用を自己負担していたが、アストンとの間では幾らかの報酬が支払われるようだ。これは技術供与という名目で”隠れ参戦”している現在のレッドブルとの関係に近い。

Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンAMR23をドライブするフェルナンド・アロンソ、2023年7月28日F1ベルギーGP

HRC(株式会社ホンダ・レーシング)を運営母体として、長期的かつ「継続的」な参戦を視野にパワーユニット(PU)の開発・製造に取り組むとするホンダにとって、F1プロジェクトにおける支出削減は極めて重要だ。

ホンダがレッドブルへの供給を開始した当時、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは既に、ホンダがF1に留まるためにはコスト削減が「非常に重要」だと指摘していた。

PUに関するコストキャップ規定の導入(2026年は1億3,000万ドル)に加えてアストンから財政支援を得る事でホンダは、以前のように莫大な資金を湯水の如く費やさずにF1に参戦する事が可能となる。

首脳陣の顔ぶれも異なる。F1プロジェクトを率いていた山本雅史氏はホンダを退社。開発の指揮を採っていた浅木泰昭氏も定年退職した。

欧州での拠点にも変化がある。撤退に際してホンダは英国ミルトンキーンズのファクトリー、HRD UKを引き払った。2026年に向けてはシルバーストンに位置するアストンのファクトリーを間借りする事が一つの選択肢と考えられるが、どのような決断が下されるのかは分からない。

HRD UKで行われていたES(バッテリー)の開発に関しては、PU全体における電動比率が引き上げられた新たなレギュレーションを受け、栃木県さくら市の新生「HRC Sakura」でICE(内燃エンジン)本体と合わせて包括的に開発が進められる見通しだ。

Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

ホンダが2021年のF1でレッドブル及びアルファタウリに供給したパワーユニット「RA621H」全体像

自前の風洞は2024年後半の稼働となる見込みだが、ホンダの新たな欧州拠点が設けられる可能性のある新設のAMRテクノロジーキャンパスでアストンは既に、2008年以来となるギアボックスの内製化に向けてダイナモを稼働させている。

各社で性能の違いが殆どないにも関わらず高コストであるとしてアストンが望んでいたギアボックスの標準コンポーネント化は、幾つかのチームの反対もあり見通しが経っておらず、アストンは新たな人材を雇用し外部企業の協力を得ながら、ホンダPUに合わせたギアボックスの開発をスタートさせた。

Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

英国シルバーストンに位置するアストンマーチンF1チームのファクトリー「AMRテクノロジーキャンパス」の外観

Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

英国シルバーストンに位置するアストンマーチンF1チームのファクトリー「AMRテクノロジーキャンパス」内部

総出力における電動パワーの比率が現行の約2割から5割へと引き上げられる次世代PUの導入まで残り26ヶ月を切った。PU開発とアストンとの連携はこれまでのところ、かなり順調なようだ

アストンのエンジニアリング・ディレクターを務めるルーカ・フルバットはチームの公式サイトの中で、2026年仕様のエンジン開発は「急速に進展」しており、意見交換の場においてホンダは「信じられないほどの前向きな反応」を示していると明かした。

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