ホンダ、全社”総動員”でF1エンジン開発を加速「性能と信頼性が大幅に向上」
ホンダの山本雅史モータースポーツ部長は2018年シーズンのF1世界選手権を振り返り、年間を通してパワーユニット(PU)の性能と信頼性を大幅に向上させる事が出来たと強調。その理由のひとつに、F1以外のスタッフをも招集し、本田技術研究所の力を総動員した事を挙げた。
ホンダは3年間に渡るマクラーレンとの悲惨なシーズンを過去のものにすべく、今季よりイタリア・ファエンツァにファクトリーを構えるスクーデリア・トロロッソにパワーユニット一式を供給。新たな旅をスタートさせた。
© Getty Images / Red Bull Content Pool、山本部長とフランツ・トスト代表
「先日行われたHonda Racing THANKS DAYをもって、2018年のトラック上でのF1活動をすべて終了しました」と山本部長。自社サイトでシーズンを振り返った。「今年はScuderia Toro Rossoとのパートナーシップを開始し、Hondaとしてあらたな一歩を踏み出したシーズンでしたが、全体としてはポジティブで、確かな手応えを感じる一年になりました」
「パワーユニットに関しては、HRD Sakuraやミルトンキーンズ、それにHonda内で他のレースプロジェクトやプロダクトに関わるエンジニア、メカニックが一丸となって懸命の努力を続けた結果、信頼性・パフォーマンスともに開幕時と比較して大きく向上させることができました」
ホンダはF1や二輪競技、市販車以外にも数多くの分野で事業を営んでおり、昨日20日には航空機事業を手がける子会社のホンダ・エアクラフト・カンパニーが、東京都内で小型ビジネスジェット機「HondaJet」の日本向け1号機を納入。昨年以降のホンダF1エンジンには、ジェットエンジン開発で培われたノウハウや知見が活かされている。
ジェットエンジンは、氷点下から数千℃という広範囲に渡る温度領域にさらされながらも、絶対に壊れる事なく機能する必要がある。一歩間違えれば大惨事になりかねず、機体には極めて高い耐久性・信頼性が要求される。それ故に、時にF1以上にシビアな精度と技術が問われる。
© Honda、HondaJet Elite
「スクーデリア・トロロッソや2人のドライバーからも多くのサポートをもらいました」と山本部長。「開発面での貢献は言うまでもありませんが、彼らの常にオープンで前向きな姿勢、明るい雰囲気は、苦境にあったホンダのメンバーが再び顔を上げ、歩みを進めるための大きな助けになりました」
「互いをリスペクトし、密接かつ率直なコミュニケーションを取れる関係ができていますし、バーレーンやハンガリー、そして鈴鹿の予選などでも結果を残すことができました。彼らと一緒でなければ、今年の前進はなかったと考えています」
開幕前はエンジンの信頼性不足をやり玉に、トロロッソの先行きを危ぶむ声が飛び交っていた。だがチーム結成2戦目のバーレーンGPで4位入賞の快挙を達成。立役者にしてフル参戦一年目のルーキーであるピエール・ガスリーは「僕らはホンダの仕事を称賛しなきゃならない」と言い放ち、ホンダバッシングを繰り返していたフェルナンド・アロンソを暗に批判。逆風を鎮めた。
© Getty Images / Red Bull Content Pool、F1バーレーンGPで4位入賞し、胴上げされるピエール・ガスリー
WEC世界耐久選手権のダブルチャンピオンとしてトロロッソに加わったブレンドン・ハートレーは、ハイブリッドカーでの豊富な経験を元にして、ホンダのパワーユニットに対し的確なフィードバックを与えた。それらのコメントは予選やレースに向けたセッティング面のみならず、エンジン開発を前進させた。
来シーズンは強豪レッドブル・レーシングとの提携も決まっており、ホンダは復帰5年目にしてようやく優勝争いに加わる事になる。とは言え、依然としてメルセデスやフェラーリとのパフォーマンス差は大きく、信頼性の面でも大きく水をあけられている。山本は”絶対に失敗出来ない一年”と気を引き締める。
「パフォーマンス面でトップと差があることは明らかですし、信頼性の部分でもまだ改善の余地があると思っています。来季は供給チーム数が増え、失敗が許されないシーズンとなりますし、2月のプレシーズンテストに向けて、現在も各ファクトリーで懸命に開発を続けている状況です」
「今後もToro Rosso、それに来年から新たにパートナーとなる Red Bull Racingと手を取り合いながら、さらなる高みを目指して戦いを続けていきます」