混戦に期待…ホンダ、2021年型パワーユニット「RA621H」は昨年型メルセデスを凌駕
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ホンダは、低重心・コンパクト化された2021年仕様の新型F1パワーユニット「RA621H」のパフォーマンスに関して、少なくとも昨年のチャンピオンシップを制したメルセデス製PUを凌駕する水準に達したと考えている。
ホンダは今季末の撤退を前に、これまで培われてきた全ての知見と全社の総力を結集して、大幅進化を遂げた新スペックを投入した。中でもICE(内燃エンジン)に関しては設計の根幹に関わるボアピッチを短く変更し、バルブ開閉を司るカムシャフトの位置を下げるなど、レイアウトを完全に一新した。要は文字通りの「新型」だ。
先日行われたバーレーンテストでは、レッドブル・ホンダRB16Bを駆るマックス・フェルスタッペンが3日間を通しての全体ベストタイムを記録。更に2番手には同じホンダ製PUを搭載するアルファタウリの角田裕毅が続いた。
チームごとにタイム計測時の諸条件が異なるため、タイムシートはチーム間序列を表すものでも、ホンダ「RA621H」の性能の高さを保証するものでもない。しかしながら、こうした状況を”有望な兆候”として受け止める事を能天気と断ずる事はできない。
ホンダは「RA621H」に関して、少なくとも昨年王者のパフォーマンスを上回る改善を果たしたと考えている。
ホンダF1の現場統括責任者を務める田辺豊治テクニカル・ディレクターはThe Raceとのインタビューの中で、コンディションによりけりだとしながらも「昨年のメルセデスを超えたと思います」と認めた。
また信頼性という観点でも「良い兆候」が確認され「問題の発生は予想していたよりも少なかった」とも語った。テストでは最も強力なエンジンモードを稼働させ、問題がないかを確認する作業も行われたようだが、その結果は「満足」のいくものだったという。
「RA621H」のパフォーマンスゲインはHRD Sakuraによる開発のほか、チームの燃料及びオイルパートナーであるエクソンモービルとの共同開発によって生まれた「シナジー・レース・フューエル」と銘打たれた新燃料によっても上乗せされる。この最新燃料はパワーやパフォーマンスだけでなく、エンジン保護性能の向上を目的に開発された。
バーレーンテストでのレッドブル・ホンダ「RB16B」の仕上がり具合、リアが安定せずドライバー達をヤキモキさせるメルセデス「W12」など、シーズンの開幕を前に両者による激しいチャンピオンシップへの期待が高まっているのは確かだが、相手はV6ハイブリッド時代を支配する絶対王者メルセデスだ。ダブルタイトル8連覇を目標に掲げながら、あぐらをかいているはずもない。
メルセデスは最新PU「F1 M12 E Performance」に関して「パワーユニットの変更はシャシー側ほど革新的ではない」としながらも「技術開発という点で今年も一歩前進できた」とし、更には「レース用PUに初めて搭載される全く新しい技術もある」と明かしている。
今季「RA621H」が昨年のメルセデス「M11」を凌ぐ水準に達したとしても、それは必ずしも今季型「M12」よりも優れているという事を意味するわけではない。
無論、ホンダ側も楽観視していない。
田辺豊治テクニカル・ディレクターは「技術、シャシー、PU、ドライバー、チームワークという点でメルセデスが如何に手強いかはよく知っている」として「3日間のテストを終えて何かを言うのは時期尚早」と語り慎重な姿勢を崩さない。
ただその一方で「メルセデスとチャンピオンを懸けて争える状況になる事を願っています」とも述べ、混戦への期待をにじませた。
最終的に重要なのはホンダ「RA621H」が今季メルセデス「M12」を上回る事ではなく、レッドブル製のシャシーを含めたパッケージ全体がディフェンディング・チャンピオンのルイス・ハミルトン擁するメルセデスを超えるパフォーマンスを発揮し、年間を通してペナルティを受ける事のない信頼性を以て選手権を制覇できるかどうかにある。
両者のパフォーマンスギャップは逆転したのか、どれだけ縮小したのか、あるいは広がったのか。全てはバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催される3月26-28日の開幕バーレーンGPで明らかになる。