「残酷なまでに正直」なヘルムート・マルコ、元レッドブルJr.が語る名門プログラムの鬼教官
若い才能の発掘・育成という点で他の追随を許さないレッドブル・ジュニア・チームの所属ドライバーは、「残酷なまでに正直」なヘルムート・マルコの大きな期待とプレッシャーに晒され研鑽を重ねていく。
2001年に設立されたレッドブル・ジュニア・チームは、将来性あふれる若き才能を見つけ出し、レースへの出場機会、トレーニング、技術的なサポートの提供を通してF1に導く事を目的としている。
セバスチャン・ベッテルやマックス・フェルスタッペンといったF1ワールドチャンピオンを筆頭に、ダニエル・リカルドやピエール・ガスリーなど数多くの成功したトップドライバーを輩出してきたこのプログラムを率いる人物こそが、レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるマルコだ。
レッドブルのジュニアプログラムは若手ドライバーに高いパフォーマンス基準を設定する。結果が伴わない場合、容赦なく契約を切られる事もしばしばで、ドライバーの選抜や育成においてマルコは、その厳しい評価基準と歯に衣着せぬ物言いで知られている。
4年に渡ってレッドブルから支援を受け、このほどジュニア・チームを離れたF2ドライバーのジャック・クロフォードはマルコについて、米「Racer」とのインタビューの中で「時に残酷なまでに正直だ。でも適切な表現だと思う。場合によってはえげつないほどで、不公平に感じられる事もある」と語った。
とは言え、それはマルコが残忍であるという事を意味するわけではなく、オブラートに包まず要点を抑えて率直に話をする彼のスタイルによるところが大きい。クロフォードは「でもそんなに悪いことじゃないんだ。僕にとってそれはすごく端的で、本当に的を得ていた」と述べ、マルコを「誠実」とも表現した。
厳しさの裏にあるのは期待の大きさだ。クロフォードは「一番大変なのは、間違いなく自分にかけられるプレッシャーと期待だと思う」「彼はドライバーに大きな信頼を寄せているけど、同時に期待も大きい」と振り返る。
「F2のパドックにいない場合、チームやドライバーのパフォーマンスについて判断するのが難しいこともあるから、それが彼のモノの見方に影響することもあるけど、間違いなく一番嫌なのは、悪い週末を過ごした時にヘルムートから”会いに来い”って電話がかかってくることなんだ」
「彼はすごく忙しいから、結局は彼を待つことになるんだけど、座って待っていると歩いて近づいてきて、すごく低い声で『それで…』って言った後に『何があったんだ?』って聞いてくるんだ!」
「彼の会話はすごく短くて、本当に単刀直入なんだ」
クロフォードはF3への昇格が時期尚早だったと考えており、もう1年、下のカテゴリーで腕を磨けばより良いキャリアを歩めたと感じているが、それでもレッドブル・ジュニアとしての4年間はメディア活動を含めて「本当に楽しかった」と言う。
「(レッドブルの本拠がある英国ミルトンキーンズの)ファクトリーの近くに住んでいたんだけど、すごくリラックスした環境だった。厳しい規則があるわけじゃなく、いつもシミュレーターやジムでトレーニングしていた。あそこでの生活は本当に楽しかった」とクロフォードは語る。
「良い学びの機会もたくさんあった。2022年の半ばにギヨーム・ロケリンがジュニアチームの責任者になって以来、プログラムに大きな変化があったように思う」
「それまでよりも多くのことを学び、あらゆることについて今まで以上にフィードバックを受けることができたし、レースイベントの前の準備も充実した。より教育的になったんだ。だから、そういう面でも本当に楽しかった」
ジュニアチームを解雇されたクロフォードはアストンマーチンのドライバー開発プログラムへの加入が噂されている。