”V8確定”、ターボ廃止へ。FIA会長が「630kg/880馬力」のF1次世代PU構想を公表、アウディとの溝鮮明に

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国際自動車連盟(FIA)のモハメド・ベン・スレイエム会長が、次世代のF1パワーユニット(PU)におけるV8エンジンへの回帰は「決定済み」であると明言した。併せて、ターボチャージャーを廃止する意向も公にした。

この発言は、新たなPU規則を巡り、エネルギー効率の観点からターボの継続を求めていたアウディの主張と相容れないものとなっている。

「V8は確定だ」ターボ廃止の880馬力構想

ベン・スレイエムは第94回ル・マン24時間レースの現場を訪れた際、フランスの専門誌『AUTOhebdo』などに対し、「V8は確定だ。決定は下された」と述べた。

さらに、構想されているPUの詳細についても明らかにした。

ハイブリッド比率を10%程度に抑えたV8エンジンと持続可能燃料を組み合わせ、ベース仕様で760馬力、ハイブリッド込みで約880馬力の出力を想定しているという。

この構想のなかでもっとも注目されるのが、ターボの廃止だ。ベン・スレイエムは「ターボはなしだ。重量とコストが増えるだけだ」と指摘し、不採用の意向を明確にした。

ターボ継続を主張するアウディ

ターボを廃止するという方針は、新規参入を果たしたばかりのアウディが描く技術的ビジョンと真っ向から衝突している。

アウディの最高経営責任者(CEO)を務めるゲルノート・デルナーはモナコにおいて、ベン・スレイエムが推すV8回帰案について「V8エンジンに問題はない」と語る一方、自然吸気エンジンへの移行には否定的な姿勢を明確にした。

アウディが最も重視するのは、エンジン形式ではない。デルナーは、F1規則の中心にはエネルギー効率が置かれるべきだとし、その観点では自然吸気よりターボの方が重要だと主張している。

「アウディの観点からすれば、それは気筒数の話より明らかに重要だ」とデルナーは語った。「効率の面から、我々はターボを好む。それは気筒数より重要だ」

次期PU規則で狙うコスト半減と軽量化

ベン・スレイエムは、V8回帰を目指す理由としてコストを挙げる。レッドブル・レーシングは現行エンジンに「13億ドル以上[約2,082億円]を投資している」としたうえで、これを「ばかげた額」と断じた。

また、「新世代F1マシンの重量は630〜650kgを目標にしている。博物館にある昔のマシンと現在のマシンを見比べてほしい。安全性の名の下に50kgも増えてしまった」とも述べ、大幅な軽量化を実現させる意向を示した。

「重いマシンはドライバーにとって良くないし、必ずしも安全性向上にもつながらない」

「我々の使命はシンプルさ、コスト管理、そして観客にとってのサウンドの質だ」

さらに、簡素なハイブリッドV8を採用することで、「エンジンコストを現在の約150万ユーロから約70万ユーロへと半減させる」方針を示した。

ベン・スレイエムの言う「エンジンコスト」が、1基あたりのPU価格を指しているのか、ICE単体の価格を示しているのかは不明だ。現行規則では、1シーズンあたりの供給上限価格が設定されており、サポート費用などを含めて最大2,075万〜2,200万ユーロという値が定められている。

2030年前倒し導入の可能性や如何に

現行のV6ハイブリッドは、2026年時点でICE(内燃エンジン)と電動エネルギーの出力比率がほぼ半々となっている。

これに代わる次世代PU規則のエンジン形式として議論されてきたのが、かつて2006年から2013年にかけて使用されていたV8だ。

次世代規則の導入は2031年に予定されているが、6つのPUメーカーのうち4社の賛成を取り付けることができれば、2030年からの前倒し導入も可能となる。

ベン・スレイエムはV8回帰が「確定」したとしているが、これがアウディの賛同を意味するのかどうかは、現時点では明らかではない。というのも、デルナーの発言は、ターボの継続を前提とするのであればV8回帰を受け入れる余地があると受け取れるようにみえるためだ。

V8という形式そのものについては、全てのメーカーに受け入れの余地があるとみられる。だが、2030年への前倒し導入やターボの存廃、さらには電動化レベルを巡っては各社の立場に温度差があるのが現状だ。そのため、ベン・スレイエムが現時点で示している構想が、そのままの形で実現するかどうかは不透明と言わざるを得ない。