2,998cc DOHC 40バルブ ドライサンプ 75度V型10気筒、730馬力を発するフェラーリの1997年型F1エンジン (3)
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F1、将来的にV8以前の官能エンジンに回帰?持続可能燃料の開発で軽量化を目指すとドメニカリCEO

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将来のF1パワーユニット(PU)についてF1のステファノ・ドメニカリCEOは、持続可能燃料の研究・生産を通して成果を上げる事ができれば、ハイブリッドシステムを切り捨て、V8あるいはV10自然吸気のような官能的なサウンドを発するかつてのエンジンに切り替える事も可能だと考えているようだ。

MGU-Hを搭載した現行PUは2025年末を以て姿を消すものの、F1は2026年以降もハイブリッドエンジンを継続する。ただし燃料は100%持続可能なカーボンニュートラル燃料に切り替えられる。

2014年から2018年までのメルセデス製F1パワーユニットCourtesy Of Daimler AG

2014年から2018年までのメルセデス製F1パワーユニット

現行F1マシンが抱える問題点について、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)を筆頭にF1ドライバー達が真っ先に非難するのは車両重量だ。

595kgに過ぎなかった2008年と比較してマシンは過去15年間で200kgも増加しており、近年のF1マシンは肥満化の一途を辿っている。特に顕著な増加があったのはV6ハイブリッド・ターボが導入された2014年だった。

その後も高価な軽量素材の禁止、安全強化、タイヤの大型化などを背景に、グランドエフェクトカー導入の2022年には800kgの大台が見えるに至った。

F1首脳陣もこの課題を認識している。英「Autosport」とのインタビューの中でF1の最高経営責任者は「持続可能燃料の研究と生産で効果を上げる事ができれば、軽量性に焦点を当てた次世代のパワーユニットを検討できるだろう」と語った。

「我々は馬力があり、素晴らしいサウンドを備えた競争力のあるエンジンを望んでいる。99.9%の人が、あのF1サウンドをもう一度聞きたいと思っている。我々はこの点に関して検討している」

マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製3リッターV10エンジン「FO 110Q」全景Courtesy Of Stephan Bauer ©2020 Courtesy of RM Sotheby

マクラーレンの2004年型F1マシン「MP4-19」に搭載されていたメルセデス・ベンツ製3リッターV10エンジン「FO 110Q」

ドメニカリは電動化の道を歩む市販車市場に触れて「現在は過渡期にあり、大手メーカーは販売ポートフォリオの一部としてハイブリッド技術や電動技術の開発を進める必要がある」とする一方、「我々が持続可能燃料の面で素晴らしい仕事ができれば、数年の間に重量を抑えたシンプルなエンジンを採用できると私は信じている」とも述べた。

「我々はF1が適切な価格で持続可能燃料を供給できる時代の到来を加速させることができると信じている。これは商用車や航空機、そして世界で流通している約15億台の車を含む広義の意味でのモビリティにとって大きな手助けとなるだろう」

「これはF1にとって非常に重要なチャレンジであると同時に、すべてのチームのビジョンをまとめるのにも役立つと確信している」

世界的な電動化の流れに際してF1には、理論的にはフォーミュラEのようなBEVレースカーとしての道を歩む選択肢もあったが、選んだのはハイブリッドに持続可能燃料を組み合わせるアプローチだった。

「フォーミュラ1として我々は、開発の面で何を加速させる事ができるかを自問しなければならない」とドメニカリは強調する。

「持続可能燃料に関する認識と市場は変わりつつある。我々がこの道を進むという決断を下した事は非常に良い選択だったと思う」

「我々は完全な電気自動車に対する技術戦争を望んでいない。なぜならそれは独自のマーケットを持つ技術だからだ」