フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、2023年10月7日F1カタールGPスプリントにて
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

撤退…引退とレッドブル移籍、アロンソとアストンマーチンを巡る噂の信憑性とホーナーの「意向」

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メキシコGPを経て2度のF1ワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)がセルジオ・ペレスの後任としてレッドブルに移籍する、あるいは引退すると言った噂が一部で熱を帯びた。

ダニエル・リカルドが予選でWチャンピオンマシンを駆るペレスを上回る速さを見せ、決勝でアルファタウリにとっての今季ベストリザルトを持ち帰った事で、2024年のレッドブルのF1シートに関する憶測が再燃したが、オンライン上で話題となったのは42歳のレジェンドだった。

アロンソの母国スペイン出身のジャーナリスト、アルベルト・ファブレガが「今、パドックで噂を聞いた。信じたくない」とX(旧Twitter)につぶやき、レッドブル・スペインが意味深な顔文字「🤫」を投稿し、少数株の売却を受けローレンス・ストロールがアストンマーチンの株を売り払ってF1から身を引くのではとの憶測が盛り上がり、今季末限りでのアロンソの引退説が瞬く間に広まった。

今年、アルピーヌからアストンマーチンへと電撃移籍したアロンソは、開幕8戦で6回の表彰台を獲得してマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に次ぐランキング2位を射程に捉えていたが、シーズンが進むに連れAMR23の競争力は低下。アメリカとメキシコは2戦連続のリタイヤに終わった。

42歳のレジェンドの引退説についてF1レポーターのクレイグ・スレイターは英「Sky Sports」のポッドキャストの中で「アストンマーチンがアロンソと共に続けたいという欲求は依然としてかなり強い。続ける可能性が可能性が最も高いと思う」と否定的な見解を示した。

「ネット上ではローレンス・ストロールが売り払って辞めるのではとの見方が人気だが、私はそういう見込みがあるとも理解していない」

スレイターに意見を求められた人気ユーチューバーのトモは「そこに何某かの真実があるかもしれないとみんなが思う理由は、ランス(ストロール)がフェルナンドほどのパフォーマンスを発揮できていないからだと思う。だからみんな、夢中になったんだ」と語った。

「彼らは(アストンマーチンの)株が売り飛ばされているのを目にして、その額が2,500万ポンド(約45億円)だと思ったわけだけど、実際にはポンドじゃなくてペニーで、250万ポンド(約4.5億円)に過ぎなかった。話が盛られて広まった典型的なケースだった」

「ローレンス・ストロールは新しい巨大な施設をシルバーストンに建設するために大金を費やした。2025年にはWECにも参戦する。ランスが少し苦戦しているからといって、ローレンスが売却することはないだろう」

ファブレガは例のつぶやきについて、ドライバーの移籍や引退に関するものではないと補足した。

アロンソの引退説は根も葉もない噂であったが、当然に起こり得そうにないとは言え、移籍に関しては根拠がないというわけではなかった。

レッドブルへの移籍についてはスレイターは、自身が得ている情報を統合すると「そんな事は起こり得ない。そうはならないだろう」として、アロンソはレッドブルにとって「来年のオプションとしてはリカルド以上の存在ではない」と全面的に否定的な見解を示した。

スレイターによると、アロンソのマネジメント陣は現在、デューデリジェンスを行っており、2024年に向けてより良いオプションがあるかどうかについて評価している。スレイターは、これに尾ひれが付いて噂の火種になったのだろうとの見解を示し、「確かな筋から聞いた話だ。その可能性はない」と移籍説を一蹴した。

ただ、ペレスが来季もレッドブルでドライブするかについては確信を持っていない。

既報の通り、母国メキシコGPの1周目のターン1でリスクを取り、シャルル・ルクレール(フェラーリ)と接触してリタイヤしたペレスについてレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、ランキング3位以下に終われば今季限りでシートを失うといった「要件」は存在しないと繰り返し、2024年も共に仕事をするのが「我々の意向」だと主張した。

「要件」がない事は必ずしも今季限りでの解雇を否定するものではなく、2024年の続投はあくまでも「意向」に過ぎない。ゆえにホーナーの意味深な発言は注目を集めた。

スレイターは「クリスチャン・ホーナーは”意図”という言葉を使った。彼との合意を履行するためにチェコをキープするのが自分たちの意図だとね」と語る。

「サッチャー夫人(英国初の女性首相)は、2回目の党首選挙の候補名簿に自分たちの名前を載せるのが私たちの意図だと言った翌日に辞任した。1990年の事だが、あれは注意深く選ばれたフレーズだった」

アルファタウリは来年、シナジー効果を最大限に活かし、シニアチームからレッドブルのセミワークス的存在へと脱皮する事を企てている。リカルドはこの新しいプロジェクトのリーダーに選ばれた。

スレイターは「彼らは本当にそれをひっくり返して来年、彼をマックスと共に自分たちのクルマに乗せたいと思っているのだろうか? おそらくそうではない。だが、ドアは半開きだと思う」と語った。