ルマン24 土壇場の性能調整「場外の戦いがアスリートとしての戦いを邪魔」したとトヨタ会長

サルト・サーキットのグリッドに並ぶTOYOTA GAZOO Racing GR010 HYBRID、2023年6月9日FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レースCourtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION

80秒及ばず2位に終わった第91回ル・マン24時間レースを経てモリゾウこと豊田章男会長は、「場外の戦い」がスポーツ、レースの価値を損ねたとの考えを示し「本当に悔やまれる」と語った。

ル・マンを含むFIA世界耐久選手権(WEC)開幕4戦では、LMHとLMDhという2つのプラットフォーム間の性能調整(BoP)変更はないと理解されていたものの、国際自動車連盟(FIA)とフランス西部自動車クラブ(ACO)はレース10日前という土壇場でこれを発表。驚きを以て受け止められた。

ハイパーカー 最低重量(kg)
変動
最大出力(MJ)
変動
トヨタGR010 Hybrid 1080
+37
908
+4
フェラーリ499P 1064
+24
901
+2
キャデラックV-Series.R 1046
+11
904
+1
ポルシェ963 1048
+3
910
+0
プジョー9X8 1042
+0
908
+0
ヴァンウォール・ヴァンダーヴェル 680 1030
+0
901
+0
グリッケンハウス007 1030
+0
913
+0

これによりトヨタは、6連覇を目指す今年のル・マンで他のどのマシンよりも重い37kgものハンデを背負うことになった。この足枷による影響は1周辺り1.2秒と推計された。

豊田会長は声明を通して「今年のル・マン24時間レースは”場外の戦い”が、みんなのアスリートとしての戦いを邪魔していました。このことが本当に悔やまれて、残念で、申し訳ない気持ちです」とレースを振り返った。

Courtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION

2位表彰台に上がったTOYOTA GAZOO Racing号車の平川亮、ブレンドン・ハートレー、セバスチャン・ブエミ、そしてチーム代表の小林可夢偉、2023年6月11日FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レース

「場外の戦い」が何を指すのかは明らかにされていないが、直前の性能調整である事は疑いない。決勝レース前日、自社メディア「トヨタイムズ」とのインタビューの中で豊田会長は「そこまでして他のチームを勝たせたいのか?」と述べ、BoPに対する不満を口にした。

「我々がやっているのは『アスリートが戦うスポーツ』。それこそがモーター“スポーツ”。決して、メーカー同士の意地をむき出しにしたモーター“ポリティクス”ではない!と言いたい」

「私はドライバー、エンジニア、メカニックに、これからの100年を見据える場でレースをしてもらいたかった。予選を見ていて『ポリティクスに負けた』と思った」

Courtesy Of FIA WEC

トヨタの豊田章男会長、2023年6月9日FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レースのプレスカンファレンス

予選ではフェラーリAFコルセが最前列を独占。トヨタは8号車が3番手、7号車が5番手と、2016年以来、ル・マンでの最前列を逃す事となった。

8号車のセバスチャン・ブエミが「フェラーリは僕らより速かった」と振り返ったように、フェラーリ499Pは1ラップペースだけでなくレースペースでもトヨタを上回った。

それでもトヨタは、不運な事故により早々にレースを終える事になった小林可夢偉ら7号車のドライバー達を含め、一丸となって最後まで全力でレースを戦い、81秒793遅れの2位でフィニッシュした。

Courtesy Of Ferrari S.p.A.

TOYOTA GAZOO RacingをリードするフェラーリAFコルセ51号車、2023年6月10日FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レース

豊田会長は「しかし、そんな中でチームのみんなは正々堂々と戦ってくれました。2位完走の結果は本当に素晴らしいです」とチームの健闘を称えた。

「みんな、ありがとう。この準優勝をみんなで自慢しましょう!チームモリゾウ全員で戦った証として胸を張りましょう!」

また、佐藤恒治社長は「どんな状況であっても、諦めずに努力を積み重ねて挑戦した結果だから、チーム全員を私は誇りに思います。全員がヒーローでした」「今年のル・マンは、次の100年をどのように迎えるべきなのかを私たちに教えてくれました」と振り返り、「たくさんの応援をありがとうございました。私たちは、これからも闘い続けます」と付け加えた。

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