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計3度のセーフティーカー、赤旗による30分間のセッション中断、計7台のマシンがチェッカーフラッグを受けることなくリタイヤした17年F1アゼルバイジャンGP。表彰台の期待されたドライバー達が次々と脱落するなど、荒れに荒れた25日(日)の決勝、生き残ったのは僅か13台というサバイバルレースを制したのは、レッドブルのダニエル・リカルドであった。リカルドは、2回目となるバクー市街地コースで今季初優勝を手にした。
2位には、一時周回遅れにされていたメルセデスのバルテリ・ボッタスが続いた。3位には、ペイドライバーと揶揄され続けたウィリアムズのランス・ストロールが、ルーキーシーズンとしては最年少表彰台を獲得。ウィリアムズのエンジニアを務めるロブ・スメドレーは「素晴らしい走りだった。とても18歳とは思えないドライブだったよ。おめでとう。良くやった坊や!」と祝福した。
©F1
タイトル争いで先頭を走るフェラーリのセバスチャン・ベッテルは、ハミルトンへの追突によりペナルティを受け4位、ベッテルを追うポールスタートのハミルトンは不運に見舞われ5位という結果に終わった。エンジントラブルをはじめとして、苦戦続きのシーズンを過ごしていたマクラーレン・ホンダは、フェルナンド・アロンソが9位フィニッシュを果たし、今季初ポイントをチームに献上した。
©F1
オープニングラップでの事故乱舞
グロージャン、エリクソン、バンドーンの3名がソフトタイヤでのスタート選択。オープニングラップの1コーナー、エスケープゾーンからコース上に戻ってきたダニール・クビアトを避けようとしてカルロス・サインツがスピン。「ダニーが狂ったように戻ってきた!」と憤った。
2コーナーへの進入でイン側の縁石に乗り上げすぎたバルテリ・ボッタスが、アウト側を走行していたキミ・ライコネンに接触、フロントウイングを破損し緊急ピットイン、ソフトタイヤに履き替え最後列に戻る。激怒したライコネンは「あの****野郎!何度当ててきたら気が済むんだ!!」と同郷の後輩をなじる。
©F1 壁に叩きつけられたライコネン
この間にトップのハミルトンはぐんぐん隊列を引き離し、5周目の時点で2番手ベッテルに3秒の差をつけた。
優勝候補フェルスタッペン今季4度目のリタイヤ
8周目には、FP3でマシン炎上の災難に見舞われたジョリオン・パーマーが、ブレーキその他諸々に問題を抱えてレースを終えた。ルノーの1台がリタイヤした直後の11周目、マシンから煙を挙げたダニール・クビアトが12コーナーの出口でマシンを降り、同じ周にはマックス・フェルスタッペンが「マジかよ!トラブル、トラブル!」と無線で叫ぶ。
アップデートが投入されたルノーのパワーユニットが煙を上げレッドブルRB13は無残にも失速。このタイミングでコース上にはセーフティーカーが出動。初日最速のフェルスタッペンは今シーズン4度目のリタイヤとなった。
©F1 手を上げ怒りを露わにするフェルスタッペン
立て続けのセーフティーカー
17周目、リスタートしたその周に再びセーフティーカーが出動、ボッタスとの接触によってバージボードにダメージを負っていたライコネンのマシンからパーツが外れ、ホームストレート上に落ちたのが理由。デブリ除去のために、各車はセーフティーカー先導のもとピットレーンを走行。この時点で最後列19番手スタートとなったフェルナンド・アロンソ11番手に、ストフェル・バンドーンは13番手にまでポジションを上げた。
ドラマはまだまだ終わらない。リスタート直前の19周目、先頭を走るハミルトンが減速した事で2番手ベッテルがハミルトンのリアに追突、フロントウイングを壊したベッテルはハミルトンに横付けして猛抗議。このアクションは当然審議の対象となり、ベッテルには10秒のストップ・アンド・ゴーが科せられたが、レース後スチュワードはベッテルに更なる罰則を与えることを決定、ベッテルにはペナルティポイント3が科せられた。
20周目、3度目のリスタート直後の2コーナーでフォース・インディアが同士討ちし両マシンは大破、コース上に飛んだデブリによってライコネンのマシンは走行不能に。3度目のセーフティーカーがコースに入る。
©F1 ハミルトンに追突したベッテル
©F1 同士討ちするフォース・インディア
赤旗中断と驚異のリカバリ
8番手にまで追い上げたアロンソ「これはレッドフラッグ案件だと思うよ…至る所にデブリが散乱してるし、このサーキットは凄い速いんだから…」と無線で赤旗を要求。2度のワールドチャンピオンの意見に耳を貸したのか、スチュワードは赤旗提示を決断。23周目にレースは一時中断された。
©F1
この中断をチャンスに変えるべく、フォース・インディアとフェラーリのガレージは大破したマシンを全力修復、ペレスとオコン、そしてライコネンは隊列の最後尾に回った。フロアまで破損していたライコネンまでが復帰するとは誰も思っていなかったであろう。スタンドからは大歓声が上がった。
この復活劇には当のライコネンも予想していなかったようで「ステアリング!早く早く!!ステアリングだよ…誰がステアリングを持ってくるように言ってくれ!」と慌てふためく一幕も。
赤旗の時点でのトップ10は、ハミルトン、ベッテル、マッサ、ストロール、リカルド、ヒュルケンベルグ、マグヌッセン、アロンソ、サインツ、グロージャンの順。
優勝候補2人のポジションダウン
4度目のリスタート、ドラマはまだまだ終わらない。3番手走行で表彰台が見えていたフェリペ・マッサにトラブル発生、リア・ダンパーの故障によって激しいバイブレーションが発生していた。ヒュルケンベルグは8コーナーで右フロントタイヤを破損し、ルノー勢は全滅。
©ScuderiaFerrari ペナルティを消化するベッテル
30周目、トップを走るハミルトンにもアクシデントが。ホームストレート走行時に負圧によってヘッドレストが外れそうになるという珍事が発生。保安上の理由からピットインを余儀なくされ、8番手に下がる。と同時に、2番手走行中のベッテルも10秒ペナルティの消化のために7番手に。上位2名が後方に下がったことで、レッドブルのリカルドが今季初のラップリーダーに。
ファイナルラップまで終わらないドラマ
リーダーのリカルドが大量のギャップをつけて逃げる中、注目はウィリアムズのルーキー、ランス・ストロールが2位表彰台を獲得できるかどうかに集まった。ストロールを追い上げるのは、1周目のクラッシュで最後尾に落ちていたバルテリ・ボッタス。3番手にまで挽回していたボッタスは、1周あたり1秒以上の勢いでストロールを追い詰め、ファイナルラップの最終20コーナーでDRSゾーンに入った。DRSが使えたのは僅か500mほどであったが、ゴールラインの手前のギリギリの位置でストロールをオーバーテイク、見事な逆転劇を決めてみせ、2位表彰台を獲得した。
2017年F1第8戦アゼルバイジャンGP決勝リザルト
Pos | No | Driver | Team | Laps | Time | Pts |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | リカルド | レッドブル | 51 | 2:03:55.573 | 25 |
2 | 77 | ボッタス | メルセデス | 51 | +3.904 | 18 |
3 | 18 | ストロール | ウィリアムズ | 51 | +4.009 | 15 |
4 | 5 | ベッテル | フェラーリ | 51 | +5.976 | 12 |
5 | 44 | ハミルトン | メルセデス | 51 | +6.188 | 10 |
6 | 31 | オコン | フォースインディア | 51 | +30.298 | 8 |
7 | 20 | マグヌッセン | ハース | 51 | +41.753 | 6 |
8 | 55 | サインツ | トロロッソ | 51 | +49.400 | 4 |
9 | 14 | アロンソ | マクラーレン | 51 | +59.551 | 2 |
10 | 94 | ウェーレイン | ザウバー | 51 | +89.093 | 1 |
11 | 9 | エリクソン | ザウバー | 51 | +91.794 | 0 |
12 | 2 | バンドーン | マクラーレン | 51 | +92.160 | 0 |
13 | 8 | グロージャン | ハース | 50 | +1 lap | 0 |
14 | 7 | ライコネン | フェラーリ | 46 | DNF | 0 |
NC | 11 | ペレス | フォースインディア | 39 | DNF | 0 |
NC | 19 | マッサ | ウィリアムズ | 25 | DNF | 0 |
NC | 27 | ヒュルケンベルグ | ルノー | 24 | DNF | 0 |
NC | 33 | フェルスタッペン | レッドブル | 12 | DNF | 0 |
NC | 26 | クビアト | トロロッソ | 9 | DNF | 0 |
NC | 30 | パーマー | ルノー | 7 | DNF | 0 |
コンディション
天気 | 晴れ |
---|---|
気温 | 27℃ |
路面温度 | 51℃ |
周回数 | 51 |
セッション概要
グランプリ名 | F1アゼルバイジャンGP |
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レース種別 | 決勝 |
レース開始日時 |
サーキット
名称 | バクー市街地コース |
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設立 | 2016年 |
全長 | 6003m |
コーナー数 | 20 |
周回方向 | 時計回り |