角田裕毅、キミ・ライコネン、ルイス・ハミルトン、マックス・フェルスタッペン
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合格ラインはある? 角田裕毅のF1デビューを前に現役ドライバー達のルーキーイヤー成績を振り返る

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”2年目”以降のチャンスに繋がる「合格ライン」のような目安はあるのだろうか?アルファタウリ・ホンダでの角田裕毅のF1デビューを前に、2021年のグリッドに並ぶ現役ドライバー達のルーキーイヤー成績を振り返ってみる。

プレシーズンテストの前後で角田裕毅の今季及び開幕戦に向けた目標が変わる事はなかった。曰く「最初から全てを出し切ってガンガン攻める」との事。

無論ポイントを目指して戦うものの、レース経験がないためどうなるかは「想像できない」とする角田裕毅は、シーズン序盤から中盤に関しては「恐れず自身のパフォーマンスを出し切り」、ミスや課題があればシーズン中盤以降にかけて「まとめ上げ」て改善していくという。

これまでに計767名のレーシングドライバーがF1に参戦し、その半数近くは10戦足らずでシリーズを後にしていった。F1での2年目以降の契約をもぎ取ってきたドライバー達は、そのデビューイヤーにどういった成績を残してきたのだろうか。

以下、今シーズンの新人である角田裕毅、ミック・シューマッハ、ニキータ・マゼピンを除く17名の現役F1ドライバー達のデビューイヤーの成績をまとめた。なおシーズン途中でのデビューの場合は、フル参戦シーズンのリザルトを対象とした。また各項目において相手を上回った者の欄は赤地とした。

一概には言える事ではないが、資金的な支えが無い限りは最低でもチームメイトに迫る成績を残すか、あるいは何か将来性を感じさせた者が翌年以降のシートを手にしてきた傾向が伺える。また、将来のF1ワールドチャンピオンとなるドライバー達の初年度はやはり圧巻だ。

ルイス・ハミルトン

マクラーレンのルイス・ハミルトン、2008年F1中国GPにてcopyright McLaren

マクラーレンのルイス・ハミルトン、2008年F1中国GPにて

「マクラーレンの秘蔵っ子」と呼ばれたルイス・ハミルトンがデビューを果たしたのは2007年の事だった。チームメイトは前2シーズンでタイトルを取ったフェルナンド・アロンソだ。

ハミルトンはデビュー戦でいきなり3位表彰台を獲得。序盤3戦連続でポディウムに上がるなど早々に頭角を現し、同一ポイントながらもアロンソを抑えてドライバーズランキング2位に輝いた。

なおこの年のマクラーレンMP4-22は実質的にコンストラクタータイトルに相当するポイントを稼いだが、フェラーリに対する産業スパイ疑惑を受けて全ポイントが剥奪された。

デビュー年の対チームメイト成績

ハミルトン アロンソ
ランキング 2位(109点) 3位(109点)
出走 17回 17回
優勝 4回 4回
表彰台 12回 12回
ポールポジション 6回 2回
フロントロー 12回 9回
ファステストラップ 2回 3回
入賞 15回 16回
予選Q3進出 17回 17回
決勝最高位 優勝 優勝
ベストグリッド 1番手 1番手
DNF 1回 1回

バルテリ・ボッタス

Courtesy Of Williams

ウィリアムズとの3年に渡るテスト及びリザーブドライバーを経て2013年にデビューした。

FW35は競争力を欠き中団後方を争うような状況であったが、アメリカGPで初入賞を飾りドライバーズランキング17位と、2年先輩のチームメイト、パストール・マルドナドを一貫して上回るパフォーマンスを残した。

デビュー年の対チームメイト成績

ボッタス マルドナド
ランキング 17位(4点) 18位(1点)
出走 19回 19回
入賞 1回 1回
予選Q3進出 2回 0
決勝最高位 8位 10位
ベストグリッド 3番手 13番手
DNF 2回 3回

マックス・フェルスタッペン

F1デビューイヤーのマックス・フェルスタッペン、トロロッソCourtesy Of Red Bull Content Pool

F1デビューイヤーのマックス・フェルスタッペン、トロロッソ

2015年にトロロッソから史上最年少デビュー(17歳165日)を果たすと、7位でチェッカーを受けた第2戦で最年少入賞記録を更新。その後も6戦連続でポイントを稼ぐなど周囲の度肝を抜く走りでFIAルーキー・オブ・ザ・イヤーをも手にした。

チームメイトは同じ新人のカルロス・サインツ。フェルスタッペンは49ポイントでランキング12位となり、18ポイントでランキング15位のサインツを上回った。

デビュー年の対チームメイト成績

マックス サインツ
ランキング 12位(49点) 15位(18点)
出走 19回 19回
入賞 10回 7回
予選Q3進出 9回 7回
決勝最高位 4位 7位
ベストグリッド 6番手 5番手
DNF 5回 7回

セルジオ・ペレス

ロシアGPポディウム上のセルジオ・ペレスCourtesy Of F1

ロシアGPポディウム上のセルジオ・ペレス

2011年にザウバーでデビュー。第5戦スペインで初入賞を飾ると、シーズンを通して5度のポイント獲得を果たした。

2009年デビューのチームメイト、小林可夢偉がコンスタントに30ポイントを稼いでドライバーズランキング12位を獲得したのに対し、ペレスは14ポイントのランキング16位に留まった。

デビュー年の対チームメイト成績

ペレス 小林可夢偉
ランキング 16位(14点) 12位(30点)
出走 17回 19回
入賞 5回 9回
予選Q3進出 3回 4回
決勝最高位 7位 5位
ベストグリッド 9番手 7番手
DNF 3回 3回

ダニエル・リカルド

スクーデリア・トロロッソのダニエル・リカルド、2011年8月1日オーストリア・ザルツブルグのHangar-7にてCourtesy Of Red Bull Content Pool

スクーデリア・トロロッソのダニエル・リカルド、2011年8月1日オーストリア・ザルツブルグのHangar-7にて

2011年の第9戦イギリスGPでヒスパニア・レーシングからデビュー。翌年にトロロッソで初のフル参戦を果たした。

チームメイトは同じく初のフル参戦となったジャン=エリック・ベルニュ。パフォーマンス的には予選・決勝共にチームメイトを上回っていたが、総獲得ポイントでは10点のランキング18位に留まり、16点で17位に付けたベルニュを下回った。

リカルド ベルニュ
ランキング 18位(10点) 16位(16点)
出走 20回 20回
入賞 6回 4回
予選Q3進出 2回 0
決勝最高位 9位 8位
ベストグリッド 6番手 11番手
DNF 1回 4回

ランド・ノリス

マクラーレンのテストドライバーを務めるランド・ノリスCourtesy Of Mclaren

マクラーレンのテストドライバーを務めるランド・ノリス

2019年にマクラーレンでデビュー。チームの過度な喧伝故に活躍が疑問視されていた部分もあったが、開幕戦オーストラリアGPで予選8番手を叩き出し周囲を黙らせた。

第2戦で初入賞を飾ると、その後は完走したレースの7割でポイントを獲得する安定的なパフォーマンスを発揮。49ポイントでドライバーズランキング11位を獲得したが、96ポイントで6位につけたチームメイトで5年先輩のカルロス・サインツには及ばなかった。

ノリス サインツ
ランキング 11位(49点) 6位(96点)
出走 21回 21回
表彰台 0 1回
入賞 11回 13回
予選Q3進出 14回 13回
決勝最高位 6位 3位
ベストグリッド 5番手 5番手
DNF 6回 4回

セバスチャン・ベッテル

2011年10月10日、厚木市のインフィニティ・デザイン・スタジオを訪れたレッドブル・レーシングのセバスチャン・ベッテルCourtesy Of Red Bull Content Pool

2011年10月10日、厚木市のインフィニティ・デザイン・スタジオを訪れたレッドブル・レーシングのセバスチャン・ベッテル

クラッシュにより欠場を強いられたロバート・クビサの代役として2007年第7戦アメリカGPでデビュー。第11戦ハンガリーGP以降はスコット・スピードに代わってトロ・ロッソのレギュラーシートを得た。

フル参戦は翌2008年。序盤4戦でリタイヤを喫するも、STR3が投入された第6戦モナコでいきなり5位入賞を飾った。極めつけは第14戦の雨のモンツァ。ポール・トゥ・ウィンで自身並びにトロロッソにとっての初優勝を果たした。

チームメイトは同じ新人のセバスチャン・ブルデー。ベッテルは35ポイントでランキング8位に付け、4ポイントで17位に留まった4年連続のチャンプカー王者に完勝した。

ベッテル ブルデー
ランキング 11位(49点) 17位(4点)
出走 18回 18回
優勝 1回 0
表彰台 1回 0
ポールポジション 1回 0
フロントロー 1回 0
入賞 9回 2回
予選Q3進出 10回 6回
決勝最高位 優勝 7位
ベストグリッド 1番手 4番手
DNF 6回 5回

ランス・ストロール

ウィリアムズF1のランス・ストロールCourtesy Of Williams

ウィリアムズF1のランス・ストロール

2017年にウィリアムズでデビュー。初戦を含む最初の3戦で連続リタイアを喫するも母国レースの第7戦カナダGPで9位と初入賞を飾り、大混乱に見舞われた第8戦アゼルバイジャンGPでは3位初表彰台を獲得した。

チームメイトは教育係として再起用されたベテランのフェリペ・マッサ。43点のランキング11位に付けたマッサに対し、ストロールは40点を稼ぎ12位と肉薄したが、入賞回数や予選成績という点では完敗だった。

ストロール マッサ
ランキング 12位(40点) 11位(43点)
出走 20回 19回
表彰台 1回 0
フロントロー 1回 0
入賞 7回 13回
予選Q3進出 3回 11回
決勝最高位 3位 6位
ベストグリッド 2番手 6番手
DNF 4回 2回

シャルル・ルクレール

シャルル・ルクレールCourtesy Of Sauber Motorsport AG

シャルル・ルクレール

2018年にアルファロメオ(旧ザウバー)でデビュー。序盤は4年先輩でチームメイトのマーカス・エリクソンに劣勢であったが、第4戦で6位初入賞を果たして以降は逆転。シーズンを通して印象的な走りを見せ続け、9ポイントでランキング17位のエリクソンに対し、39ポイントで13位と完勝。翌年のフェラーリ移籍のチャンスを掴み取った。

ルクレール エリクソン
ランキング 13位(39点) 17位(9点)
出走 21回 21回
入賞 10回 6回
予選Q3進出 8回 3回
決勝最高位 6位 9位
ベストグリッド 7番手 6番手
DNF 6回 4回

カルロス・サインツ

トロ・ロッソF1のカルロス・サインツCourtesy Of Red Bull Content Pool

トロ・ロッソF1のカルロス・サインツ

2015年にトロロッソでデビュー。初戦で9位入賞と初のポイントを獲得し、序盤はフェルスタッペンを凌ぐ成績を安定的に残していたが、マシンの信頼性不足が大きく響き、ランキング12位のチームメイトに対して15位に留まった。

この年のフェルスタッペンのリタイヤは計4回で、2回がエンジン、他は接触とスピンによるものであった。対してサインツの計7回のリタイヤはエンジン、電気系統、ブレーキと、全てマシン側の問題によるものだった。

なお決勝では破れたが、予選成績としてはフェルスタッペンを上回っている。

デビュー年の対チームメイト成績

サインツ マックス
ランキング 15位(18点) 12位(49点)
出走 19回 19回
入賞 7回 10回
予選Q3進出 7回 9回
決勝最高位 7位 4位
ベストグリッド 5番手 6番手
DNF 7回 5回

ピエール・ガスリー

スーパーフォーミュラ最終鈴鹿での会見に臨んだピエール・ガスリーCourtesy Of Dutch Photo Agency/Red Bull

スーパーフォーミュラ最終鈴鹿での会見に臨んだピエール・ガスリー

ダニール・クビアトの後任として2017年第15戦マレーシアGPでトロロッソからデビュー。翌2018年にフル参戦を果たした。

デビュー戦のオーストラリアGPはエンジントラブルでリタイヤを喫したものの、続く第2戦バーレーンGPで4位フィニッシュを果たし初入賞。シーズンを通して同じく初のフル参戦となったチームメイトのブレンドン・ハートレーを予選・決勝共に上回る活躍を残した。

デビュー年の対チームメイト成績

ガスリー ハートレー
ランキング 15位(29点) 19位(4点)
出走 21回 21回
入賞 5回 3回
予選Q3進出 6回 2回
決勝最高位 4位 9位
ベストグリッド 5番手 6番手
DNF 5回 7回

フェルナンド・アロンソ

2006年F1ブラジルGPで表彰台に上がるルノーのフェルナンド・アロンソとフェリペ・マッサcopyright Ferrari S.p.A.

2006年F1ブラジルGPで表彰台に上がるルノーのフェルナンド・アロンソとフェリペ・マッサ

2001年にミナルディでデビュー。チームメイトは12回のグランプリ参戦経験を持つタルソ・マルケス。ラスト3戦はマルケスに代わりアレックス・ユーンがもう1台を駆った。

この年のミナルディは破綻寸前から辛うじて参戦継続を果たした状態で、PS01はライバルに対して競争力を欠き、ポイントを獲得する力も信頼性もなかった。

アロンソのシーズン最高成績はドイツGPの10位に留まり、ノーポイントのランキング23位に終わったが、初戦でマルケスに2.6秒差を付けるなど予選ではチームメイトとライバルチームを圧倒し続けた。

デビュー年の対チームメイト成績

アロンソ マルケス ユーン
ランキング 23位(0点) 22位(0点) 26位(0点)
出走 16回 13回 3回
決勝最高位 10位 9位 16位
ベストグリッド 17番手 20番手 22番手
DNF 8回 7回 2回

エステバン・オコン

マノー・レーシングのエステバン・オコンCourtesy Of MRT

マノー・レーシングのエステバン・オコン

2016年の第13戦ベルギーGPでデビュー。翌2017年にフォース・インディアから初のフル参戦を果たした。

開幕戦で10位フィニッシュを果たし初入賞を飾ると、その後もフル参戦7年目のチームメイト、セルジオ・ペレスに引けを取らない安定した走りでポイントを獲得。最終的にランキングでは破れたものの高い評価を得た。

デビュー年の対チームメイト成績

オコン ペレス
ランキング 8位(87点) 7位(100点)
出走 20回 20回
ファステストラップ 0 1回
入賞 18回 17回
予選Q3進出 13回 15回
決勝最高位 5位 4位
ベストグリッド 3番手 5番手
DNF 1回 2回

キミ・ライコネン

ザウバー時代のキミ・ライコネン、2001年Courtesy Of Sauber

ザウバー時代のキミ・ライコネン、2001年

F3でのレース経験がないまま2001年にザウバーからデビュー。開幕オーストラリアGPでいきなり6位入賞を果たし、第6戦オーストリア、第8戦カナダでは表彰台まであと1歩の4位を獲得した。

デビュー2年目のチームメイト、ニック・ハイドフェルドに3ポイント差で破れたものの天性のスピードを見せつけ、翌年のマクラーレン移籍を手にした。

デビュー年の対チームメイト成績

ライコネン ハイドフェルド
ランキング 10位(9点) 8位(12点)
出走 16回 17回
表彰台 0 1回
ファステストラップ 0 1回
入賞 4回 7回
決勝最高位 4位 3位
ベストグリッド 7番手 6番手
DNF 6回 6回

アントニオ・ジョビナッツィ

2018年仕様のサウバースーツを来たアントニオ・ジョビナッツィCourtesy Of Sauber Motorsport AG

2018年 アントニオ・ジョビナッツィ

怪我のパスカル・ウェーレインに代わって2017年の開幕オーストラリアGPでザウバーからデビュー。2019年にキミ・ライコネンのチームメイトとしてアルファロメオから初のフル参戦を果たした。

第9戦オーストリアで初入賞を果たし、第14戦と第15戦では2戦連続でポイントを獲得するなどしたが、チームメイトと比較すると予選・決勝共に見劣りするシーズンとなった。

デビュー年の対チームメイト成績

ジョビナッツィ ライコネン
ランキング 17位(14点) 12位(43点)
出走 21回 21回
入賞 4回 9回
予選Q3進出 3回 9回
決勝最高位 5位 4位
ベストグリッド 7番手 5番手
DNF 2回 2回

ジョージ・ラッセル

ジョージ・ラッセル、2019年ウィリアムズCourtesy Of Williams

ジョージ・ラッセル、2019年ウィリアムズ

2010年以来9年ぶりのF1復帰を果たすロバート・クビサをチームメイトとして、2019年にウィリアムズからデビューを飾った。

FW42にライバルと戦えるだけの競争力はなくポイントには至らなかった。リザルトとしてはクビサが第11戦ドイツGPで1点をもぎ取ったため破れたが、予選・決勝共にチームメイトを圧倒した。

デビュー年の対チームメイト成績

ラッセル クビサ
ランキング 20位(0点) 21位(1点)
出走 21回 21回
入賞 0 1回
決勝最高位 11位 10位
ベストグリッド 14番手 15番手
DNF 2回 2回

ニコラス・ラティフィ

カナダGPのFP1でウィリアムズFW42をドライブしたニコラス・ラティフィCourtesy Of Williams Racing

カナダGPのFP1でウィリアムズFW42をドライブしたニコラス・ラティフィ

2020年にウィリアムズからデビュー。FW43にポイントを争う力はなく、チームメイトのジョージ・ラッセル共々ノーポイントに終わったが、入賞まであと一歩の11位を3度獲得した。ただ予選結果としてはラッセルに全敗した。

デビュー年の対チームメイト成績

ラッセルは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で欠場を余儀なくされたルイス・ハミルトンの代役として第16戦サクヒールGPでメルセデスをドライブ。その際にジャック・エイトケンがラッセルの代役を務めた。

ラティフィ ラッセル エイトケン
ランキング 21位(0点) 18位(3点) 22位(0点)
出走 17回 17回 1回
フロントロー 0 1回 0
ファステストラップ 0 1回 0
入賞 0 1回 0
予選Q3進出 0 1回 0
決勝最高位 11位 9位 16位
ベストグリッド 15番手 2番手 17番手
DNF 3回 4回 0