2026年F1エンジン電動比率論争勃発…”恐れるレッドブル”に疑いの目を向けるメルセデス
Published:
電動比率を調整しない場合、レースが損なわれるリスクがあるとしてレッドブルが2026年の次世代F1パワーユニット(PU)規定の変更を求めた事に対してメルセデスのトト・ウォルフ代表は、彼らが本当に「恐れている」のは自社製PUの競争力不足ではとの疑いの目を向け、ルール変更の可能性は「ゼロ」だと跳ね除けた。
2014年に導入された現行ハイブリッドエンジンは2025年を以てMGU-Hと共に姿を消す。新たなPUはICE(内燃エンジン)とモーターによるパワー比率が50対50となるよう規定されており、電動領域の重要性が大きく引き上げられる。
電気パワー、1周未満で枯渇? ICE比増を訴えるレッドブル
PUメーカー各社が精力的に開発を進める中、導入まで2年半を切ったこのタイミングで一つの懸念の声が上がった。チーム代表間レベルの話し合いの中で、バッテリーパワーが1周保たずに枯渇し、レースを損ねる可能性があるとの指摘がなされたようなのだ。
この点についてレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表はレッドブル・リンクで行われた会見の中で、バッテリーサイズの大型化と、これに伴い冷却要件が厳しくなった事で、車両重量の増加と車体空気抵抗の悪化が見込まれる等として、ICEの出力割合を5~10%引き上げる事を提案した。
また、仮に現行規定のまま2026年に突入すれば、ドライバーがバッテリー残量を回復させるために、本来であれば全開走行が期待されるストレートで意図的にシフトダウンを行い、エネルギー回生を行わなければならなくなる可能性があると指摘した。
そして次世代F1マシンが「自らを技術的に破滅させる」事のないよう対処する必要があると訴えると共に、FIAは「この問題をかなり深刻に受け止めている」と説明した。
レッドブル所属のマックス・フェルスタッペンは、2026年を想定したシミュレーション・データを目にした事があると明かした上で「かなり酷そうだ」と述べ、「モンツァのストレートを全開で走った場合、ストレートエンドの400〜500mくらい手前でシフトダウンしなきゃならないんだって。その方が速いらしい」と懸念を示した。
「恐れている」開発遅延を疑うメルセデス
だがウォルフは新規参戦メーカーの存在に触れて、内燃:電動を50対50とするエンジン規定があったからこそホンダやアウディの2026年エントリーが実現したのだと指摘し、「大声を張り上げて言うが、可能性はゼロだ」と述べ、2026年のエンジン規定が変更される事はないと断言した。
ホンダはアストンマーチンと、アウディはザウバーと提携して各々、2026年よりオープン・ホイールの四輪最高峰クラスで世界タイトル獲得を目指す。
ザウバー(アルファロメオ)のアレッサンドロ・アルンニ・ブラービ代表は、現行規定の存在こそがアウディのF1参戦を「後押し」したと認めた上で、比率の問題に関しては「何とも言い難い」としながらも、「クリスチャンが言った通り、全体的なアプローチが必要だという点に同意する。これはPUのみならずパッケージング、つまりシャシーやエンジンを含めた問題だ」と語った。
ストレートでシフトダウンの恐れがあるとの主張についてウォルフは、それが起こり得るのは現行シャシーに2026年PUを積んだ場合に限られるとして、ホーナーを「破滅論者」だと非難し、そうならないよう極めて高い空力効率を誇るシャシーを作り上げるという「再発明」が「イノベーションの最先端」足るF1に求められているのだと主張した。
2026年のエンジン規定は昨年合意に至ったが、車体側のルールはまだ議論中だ。目下、懸案の空気抵抗を減らすために、DRSより可動性の高いアクティブエアロを導入する事や、エアロダイナミクスを抜本的に変更すること等が検討されている。
ホーナーがこの期に及んで規定変更を提案したのは、レッドブル・パワートレインズ(RBPT)での開発状況が芳しくないためだとウォルフは考えている。
ウォルフは、ホーナーが「恐れている」のはRBPTプロジェクトにおいて電動領域の開発が「上手くいっていない」ためであり、規定変更によってこれを打破しようと考えているのではないかと指摘し、「こんな事を言う本当の動機は何なのか、常に疑問に思う必要がある」と付け加えた。
レッドブルは電動エリアの開発支援を外部に求めて昨年、フォードとの提携を発表している。