
エアボーン・クラッシュ
エアボーン・クラッシュ(英:airborne crash)とは、事故の過程でマシンが路面を離れ、宙に浮くクラッシュを指す。他のマシンに乗り上げたり、瞬間的に大量の空気が車体下部に入り込んだりすることによって発生する。空中で回転する場合もあるが、必ずしも宙返りや横転を含むわけではない。
英語の「airborne」は「空中にある」「空気によって運ばれる」という意味の形容詞だ。軍事用語では空挺部隊などを意味するが、モータースポーツではマシンが空中に浮いた状態を表す。横転を指す「rollover」とは意味が異なり、ジャンプなどで一時的に路面を離れても、事故にならなければエアボーン・クラッシュとは呼ばない。
エアボーン・クラッシュの発生要因と事例
接触などで跳ね上げられる場合と、空力によって浮き上がる場合の大きく二通りがある。もっとも、両者が重なる事故もあり、最初に車体が持ち上がった原因と、その後に浮き上がりが拡大した原因が同じとは限らない。
接触がきっかけとなった例としては、2010年F1第9戦ヨーロッパGPでのケースがある。この時は、マーク・ウェバー(レッドブル)がヘイキ・コバライネン(ロータス)のマシン後部に接触し、空中で回転する事故が起きた。
1999年のル・マン24時間では、メルセデスCLRが予選、ウォームアップ、決勝レースの3回で立て続けにエアボーン・クラッシュに見舞われた。いずれの事故も、マシンの空力設計上の欠陥が原因だったとされる。
レーシングマシンは、空気の流れで車体を路面に押し付ける「ダウンフォース」を発生させる。ところが、接触や路面の起伏などで前部が大きく持ち上がると、車体周囲の流れと圧力分布が変化し、上向きの力である「揚力」が強まる場合がある。
同じ車体形状や姿勢、空気の条件であれば、空気による力はおおむね空気に対する速度の2乗に比例する。そのため、高速域では姿勢の変化が大きな力につながり得る。
エアボーンの抑制および乗員保護対策
マシンが完全に路面を離れると、タイヤと路面の摩擦を利用した通常の制動や方向転換ができなくなる。着地時の衝撃に加え、他のマシンやフェンスなどへの衝突、部品の飛散によって被害が拡大するおそれがある。
浮き上がりを抑える代表的な装置の一つは、NASCARのルーフフラップだ。スピン時などに屋根のフラップが開き、空気の流れを乱して揚力を抑える。インディカーでも同様の対策が導入されている。
事故が起きた際の乗員保護も欠かせない。浮き上がり自体を防ぐ装置ではないが、F1では、横転時にドライバーの生存空間を確保するロール構造や、頭部周辺を保護するヘイローなどが被害の軽減を担っている。