
PU改善でも埋まらぬ差…王者マクラーレン「失速の真因」 ステラが明かす50%の問題。試される設計思想
前年にドライバーズ及びコンストラクターズの両タイトルを制したマクラーレンが、開幕2戦でメルセデスとフェラーリの首位争いに全く絡めていない。ポールポジションとの差はオーストラリアGPの0.862秒から中国GPの0.486秒へと縮まっており、改善の兆しは確かにある。
だがその差は、なおトップ争いに届く水準ではない。
マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラは予選後、パワーユニット(PU)の運用面に対する理解が進んだことを認めた。
「PUの動作について、より多くを学ぶことができた。非常に複雑で、仕組みも極めて入り組んでいる。そのわずかな設定の違いがラップタイムや速度に大きな影響を与える」
さらに「今は以前より多くのパフォーマンスを引き出せていると思う。ただし予選を振り返ると、まだ引き出せる余地が残っているように見える」と続けた。
Courtesy Of McLaren
ドライバーズパレードで談笑しながら歩くアレックス・アルボン(ウィリアムズ)、カルロス・サインツ(ウィリアムズ)、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2026年3月15日(日) F1中国GP(上海インターナショナル・サーキット)
課題はPU運用だけではない
ステラは同時に、遅れの原因をPUだけに求める見方を明確に否定した。オーストラリアGP時点では「遅れの約50%がPU運用、残り50%がコーナリング性能」に由来していたという。
直線区間での改善が数値として表れたことで、中国GPではコーナリング性能という課題がよりはっきり浮かび上がった。
コーナーでの遅れの背景にあるのが、ダウンフォース不足だ。ステラは「マシンの空力効率、特にダウンフォースを改善する必要があることは分かっている」と語る。
特に注目されるのは、アンダーフロアが生み出すダウンフォースだ。これは空気抵抗を抑えながら大きな空力的グリップを発生させる重要な要素であり、コーナリング性能を左右する。
短く作った理由、そして生まれた弱点
この問題の背景にあるとみられるのが、MCL40の設計思想だ。メルセデスが規則上限の3400mmのホイールベースを採用する一方、マクラーレンはそれより短い構成を選んだ。
テクニカル・ディレクターのロブ・マーシャルは、この判断について「車体重量と重量配分を最適化するため」と説明する。
コンパクトな車体は軽量化に寄与し、バラストによる重量配分の調整自由度も高まる。回頭性が向上し、低速から中速域での方向転換の速さにもつながる。タイヤの温度管理やトラクションの面でも利点が見込める。
だが代償も小さくない。ホイールベースの短縮はフロア面積の減少を招き、アンダーフロア由来のダウンフォース量を制限する要因となり得る。本来想定していた機動性を引き出せていない可能性がある。
失敗設計か、開花前夜か
Courtesy Of McLaren
パドックエリアに停車するマクラーレンのホスピタリティトラックと植え込みの赤い花、2026年3月14日(土) F1中国GP予選(上海インターナショナル・サーキット)
この設計を単純な失敗と断じることはできない。ダウンフォース不足という弱点は、裏を返せば改善すべき領域が明確だということでもある。フロア形状やシール性能の最適化が進めば、必要な量のダウンフォースを確保できる余地はある。
ベンチマークとなっているメルセデスとは異なるホイールベースを採用している点も見逃せない。成功すれば容易に模倣できない独自の競争優位を確立できる可能性もある。
ただし、空力開発が追いつけば真価を発揮するというのは、あくまで期待・見通しであって保証ではない。成立条件が厳しい分、開発が想定通りに進まなければ弱点が長期化するリスクも同時に抱えている。
ステラが「大きな改善が見込まれる」と自信を示す、マイアミGP以降に投入予定のアップデートは、この設計の可能性を引き出す方向に向かうのか、それとも限界を露呈する結果に終わるのだろうか。