模倣困難か…フェラーリSF-26が魅せた「ネオ・ブローイング」と「反転ウイング」の狙いと背景、奇抜を超えた”周到設計”

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第2回F1バーレーンテストでは、スクーデリア・フェラーリ「SF-26」のリアエンドに投入された独創的な2つの空力処理がパドックの注目を集めている。いずれも他のチームには見られない構成で、そのうち一つは設計上の制約から模倣するのは困難とみられる。

現代に蘇ったエキゾースト・ブローイング

テスト4日目に投入されたのは、エキゾーストパイプの出口直後、ディフューザー上面付近に配置された長方形状のウイングレットだ。排気ガスが直接当たる位置に設けられ、上部にはカーボンではなく耐熱素材が用いられている。

F1フォトグラファーのシャビエル・ガスケス氏が投稿した以下の写真が分かりやすい。長方形という、F1マシンの空力パーツとしては異質な形状が、リアエンドで強い存在感を放っている。

この装置は、排気流をリアウイングのメインプレーン下面へと導くよう配置されている。下面の流速が上がれば圧力が低下し、上面との圧力差が拡大する。その結果、ダウンフォースが増加する。

同時に、ディフューザー上面の流速を高めることで、床下からの気流の“抜け”を加速させる効果も狙っていると考えられる。

排気を空力的に活用する発想自体は目新しいものではない。2010年代に流行し、その後の規則改正で封じられた「エキゾースト・ブローイング」を現代的に再解釈したアプローチと言える。

初期のレイアウト設計が可能にした巧妙なアイデア

このアプローチの背景には、2026年型パワーユニットの特性がある。MGU-Hの廃止により排気を使った回生が行われなくなり、余剰が生じた。また、エネルギーマネジメントの観点から、コーナリング中も一定のエンジン回転域を維持するケースが増えている。

こうした状況は、排気流を空力に活用する条件を整える要素となり得る。

一見すると他チームも容易に模倣できそうに見えるが、理論上、即時対応が可能なのは、フェラーリ製ギアボックスを採用するハースとキャデラックに限られる可能性がある。というのも、技術規則では、ドライブシャフトを起点として60mm以上後方への空力的付加物の配置が禁じられているためだ。

フェラーリがこのデバイスを配置できたのは、ディファレンシャルを可能な限り後方に置くレイアウトを採用したためとみられる。デフはリアアクスルから前後60mmの範囲に配置できる。フェラーリは最大値の60mm後方を選択し、その背後に空力的付加物を配置可能な空間を作り上げた。

ドライブシャフトやデフのレイアウトは、ギアボックスの設計に依存する。そのため、他のチームが同様のアプローチを採るためにはギアボックスの再設計を伴う可能性が高く、この場合、シーズン中の対応は容易ではない。

これは、初期設計段階から構想されていたSF-26の中核的なアイデアの一つと位置づけることができる。

興味深いのは、フェラーリがこのデバイスの効果を最大化するため、特定のエンジンプログラムを用意しているかどうかだ。追加のダウンフォースが必要な局面で排気流量を増やす制御が可能であれば、効果はより大きくなる。エキゾースト・ブローイング全盛期には、多くのエンジンメーカーが同様の制御を行っていた。

なお、イタリアの専門メディア『AutoRacer』によれば、このデバイスは事前に国際自動車連盟(FIA)の確認を受けており、現行規則に適合しているとされる。

既成概念を覆す「反転フラップ」の衝撃

フェラーリの革新は“ネオ・エキゾースト・ブローイング”にとどまらない。5日目に試験導入された新型リアフラップは、フラップが単に跳ね上がるのではなく、上下が完全に反転する構造を備えていた。

その狙いは何処にあるのか? 「コーナーモード」では可能な限り多くのダウンフォースを得たい一方、「ストレートモード」では空気抵抗を極限まで低減したい。実際の効果の大小は別として、ドラッグ低減効果の最大化を目指した設計であることは明らかと言えるだろう。

レギュレーションにはフラップの回転角度に関する具体的な制限は明記されていない。旧DRSとは異なり、メインプレーンとフラップ間の隙間サイズにも制限は設けられていない。

リアウイングの設計には各チームで大きな差が見られる。アルピーヌはフラップの回転軸を前端に配置し、ウイング全体が大きく寝る構造を採用する。一方、アウディは中央軸で回転させ、比較的小さな隙間を形成するアプローチを採る。他の多くのチームは後端を支点とする旧DRSに近い方式を選択している。

この「反転フラップ」は構造上、他チームも比較的模倣しやすいとみられる。


SF-26のリア処理は、レイアウト設計から始まった戦略的判断の産物といえる。規則の文言や寸法定義を精査し、空力的な余地を最大限に引き出す設計思想がうかがえる。同時に、新規定導入初年度での覇権奪還を狙うフェラーリの強い意志も感じさせる。

これらの独創的なアイデアは、跳ね馬にどれほどのパフォーマンス向上をもたらすのか。そしてシーズン全体のトレンドとなり得るのか。今後の動向が注目される。