
佳境のシート争い、なぜメキーズは角田裕毅を「待つ」のか? ―“常識外の資質”と“300kmの夕食”が物語る特別な絆
2026年のシート争いが正念場を迎える角田裕毅。憶測が飛び交う中、レッドブルのチーム代表ローラン・メキーズは、なぜ彼の「さらなる成長」に期待を寄せ続けるのか。その背景には、角田を「一般的なドライバーとは異なるタイプ」とする洞察があるのかもしれない。
メキーズによれば、多くのF1ドライバーはキャリア4年目で成長が鈍る傾向がある。だが角田は、その常識から外れた曲線を描いているという。
レッドブルの公式ポッドキャスト『Talking Bull』でメキーズは、角田の歩みを「独特」と表現し、こう分析した。
「生来の速さに加えて、彼は私が“遅咲き”と呼ぶタイプなんだ。多くのドライバーが4年目に伸び悩む中、彼は2024年に飛躍的な成長を遂げた。そして2025年もまた、素晴らしいスタートを切った」
角田はレーシング・ブルズから出走した今季開幕2戦で3ポイントにとどまったが、戦略ミスやマシントラブルがなければ中国GP終了時点でランキング5位に達していた可能性もある走りを見せ、翌日本GPからリアム・ローソンに代わってレッドブルへ昇格した。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
予選後にインタビューを受ける5番手の角田裕毅(レーシング・ブルズ)、2025年3月15日(土) F1オーストラリアGP(アルバート・パーク・サーキット)
F1最難関の環境で光る「柔軟な姿勢」
メキーズが評価するのは、成長の持続性だけではない。角田の置かれた環境は、4度の王者マックス・フェルスタッペンの隣という「F1で最も厳しい場所」だ。高い要求が常に突きつけられ、周囲の視線も鋭い。
過去には、そんな重圧に揉まれてピエール・ガスリー、アレックス・アルボン、セルジオ・ペレスといった実力者たちが、安定的に結果を残せずチームを去った歴史がある。だが角田は、容赦ない環境に身を置きながらも、余計な力みを見せず、やるべき仕事に集中する姿勢を崩さないという。
「黙々とやるべきことに集中し、適切な心持ちを崩さず、柔軟な姿勢を貫いている」とメキーズは称え、その働きぶりとユニークなキャラクターにより「今や、コースの内外を問わずチームの象徴的な存在になっている」と評価した。
Courtesy Of Red Bull Content Pool
ガレージ内でローラン・メキーズ(レッドブル・レーシング代表)と話す角田裕毅、2025年10月24日(金) F1メキシコGP FP1(エルマノス・ロドリゲス・サーキット)
「彼も友人だ」 300kmを走る、特別な関係
二人の関係は、仕事上の評価だけでは語り尽くせない。司会者から「常に腹ペコの“ジャパニーズ・キング”があなたを友人と言っている」と振られたメキーズは、間髪なく「同じだ。本当にその通りだよ」と返した。
「彼は驚くような人物で、飾らず気さくで、気前がいい。もちろん、私にとっても友人だ」
メキーズは、角田の人柄を示す印象的なエピソードを披露し、ユーモアを交えてその親密さを明かした。
「普段から顔を合わせているのに、夕食のためだけに300kmも遠くから運転して来るタイプなんだ。2~3週間前もそうだった。まぁ、我々と会うためではなく、食事目当てかもしれないけどね!」
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ハンガロリンクのパドックでローラン・メキーズ(RBフォーミュラ1チーム代表)と話す角田裕毅、2024年7月18日(木) F1ハンガリーGP
レッドブルが来季シートの決定をシーズン末まで先送りした理由について、ヘルムート・マルコは「チャンピオンシップ争いへの優先」を挙げたが、メキーズはそれを認めつつも、角田を含む候補者への「チャンス」という側面を強調している。
F1デビューから5年目を迎えても成長を重ねる「遅咲き」の資質、トップチームの重圧を受け止める心の強さ、そしてチーム代表とドライバーという枠を超え「友」と呼び合うほどの信頼関係。
メキーズが角田のさらなる飛躍を信じ、シーズン末というぎりぎりのタイミングまで見極めのチャンスを与えるのは、ごく自然なことなのかもしれない。