
クリスチャン・ホーナー、レッドブル正式退社―三桁億円の”巨額和解”を経て探るF1復帰シナリオ
レッドブル・レーシング前代表のクリスチャン・ホーナーが2025年9月22日、正式にチームを去ったことが明らかにされた。契約は2030年末まで残っていたが、7月9日付で解任され、1億ドル(約148億円)とも報じられる和解金を受け取り、今後は本格的にF1復帰の選択肢を検討することになる。
巨額の和解金
和解金の額については複数の報道があり、英公共放送『BBC Sport』は6,000万ユーロ(約105億円)、英タブロイド紙『Daily Mail』は9,200万ユーロ(約160億円)、英専門メディア『The Race』は1億ドルと伝えている。
詳細な条件が公表されていない以上、いずれも憶測にとどまるが、年俸1,200万ユーロとされる契約の残り5年分が一括で支払われた形と考えれば、6,000万ユーロは固い。レッドブルGmbHの2024年の収益は112億ユーロ(約1兆9,500億円)であり、この程度の金額は取るに足らない。
功績と失脚の経緯
Courtesy Of Red Bull Content Pool
スプリントでのチャンピオン獲得後に写真を撮るレッドブルのマックス・フェルスタッペンとクリスチャン・ホーナー、2023年10月7日(土) F1カタールGP(ロサイル・インターナショナル・サーキット)
ホーナーは2005年、史上最年少31歳でF1チーム代表に就任。エイドリアン・ニューウェイを招聘し、レッドブルを王者チームへと押し上げた。彼の下でチームは8度のドライバーズタイトルと6度のコンストラクターズタイトルを獲得してきた。ホーナーは史上最も成功したチーム代表のひとりとして記憶されるだろう。
だが、2022年にレッドブルGmbHの共同設立者ディートリッヒ・マテシッツが死去。遺族との間で対立が発生したとされる。さらにヘルムート・マルコとの権力闘争、女性社員へのセクハラ疑惑(内部調査で却下)も重なり信頼を失っていき、ニューウェイやスポーティングディレクターのジョナサン・ウィートリーの離脱を経て、チーム力低下の責任を問われた。
レッドブル衰退と新体制での復調
2024年には序盤の快進撃から一転、マクラーレンの躍進もあり後半14戦でわずか2勝と失速。エースのマックス・フェルスタッペンはかろうじて王座を防衛したものの、勢いは完全に失われた。
2025年シーズン序盤も不調が続いたが、ホーナーの後任としてチーム代表に就任したローラン・メキーズが技術部門の立て直しに着手。直近のイタリアGPとアゼルバイジャンGPで連勝を飾り、復活の兆しを見せた。
フェルスタッペンも「今まで僕らは、クルマのセットアップで右往左往していた。極端な変更ばかりで、コントロールできていなかった。何をすべきか完全には理解していなかった」「(メキーズが)適切な質問を投げかけることでエンジニア陣が機能し始めた」と語り、その手腕を評価している。
復帰先の候補はアルピーヌかアストンマーチンか
ガーデニング休暇期間を含む和解条件は成立した。ホーナーは2026年序盤以降にライバルチームに加入が可能とされる。有力候補として挙げられるのはアルピーヌとアストンマーチンだ。
アルピーヌはホーナーと親交の深いフラビオ・ブリアトーレを顧問に迎え再建中であり、自社製パワーユニットに終止符を打ち、メルセデス製パワーユニットの導入を控えるなど歴史的な変革期にある。ブリアトーレは「現時点」では考えていないとして、ホーナー起用に含みをもたせている。
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グリッド上で話をするクリスチャン・ホーナー(レッドブル・レーシング代表)とフラビオ・ブリアトーレ(アルピーヌF1 エグゼクティブアドバイザー)、2024年8月25日(日) F1オランダGP決勝(ザントフォールト・サーキット)
アストンマーチンはすでにCEO兼チーム代表としてアンディ・コーウェルを採用しているが、オーナーのローレンス・ストロールは最高の人材を引き入れることを最優先として大胆な人材登用を進めており、経営幹部の一員としてホーナーが加わる可能性も指摘されている。
求めるのは「株式と最終権限」
関係筋によると、ホーナーは単なるチーム代表職にとどまらず「株式の保有とチーム運営を完全にコントロールできる権限」を求めているとされる。
これはメルセデスのCEO兼チーム代表、そしてオーナーでもあるトト・ウォルフの立場に合致するものであり、自らの影響力を最大限発揮できる環境を復帰の条件に定めていると見られている。
ただし、近年のF1チームの評価額は最低でも2,000億円規模に達していることから、如何に巨額の退職金で裕福になったとはいえ、自ら新チームを設立したり既存チームの過半数株式を単独で買収できるほどの資金力はないとみられる。投資家を得られるかが焦点となる。
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メルセデスのトト・ウォルフCEO兼代表とパドックで話すレッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表、2024年6月28日(金) F1オーストリアGPスプリント予選前(レッドブル・リンク)
2026年、復帰はあるか
2026年シーズンは車体とパワーユニット双方が刷新される。シーズン序盤に劇的な失敗を喫するチームが出てくれば、ホーナーを招聘しようとする動きが一気に表面化する可能性もある。
かつてレッドブルを王者チームに育て上げた辣腕は、再びF1の勢力図を塗り替える存在となるかもしれない。