
F1カナダGP:10件の大量審議で8件処分、一方で結果変わらず
2025年F1第10戦カナダGPは大波乱の展開で幕を閉じた。レース後には10件もの審議が行われ、そのうち8件で何らかの処分が下されたものの、最終リザルトに影響を及ぼす決定は一つもなかった。
スチュワードは70周のレースを終えて、計7名のドライバーを召喚した。呼び出されたのは、マクラーレンのランド・ノリスとオスカー・ピアストリ、エステバン・オコン(ハース)、カルロス・サインツ(ウィリアムズ)、オリバー・ベアマン(ハース)、ジョージ・ラッセル(メルセデス)そしてマックス・フェルスタッペン(レッドブル)の7名だ。
この内、ラッセル、フェルスタッペン、ピアストリ、オコン、サインツの5名はポイント圏内でフィニッシュしている。
ノリスとピアストリ、過失はいずれに?
ドライバーズランキングをリードするピアストリとノリスは、残り3周で発生した接触事故をめぐり、現地時間17時20分より調査を受けた。この一件により、レースはセーフティカー(SC)導入下で終了した。
スチュワードはノリスに「全責任」があるとして、5秒ペナルティを科したが、これはリタイヤしつつも「完走扱い」とされたノリスにとって、実質的に意味を持たないペナルティとなった。
オコンの「不規則走行」疑惑
オコンは、レース中にピットレーン出口で「不規則な走行」を行ったとして、国際スポーティングコード(ISC)附則L第4章第2条e項(危険運転)の違反が疑われた。これに関連し、現場に居合わせたサインツも証言を求められ、同様に召喚を受けた。
問題の場面は、SC導入中に発生した。オコンはサインツの前方を走行していたが、ピットレーン出口に向けて減速した際、サインツが追突しかけ、オコンはコース外に避けて接触を回避した。
サインツはこの件について「オコンのブレーキングが予想以上に強く、驚いた」と説明。一方でオコンは、「ダブルイエローゾーンを知らせる音声警告があり、ステアリングホイール上にもダブルイエローデルタの警告が表示されたため、その場でブレーキをかけた」と釈明した。
実際に当該区間がダブルイエローの対象セクションであったことを確認したスチュワードは、オコンの行動について「正当な理由による減速」であると判断。今回の一件については不問とする決定を下した。
ベアマン、再合流違反の疑い
また、ベアマンについては、ターン14でのコース復帰時にレースディレクターの指示に従わなかった疑いがあるとして、調査対象となった。ドライバーたちには、ターン13でコースを外れた場合はエスケープエリアを通過し、ターン14後のオレンジライン終端を過ぎた地点から再合流するよう指示が出されていた。
ベアマンは、ターン13のアウト側からフランコ・コラピント(アルピーヌ)をオーバーテイクしようと試みた際にランオフエリアへ進入。その後の再合流の際、右側のタイヤがオレンジラインの終端をわずかに踏んでいた。
スチュワードは、ベアマンにはラインを踏まずに再合流する余地があったと判断。ただし、その動きが危険であったとは言えず、また競技上の有利を得た形跡も見られなかったことから、今回は警告処分にとどめた。
ウィナーのラッセルも調査対象に
5名のドライバーがスチュワードにより召喚された後、レッドブル・レーシングがウィナーであるラッセルに対し、2件の異議を申し立てた。これにより、2位のフェルスタッペンとラッセルも召喚対象に加わる形となった。
レッドブル側は、ラッセルがSC中に「意図的に減速してフェルスタッペンの追い越し違反を誘発しようとした可能性がある」と主張。さらに、ラッセルがチーム無線で「フェルスタッペンがSC中に追い越した」と発言した点についても、FIAの注意を意図的に引こうとした「スポーツマンらしからぬ行為」として問題視したが、スチュワードはこれらの主張を認めず却下した。
SC中の追い越し違反で6名に処分
この件はスチュワードによる召喚の対象とはならなかったものの、SC導入中に他車を追い越したとして、以下の6名のドライバーに対して警告処分が科された。
- ピエール・ガスリー(アルピーヌ)
- カルロス・サインツ(ウィリアムズ)
- シャルル・ルクレール(フェラーリ)
- エステバン・オコン(ハース)
- オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
- アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)
チェッカーフラッグ後の追い越しは通常問題とされないが、SC、あるいはバーチャル・セーフティカー(VSC)下では追い越しが明確に禁止されている。
にも拘らず、今回のケースでは警告処分にとどめられた。これは、FP3で赤旗提示中に他車を追い越したとして、10グリッド降格という厳しいペナルティを科された角田裕毅(レッドブル)の件と対照的な判断となった。
一方でスチュワードは、今後同様の違反が繰り返された場合には、より厳しい処分を科す可能性があるとして、全チームに対して警告を発した。