フェルスタッペン 4冠の裏側「マクラーレンならもっと早く勝っていた」よぎった引退、安堵とアルコール
最終戦までもつれ込むと覚悟していたマックス・フェルスタッペンにとって、その瞬間は予想よりも早く訪れた。残り2戦を残して26歳のオランダ人ドライバーは、ラスベガスGPで4年連続のF1ワールドチャンピオンを確定させた。
レースリザルトこそ理想的ではなかったが、5位フィニッシュで十分だった。
ランド・ノリス(マクラーレン)に先行しさえずれば4度目の王座が決める条件の中、レースエンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼは何度も「全体像を考えろ」とフェルスタッペンに伝えた。これは、無用なバトルに巻き込まれタイトルを危険にさらさないようにという警告だった。
さしてポジションを守ろうとはせず、レース終盤にフェラーリ勢に対して道を開け、5位でフィニッシュしたフェルスタッペンは、ラスベガスの華やかな雰囲気の中で4冠を祝った。
幼い頃、世界チャンピオンになることを夢見た彼にとって、4度目の戴冠は現実を超えた達成感だったことだろう。
フェルスタッペンは、「4度のワールドチャンピオンとしてここに立つなんて想像もしていなかった」と誇りを胸に抱き、そして安堵した。さらに、「今年は昨年より少し厳しかったけど、全力を尽くして乗り越えた」と振り返った。
歴史に残る支配的な昨シーズンとは異なり、2024年のレッドブルRB20は必ずしも最速のマシンではなかった。それはベガスでの5位という成績からもよく分かる。開幕5戦で4勝して以降、フェルスタッペンは優勝争いから離れていった。
クリスチャン・ホーナー代表は今季を「これまでで最も印象的なチャンピオンシーズン」と評した。フェルスタッペンはこれに同意し、「一時は少し迷子になったような感覚だった」と語り、シーズンの70%においてレッドブルは最速のマシンではなかったと指摘した。
シーズン序盤のチーム内の「混乱」にも触れた。調査の末に退けられることとなった女性従業員に対するホーナーのセクハラ疑惑に始まり、恩師ヘルムート・マルコの立場は危ぶまれ、父ヨスもこの騒動に飲み込まれていった。それでもフェルスタッペンはその間、自身のパフォーマンスに集中し続けたと振り返る。
「何かで僕を動揺させるのはすごく難しいと思う」とフェルスタッペンは言う。「僕はレースに関することに本当に集中している。クルマに乗った瞬間に、ポジティブなこともネガティブなことも、全てを忘れる。ただ目の前のことに集中して、クルマを可能な限り速く走らせることだけを考える」
その一方で、一時はF1からの引退を考えたとも認めた。「正直、人生では毎年必ずいろいろな考えが頭をよぎるものだと思う」とフェルスタッペンは明かす。
「ただ同時に、僕は極端な決断を突然下すタイプじゃない。それに、今いる場所に本当に満足している。厳しい時期に、さようならって言ったり、忘れたり、無視したりするのは簡単だ。でも実際には、それを乗り越えて一緒に向き合い、対処することの方がずっと重要だと思う」
4度目のタイトルの獲得により、フェルスタッペンは義父のネルソン・ピケを超え、更なるレジェンドの領域に足を踏み入れた。しかしながら、フェルスタッペンは記録に執着しない。ルイス・ハミルトンとミハエル・シューマッハが持つ7冠にも興味はない。
「最終的には、1回でも7回でも同じだろ?」とフェルスタッペンは言う。2021年の初タイトルの「感動を超えることは決してない」という。その理由については、それがF1ワールドチャンピオンになるという彼の生涯の夢を実現した瞬間だったからだと付け加えた。
どうやって祝うつもりなのか?と尋ねられると「もう、ビールがなくなっちゃったんだ」と答えた。記者会見場に向かうまでに、フェルスタッペンはハイネケンを飲み干していた。
「どうしようかな。もう1本飲んで、それから別の飲み物に切り替えるかも」と笑いながら続けた。「『飲酒運転はやめよう』ってスローガン、いいよね。今日はもう運転しなくていいからさ」
蘭Het Paroolによると、会見場を後にしたフェルスタッペンは、チェッカーフラッグから3時間以上が経過した午前3時、「ビール4本とジントニック2本」を飲み干した状態で、見知った顔ばかりの母国メディアのインタビューに応じた。
祝福に訪れたマクラーレンのザク・ブラウンCEOに対してフェルスタッペンは、シーズンの約70%、マイアミGP以降は最速のマシンを持っていなかったと冗談交じりに指摘したという。
「そういう状況はモチベーションにしかならない。最高のマシンじゃなきゃ勝てないなんて言う人には間違いだと証明するだけさ」とフェルスタッペンは語った。「これで評価されないなら、これ以上、何をすればいいんだ?」
マクラーレンに乗っていれば、もっと早くタイトルを取れたかと思うかと尋ねられると、「もっと早く決まっていただろうね」と返し、フェラーリに乗っていれば、今のレッドブルと同じような状況だっただろうと語った。
そして、他のドライバーが今年のレッドブルに乗ってチャンピオンになれたかどうかについては、「それに対して言えるのは、『頑張って!』ってことだけだ」と笑顔で付け加えた。