トヨタ、ハースと提携 15年ぶりにF1復帰…日本人ドライバー含む人材育成・車両開発で協力
TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は2024年10月11日、FIA-F1世界選手権に参戦するハースF1チームとの間でテクニカルパートナーシップに関わる基本合意書を締結したと発表した。契約は複数年。
トヨタ自動車にとっては2009年以来、15年ぶりのF1復帰となる。同社はワークスチームおよびエンジンサプライヤーとして2002年からF1で8シーズンを戦い、13回の表彰台獲得とコンストラクターズ選手権での最高位4位を達成するも、リーマン・ショックに端を発した業績悪化を理由に2009年シーズン末を以て撤退した。
契約の一環としてTGRは、マシン開発分野などにおいてハースと協力関係を結ぶとともに、世界最高峰のモータースポーツであるF1において、日本の若手ドライバーやエンジニア、メカニックが経験を積み、成長する環境を整えることで、自動車産業の発展に貢献することを目指していくという。
具体的には、TGRの育成ドライバー、エンジニア、メカニックをハースのF1テスト走行に参加させる。ドライバーはF1での走行経験を積み、エンジニア・メカニックは走行データなどの膨大なデータの解析ノウハウを学ぶ。
GAZOO Racing Companyの高橋智也プレジデントは「この提携を通じて、将来的にF1のレギュラーシートを獲得できるようなドライバーを育成できたら素晴らしいと考えています」と語った。
また、TGRのエンジニアおよびメカニックをF1マシンの空力開発に参画させる。極限の使用環境下を想定したシミュレーション、カーボン部品の設計・製造を行うことで、世界最高峰のレースの現場で活躍し、培った技術や知見を市販車に反映できる人材の育成を目指していく。
10月18日~20日のアメリカGPを皮切りに、ニコ・ヒュルケンベルグとケビン・マグヌッセンがドライブするVF-24にはTGRのブランディングが施される。
ハースの小松礼雄代表は「ハースF1チームとTOYOTA GAZOO Racingが技術提携を結ぶことに大変興奮しています」と語った。
「世界的な自動車業界のリーダーが我々をサポートし、ともに技術・エンジニアリングの専門知識を発展させることは、双方に明らかなメリットをもたらすパートナーシップです」
「TOYOTA GAZOO Racingのリソースと知識を活用し、その技術や製造プロセスから利益を得ることは、我々の開発と競争力の向上にとって非常に重要です」
トヨタの豊田章男会長は、2009年にF1撤退を決断したことについては今も「間違っていなかった」としつつも、「日本の若者が一番速いクルマに乗る道筋を閉ざしてしまっていたことを、心のどこかでずっと悔やんでいた」と語った。
ハースは2016年にF1参戦して以来、パワーユニットの供給を含め、フェラーリと強固な技術関係を結んでおり、この契約は少なくとも2028年末まで継続される。
2025年シーズンのドライバーラインナップは既に決定しており、フェラーリのリザーブドライバーを務めるオリバー・ベアマンと、現在アルピーヌに所属する経験豊富なエステバン・オコンがステアリングを握る。
モータースポーツ業界で60年以上の歴史を誇るトヨタは昨年、傘下の平川亮がマクラーレンのF1リザーブ・ドライバーに就任し、今季は育成ドライバーの宮田莉朋をF1の登竜門、FIA-F2選手権に送り込むなど、近年、F1との距離感を縮めており、パドックでは今年7月以降、ハースとの提携が取り沙汰されていた。