ロダン・カーズ、”当確”アンドレッティとの6つの入札相違点…F1参戦失敗を経て明かされた特異な計画
ロダン・カーズは9月27日(水)、国際自動車連盟(FIA)主催のF1新規参戦チーム入札に破れた事を明らかにすると共に、「入札に唯一成功した応募者」となるのはアンドレッティ・グローバルとの見通しを示した。
主としてレースカーを設計・開発・製造するロダン・カーズはF1参戦に向け、「F1のラップタイムに挑戦」する事を目的に、エンジンの製造設備やテストコースを含むニュージーランドの本拠でプロトタイプ車両「FZero」を既に完成させていた。
シャシーには車体コンセプトに基づき設計されたリカルド製のギアボックスとニール・ブラウン製の4リッターV10エンジンが搭載されたが、その成果が近いうちにF1で活かされる可能性は消滅した。
2023年初頭に開始されたFIAによる審査プロセスの結果はまだ、正式に発表されていないが、ロダン・カーズの創設者、デビッド・ディッカーは自分たちの入札が失敗に終わったと報告した。
これはゼネラル・モーターズ(GM)傘下のキャデラックと提携するアンドレッティ・グローバルに関する承認のニュースが間近に迫っている表れの一つと解釈してよいだろう。
ディッカーは声明の中で、アンドレッティとロダン・カーズの入札における「重要な相違点」として以下の6つを挙げた。これは「FIAを批判し、その決定の再考を求めること」ではなく、単に「公共の利益になると思われる情報を公開すること」を目的としているという。
- 1:地理的多様性
- 2:女性ドライバーの起用
- 3:自動車メーカー
- 4:フェラーリとのコラボレーション
- 5:ジュニア・レースチーム
- 6:設立者出資
米国を本拠とするアンドレッティと、南半球唯一のチームであるロダン・カーズに地理的な差異がある事は明らかだが、今年初めに欧州の有力ジュニアチーム、カーリンを買収した事から、本拠がニュージーランドであるにも関わらずロダン・カーズは、F4、GB3、F3、F2というF1へと直接的に繋がるジュニア・プログラムを備えている点に優位性がある。
F1のホームであるヨーロッパとの連携を強く意識する姿勢は、フェラーリとの間でコラボレーションの可能性について話し合いの場を持った事にも表れているが、現在のグリッドに着く10チームは全て、主にサプライチェーンの観点からヨーロッパにファクトリーを構えており、その大部分は英国に置かれている。
具体的な金額は示されていないが、F1プログラムに必要となる資金の出処が創業者の財布というのも特異だ。だが、最も注目されるのはF1シートの一つを女性ドライバーに与える事を「保証」したという点だろう。
ディッカーによると、最有力候補はウィリアムズが支援する3度のWシリーズチャンピオン、ジェイミー・チャドウィックだった。皮肉にも彼女は今年、アンドレッティからIndy NXTに参戦している。
チャドウィックはリアム・ローソンとルイ・シャープと共に、F2よりも速いとされるロダン・カーズの「FZed」マシンを使ったテストに取り組み、ディッカーに感銘を与えたという。ディッカーは「彼女をシートに座らせる事を躊躇わなかっただろう」と強調した。
現行チームとは異なりニュージーランドでマシンを製造し、女性ドライバーのシートを保証したロダン・カーズがFIAの承認を得る事はなかった。その理由が公に明かされる事はないだろうが、ディッカーの説明からはその一端が感じ取れる。